ふしぎ魔法 フ ァ ン フ ァ ン フ ァ ー マ シ ィ ー              その3             は ち み つ ど ろ ぼ う                    第4稿                       脚本/ 小 中 千 昭 Animation Play by Chiaki J. Konaka                              97/11/10 登場人物 ぽぷり〔西野かおり〕(10) ふきこさん(年齢不詳) ニボシ〔黒い子猫〕 子熊座のこぐま 食料雑貨店のおばあさん マーケットのおばさん コンビニのお姉さん ○にこにこ銀座/午後 のんびりとした空気──のそこにバタバタと駆けて くるぽぷり。顔や手には白い粉がついている。 ぽぷり「えええっと、食料品屋さん食料品屋さん!」 食料雑貨店を見探し、そこに向かってまっしぐら。 ○食料雑貨店 ぽぷり「こんにちはーっ!」 奥からおばあさんが出てくる。 店 主「いらっしゃい(苦笑)おやおや真っ白。こないだ越して     きた子だね」 ぽぷり「あたしの事、ぽぷりって呼んで。本当の名前は違うんだ けど、ぽぷりって名前が好きなの──って事は今度ゆっ くりお話するねっ! はちみつ! はちみつが無いの!」 店 主「(顔を曇らせ)はちみつかい?」 ぽぷり「今ホットケーキをあたし作ってるの! 今日は土曜日だ からママが早く帰ってくるの! だからホットケーキ作 ってあげようって、でも肝心のはちみつが無かったの!」 店 主「(困惑)はちみつ、ねぇ、売り切れちゃってるんだよ」 ぽぷり「えっ……」 店 主「おかしいねぇ。つい先週仕入れたばかりだのに」 ぽぷり「(がっかり)売り切れ、なの……」 店 主「ちょっと遠いけれど、筋向こうのマーケットに行てごら んなさいな」 ぽぷり「(ぱっと顔を輝かせ)うん! ありがとうおばあさん!」 ○にこにこ銀座 ぽぷり、まっしぐらにマーケットに走っていく。 ○マーケット レジのおばさんが困った顔。 パートのおばさん「はちみつ、無いの。さっきも欲しいってお客 さんがいて、倉庫まで探したんだけど……」 ぽぷり「(がーん)ここにも、ないのぉ?」 パートのおばさん「駅近くのコンビニならあるかもしれないわね」 ぽぷり「! そうね! 行ってみる! ありがとうおばさん!」 ○にこにこ銀座 どどどどどどどど ○コンビニ バイトの女の子「(困り顔)はちみつ、ウチにも無いわ」 ぽぷり「そ、そんなぁぁぁ。せっかくホットケーキ、ママに食べ て貰いたかったのに……」 バイト「ふぅん、にこにこ銀座のどこにもはちみつ、無いのね。     変なの」 ぽぷり「変過ぎるわ! 誰かがぜーんぶ買っちゃったのね! そ んなに一杯何に使うのかしら(ぷんぷん)」 バイト「変なのはそれだけじゃないの。昨日の夜には絶対あった のに、朝になったら消えちゃってたの。お客さん、昨日 の夜中には全然来なかった筈だって、店長言ってた」 ぽぷり「えっ! じゃあもしかして、どろぼう……?」 バイト「(くすくす)はちみつ専門のどろぼうなんているかなぁ」 ぽぷり「きっといるんだわ! 黙って持ってっちゃうなんてひど いわよ!(言い終える前にはもう飛び出してる)」 バイト「「あっ、ちょっ、どうするのぉ!?」 ○ファーマシィー ぽぷりが駆け込んでいく。 ぽぷり「ふきこさんふきこさんふきこさん!」 ○同/内 ふきこ、天井から草を下げて干していたところ。 ふきこ「あらあらぽぷりちゃん、どうしたの? 真っ白じゃない」 ニボシ「ニャーッ」 ぽぷり「にこにこ銀座にはちみつどろぼうが現れたの!」 ふきこ「ええ? はちみつどろぼうですって?」 ぽぷり「はちみつばかりを狙ってるのよ! ここは大丈夫っ!?」 ふきこ「(当惑)──」 ─────────────────────── 店奥の、ガラス壺が並んだ棚。 ふきこ「あら、無いですわ。おかしいわね。昨日のお昼には確か にありましたのに」 ニボシ「にゃあ……」 ふきこ、空になった大きなガラス壺を手に。 