紙とインクの匂いのする街で堀を横切り、
流れは分かれます。
ビルの裏、高速道路の下を流れて、証券の街へ。
証券マンの憩いの店、
モダンな構えの「桃乳舎」。
ほどなく視界が開け、大きな川へと注ぎます。
大きな流れに掛かる大きな橋は、
作っているのか壊しているのか。
大きな流れの向こうでは、
多くの人が暮らす島が、流れを再び分けていました。
大きな流れの向こう岸から眺めると、
辿ってきた流れは、つぶれた証券会社の裏手に、
小さな賓のある、最後の橋を架けています。
かつては、討ち入りを果たした赤穂浪士が、
泉岳寺への途路、渡った橋だそうです。
満潮であふれた波が、
足元までも洗います。
「船があったらなー」なんて思いながら、
潮の香りを何度も深く吸ってみます。
これで霧でも出ていれば、
「マッチ擦る、つかのま海は霧深し・・・」か。
もう一人の修治は、トカトントン。
トカトントン、トカトントンを頭の中でグルグルさせて、
大人になったら行ってみたいと思っていた店へ。
「大変永らくご愛顧いただきまして・・・」
あと何日か早かったなら・・・。