(C)1998
Yuichi Toyokura
〜文学全集で読む福永武彦〜 |
大学を出て会社勤めを始めた頃、会社の人たちとの話の糸口は「本」の話でした。私が文学部出身だということを知っている人は、とくに文学作品の話をしようと努めてくれました。けれど多くの人は、昔は読んだけれど今は読まないというよなことを言うのです。私は、そんな人たちが、どうして文学から離れていってしまったのだろうと、いぶかしみました。 その頃の私の知り合いに、予備校の講師をしながら、家に帰るとテレビも見ずに、ろくな食事もとらずに、小説ばかりを書いている、そういう人が居たのです。そうやって積極的に文学に関わっている人を羨ましく思っていました。私には、そういう気力がなかったからです。私は、私自身が文学から遠く離れることを恐れていました。 最近どんな本を読みましたか、私の問いに、初老の非常勤講師は答えます。年をとると、そんなにたくさんは読めない。君は若いうちに、たくさん読むといい。実感も伴わないまま、私は未だ遠い自分の将来に思いを馳せました。そうやって自分の意志に反して、文学から遠ざけられてしまうことを思ってみました。 高校生の時、遊びに行った友だちの家の応接間に、立派な本棚に飾られた文学全集がありました。その頃、ちょうど福永武彦を読み始めていた私は、その文学全集の中に福永の名前を見つけて驚きました。文学全集に収められるような作家だとは思っていなかったのです。そのとき、どんなに嬉しかったかということは、これからどんなことがあっても忘れないだろうと思います。 by Yuichi Toyokura(H.13.10.8) |
平成3年9月20日発行 『心の中を流れる河』 『幼年』 『遠方のパトス』 『深淵』 『完全犯罪』 『岡鹿之助の詩的世界』 『ゴッホとゴーギャン、内面への道』 『詩』 『夜 及びその他のソネット』 『死と転生 及びその他の詩』 死の影とともに 菅野昭正 年譜 |
昭和46年4月1日発行 監修委員 伊藤整・井上靖・川端康成・三島由紀夫 編集委員 足立巻一・奥野健男・尾崎秀樹・北杜夫 『草の花』 『一時間の航海』 『夜の寂しい顔』 『福永武彦詩集』(抄) 福永武彦文学紀行 内なる海・心の河 源 高根 注解 紅野敏郎・風間益人 年譜 福永武彦文学アルバム 評伝的解説 入沢康夫 |
昭和39年2月27日発行 編集委員 荒正人・江藤淳・瀬沼茂樹・十辺肇・平野謙 『冥府』 『深淵』 『夜の時間』 解説 荒正人 年譜 源高根 |
初版 昭和44年7月25日 編集委員 谷崎潤一郎・川端康成・伊藤整・高見順・大岡昇平・三島由紀夫 D・キーン 『草の花』 『飛ぶ男』 注解 島田昭男 解説 篠田一士 年譜 源高根 (付録66) 鼎談 中村真一郎・福永武彦・遠藤周作 |
初版 昭和44年10月30日 『風景』 『夜の寂しい顔』 『廃市』 『飛ぶ男』 解説 磯田光一 |
初版 昭和46年4月30日 監修 武者小路実篤・志賀直哉・川端康成・井上 靖・山本健吉 『忘却の河』 注釈・解説 小久保実 年譜 源 高根 (しおり50) Three of Them 篠田一士 |
初版 昭和46年6月5日 『1946 文学的考察』 『冥府』 『影の部分』 『告別』 『福永武彦詩集(抄)』 福永武彦論 小佐井伸二 年譜・著作目録 小久保実 (月報50) 福永のイメージ 白井健三郎 加藤・中村・福永研究案内 小久保実 |
初版 昭和46年7月20日 『草の花』 『廃市』 『飛ぶ男』 『樹』 『風花』 注解 吉田精一 年譜 解説 長田弘 |
初版 昭和48年7月8日 編集委員 伊藤整・井上靖・中野好夫・丹羽文雄・平野謙 『告別』 『塔』 『死者の馭者』 『鬼』 『死後』 『世界の終り』 『廃市』 注解・年譜 小田切進 作家と作品 佐々木基一 (月報42) 山での話 遠藤周作 年譜その他 源 高根 |