ぽぷり「ほーら! やっぱりいるのよ!はちみつどろぼう!」 ○夜空 にこにこ銀座の上には銀河の星々が──。 ○ぽぷりの部屋/夜 ベッドの上のぽぷり、首から下げた小瓶を手に ぽぷり「わるものをつかまえる魔法、きっとある筈よ! よーし」 ポッケから種をざくざくと掴み──、アルデルの小 瓶に入れて──蓋を閉じる。 ぽぷり「マホウヨマホウヨウマレテオイデ!」 小瓶の中で化学反応が起こり、閃光。 ぽぷり「わ!」 ぽん! 蓋を弾いて飛び出したのは── ピンチィ「しゅかしゅかーっ!」 ぽぷり「ピンチィ!(嬉しい!)元気だったー!?」 ピンチィ「しゅかしゅか」 ぽぷり「あ、でも、あなたって風の精霊じゃなかった? どろぼ うを見つける魔法なんて使えるの?」 ピンチィ、トコトコと室内を歩き回っている。 ピンチィ「しゅーしゅしゅ(判ってない)」 ぽぷり「困っちゃったなぁ。ピンチィ、あたしの言う事、判って るのかしら」 ピンチィ、はっと窓を見て飛びつき、サッシを開け る。ごおおおおっ。風が舞い込む。 ぽぷり「わーん、寒いよぉ」 ピンチィ「しゅかーっしゅかーっ(何か訴えている)」 ぽぷり「! どうしたのっ!?」 ピンチィ「しゅかしゅかしゅーっ!」 ぽぷり「そっか! 空からどろぼうを見張るのね!? でも──」 ピンチィ、吹き込む風を吸い込みどんどん膨らむ。 ぽぷり「(満面に笑み)飛ぶのねっ!?」 ○夜空 マンションからふわりと浮かび出るピンチィ。上に はぽぷりがしがみついている。夜風が顔に冷たい。 ぽぷり「わーっ! ピンチィすごい! でも、ちょっとこの恰好 って魔女っぽくないかも。今度はちゃんとほうきを用意 しておかなくっちゃね」 ピンチィ「しゅーしゅ」 ぽぷり「わーっ! お星様がすごく近くになってるみたい!」 素敵なナイト・クルージング。 ぽぷり「あら? でも、なんかいつもとちょっと違うみたい……」 星空の一部がぽっかり穴が開いた様に暗い── と! 向こうの方に虚空より輝く筋が下りてくる。 ぽぷり「あっ! あれはなぁに!?」 ピンチィ「しゅかしゅかーっ!」 ○にこにこ銀座/スマイル前 シャッターが閉まっている寂しい夜の商店街。 『スマイル』という小さなレストランの閉じた扉を 光が貫いて中へ。 そこにふわりと降り立つぽぷり。ピンチィは小さく なって上昇していく。 ぽぷり「あっ、もう行っちゃうの!?」 ピンチィ「しゅしゅしゅー」 消えていくピンチィ。 ぽぷり「どこ行くのぉ!? あたし一人でどろぼう、どうやって捕 まえたらいいの!?」 満天の星空へ飛び去ってしまうピンチィ。 ぽぷり「(諦め)もう……。あたしよりもあの子の方が魔法のお 勉強が必要だと思う。(ドアを見て)さっきの光が── どろぼうなの……?」 ぽぷり、ドアをそっと叩く。 ぽぷり「(小声で)こんばんは……」 しーん。ドアの前に貼り紙。 『従業員慰安の為、旅行に行ってきまーす』 ぽぷり「留守、なの?」 ─────────────────────── 店と店の間の狭い通路。ぽぷりが覗き込む。 ごそっ。裏の方で物音。 ぽぷり「! やっぱりいる! どうしよう……。(思案)──考 えてても仕方ないわ! ここまで来ちゃったんだもの!」 ○スマイル裏 靴を履いていないので猫の様に小走りで来るぽぷり。 裏手には大きな空の缶などが積まれている。 そーっと中を伺い見るぽぷり。 窓の内側にぼんやりと光が動いているのが見えた! ぽぷり「光ってるどろぼうなんて聞いた事もないわ。はちみつだ けを狙うだけでも変なのに」 ガタン! うっかりと缶の山を崩してしまった。 ぽぷり「わっわっ」 がたんばたんどしん。 慌てて缶を抑えようとするぽぷり。 落ちてきた最後の缶をキャッチ、そのまま座り込む。 ぽぷり「ふぇーん……。(ハッ)」 ドアの内側、光が立ち上がってこちらを見ている。 ぽぷり「(恐怖)わっ! 見つかっちゃった! どうしよう!」 缶を抱えたまま動けないぽぷり。 ぎしっ。ドアがゆっくりと開いていく! ぽぷり「どっ、どうしたらいいの!?」 