(C)1998 Yuichi Toyokura
〜資料室〜 |
中性に関する一章 −−しかし、男性も古いが、女性も古いね。どうして小説家という人種は、男性と女性とが登場して、モチャモチャするような小説ばかりかくのだろう。新鮮な魅力なんか、これつぽちもない。ぼくだつたら、いまさららしく男性や女性をネラわず、中性をネラうね。(中略) −−ははん、そうすると、インポテンツだとか、ふたなりだとか、去勢されたやつなんかを問題にするわけだね。 −−いや、そんな連中を主人公にした小説は、これまた星の数ほどある。ぼくのネラつてるのは女ではなく少女。男ではなく少年だよ。つまり、「第三の性」なんだ。 (中略) −−残りの中性小説の批評を、さつさとカタづけて、われわれの時評をおしまいにしようぜ。まず、「文学界」の福永武彦の「夢みる少年の昼と夜」からいこうじやないか。時間がないんだから、簡単にやつてくれよ。 −−ずいぶん、うまい小説だな。一九二〇年代なら天才だといわれたかも知れん。 花田清輝評論集 (『さちゅりこん』 S31.3) |