と! その時ひゅーんという音! ふきこ「(オフ)ぽぷりちゃん!」 ニボシ「にゃー」 ぽぷり「(見上げ──!)ふきこさん!!」 ほうきに乗ったふきこが飛来してくる。パジャマに ガウン姿。ふきこの側にはピンチィが飛んでいた。 ぽぷり「どうして──? あっ! ピンチィ!」 ピンチィ「しゅかーっ」 と、ふきこのポケットからニボシがピンチィにちょ っかいを出す。 ニボシ「ニャニャッ!」 ピンチィ「しゅしゅーぅぅぅ」 ピンチィ、ひゅん、と旋回して夜空に消えた。 ぽぷり「ありがと! ピンチィ!」 ふきこ、ぽぷりの前に降り立つ。 ふきこ「風の魔法が教えてくれたのです。大丈夫ですかしら?」 ニボシ「にゃあ?」 ぽぷり「うん、あたしは平気。でも──」 ドアを見るぽぷり。 内側の光、再び奥に戻ったらしい。 ぽぷり「はちみつどろぼうは中にいるの!」 ふきこ「あらあら、ぽぷりちゃん、一人でどろぼうを捕まえよう なんて思ったんですか?」 ぽぷり「だって……」 ふきこ「(微笑)いいですわ、わたしが来たんですから。さあ、     ではどろぼう退治に参りましょうか」 ふきこ、ほうきを持ち上げ、ドアへ。 ふきこ「ドアヒラケヒラケカギヲアケテヒラケー」 ニボシ「にゃーっ!」 白い精霊が現れふぁっとドアを開ける。 ○スマイル/食材庫 暗い室内に入ってくるふきこ。続いてぽぷり。 棚を回り込んで、隅にうずくまる光に近づく二人。 ぽぷり「あっ!」 なんと、そこにいたのは、淡い光に包まれた小さな くまの子。はちみつの瓶を抱えていた。 ふきこ「まあ、こんなくまさん、初めて見ました。どこのくまさ んですかしら」 ニボシ「にゃーっ?」 こぐま「おそらにいたの。下が面白そうだなぁって、体をのりだ したら、おっこちたの」 くま、天井を見上げる。 ふきことぽぷり、顔を見合わせる。 ぽぷり「おそらから落ちてきた、くま?──(はっ!)」 ○にこにこ銀座表通り 出てきた二人とこぐま。満天の星を見上げるふきこ。 ぽぷり「見て見てふきこさん! こぐまざが無いのよ!」 ふきこ「子熊座?」 空の星々、星座を描きだす。しかしそこには子熊座 があるべきところが漆黒。 こぐま「だって、ぼくがそのこぐまざのくまなんだもん」 ぽぷり「びっくり! こぐまざが空から落ちてきたなんて!」 こぐま「おそらへは帰れないし、お腹は減るし、ママのとこ帰り たいな……(ぐすっ、ぐすっ)」 ふきこ「(微笑)それで、にこにこ銀座中のはちみつを食べてし まったのね」 ぽぷり「ねぇふきこさん。このこぐま、空に返してあげられない の?」 ふきこ「困りましたね。わたしのほうきは、あんなに高いところ までは飛べませんわ」 ニボシ「にゃー……」 こぐま「(悲しそう)帰りたいよぅ」 ぽぷり「(駆け寄って撫で)泣かないで。ね? (振り向き)ふ     きこさん、こんな時の魔法はどうするの?」 ふきこ「魔法──そうですわ! 向こうから迎えに来て貰いまし ょう!」 ニボシ「にゃあ」 ふきこ、星座を見上げ ふきこ「大熊座はちょっと長さが足りませんわ……」 バッ! ふきこ、ポーズをとって ふきこ「ウミヘビザウミヘビザノビロノビロニコニコギンザヘ!」 ニボシ「にゃあーっ!」 と! 虚空に多くの精霊達が浮かび、星空に向かっ て一筋の光となって延びて── ぽぷり「(びっくり)うわぁ……」 星座の一つが大きく動きだし──、 ウミヘビの形をした光が下りてきた! ぽぷり「すごいすごーい! ウミヘビ座が延びてきたー!」 海蛇座「お母さんが心配してたぞー」 こぐま、ぴょんと海蛇座の頭に乗る。 こぐま「ありがとー」 ふきこ「もう落っこちるんじゃありませんよ」 ニボシ「にゃーっ」 再び戻っていく海蛇座。 こぐま「うん!こんどはママと一緒に来るー」 ぽぷり「えっ! そしたら──」 ふきこ「(ニコッ)はちみつの瓶を百個、買っとかなきゃいけま せんわね」 ニボシ「にゃあ」 笑い合う二人の魔女。 空には満開の星。                     つづく