ふしぎ魔法 フ ァ ン フ ァ ン フ ァ ー マ シ ィ ー               その6            ゆ き だ る ま が ふ っ て き た                     第3稿                       脚本/ 小 中 千 昭 Animation Play by Chiaki J. Konaka                              97/12/18 登場人物 ぽぷり〔西野かおり〕(10) ふきこさん(年齢不詳) ニボシ〔黒い子猫〕 キノシタ写真館主 ぽぷりのママ 通りがかりのサラリーマン 雪だるま ○ファーマシィー調合室/夕刻 ランプの灯の上に乳鉢。中には小石(前回登場)が いくつか。 じーっと見つめているぽぷり。 ぽぷり「ふきこさん、石をどうして火にかけているの?」 ふきこ「ぽぷりちゃんもこないだ見ましたでしょう? この石の     中には魔法の光が入ってますのよ」 ニボシ「にゃあ」 ぽぷり「光って、でも、ほんのちょぴりだったわ」 ふきこ「こうやって暖めると、石の中の小さな魔法が自分で出て きたがるのです。それを一杯集めるのですわ」 ぽぷり「(嘆息)気が遠くなっちゃうわ。(ポッケから種を出し) この魔法の種を作るのに、あとはどんなものがいるの?」 ふきこ「全て自然にあるものですわ。いっぱいありますわよ。木 の実や草や……、(ニコ)一つ一つ聞きたいですか」 ニボシ「にゃあ?」 ぽぷり「えっ、どうしてそんな事聞くの?」 ふきこ「(曇っている窓を見て)早く外に飛び出したい、って思 うに違いないからですわ(ニコニコ)」 ぽぷり「(きょとん)え……?」 ふきこ「でも今年は随分と遅いですわね……」 ○ファーマシィー前 ガラス戸の内側のぽぷりの顔、目線が上に── ぽぷり「(顔がみるみる輝き)──わあああっ!」 飛び出してくるぽぷり。空を見上げてくるくる回る。 ぽぷり「雪よ! 雪!雪!」 夕方の街にしんしんと降り始めていた。 道の上はほんのり白い。買い物客の足も急ぎ始めた。 ぽぷり「どうりで今日は寒かったのね! 雪が降るなんて!      素敵!素敵! 今夜もずっと降るのかな! 明日は景色     がきっと──」 ぽぷり、空を見上げながら回っている内に、ほんの 少し積もった地面に足を滑らせ── ぽぷり「きゃっ」 四つんばいに倒れてしまう。 写真屋「(傘をさして通りかかり)大丈夫かい? ぽぷりちゃん」 ぽぷり、座り込んだままじっと掌を見つめている。 写真屋「怪我でもしたかい? ウチに寄って手当てして──」 ぽぷり「違うの──見て!」 写真屋、ぽぷりの掌を覗き込む。手袋の上に雪片。 写真屋「──雪、だね」 ぽぷり「もっとよく見て! ね、見えない!?」 ファーマシィーの電飾の光を受けて、溶ける刹那に 雪の様々な結晶が見える。 写真屋「(微笑)ああ、結晶か……」 ぽぷり「そう! 光に照らすと見えるのよ! 不思議でしょ!?」 写真屋「子どもの時分に学校では習ったけど、雪がそういう形を     しているなんてずっと忘れていたよ……」 ぽぷり「そう!(ニコ)ありがと!」 写真屋「? 何がだい?」 ぽぷり「だって、雪だってホントの綺麗な姿、見て貰いたいって 思ってるに違いないもの!」 「あ」という顔の写真店主。 ぽぷり「じゃ、あたしお夕飯の支度しなくちゃいけないの! カ メラ屋のおじさん、ばいばいっ」 駆けだしていくぽぷり。 微笑みながら見送る写真屋。 ○公園 ぽぷり「わー!」 うっすらと白いベールが包む世界。 ニコニコして見ているぽぷり。 ぽぷり「明日は雪で何を作ろうかしら!」 ぽぷり、マンションの方へ駆けていく。 ○ぽぷりの部屋 ドアの向こうの廊下でママとぽぷり、 マ マ「──もうすぐ学校が始まるから」 ぽぷり「そう! 新しい学校!」 マ マ「春の前に引っ越してきて良かったわぁ、新学期にちょう ど間に合ったんだもんねー」 ぽぷり「(あ)もうすぐ、春……」 ぽぷり、部屋の方へ マ マ「今夜くらいパパも早く帰ってくればいいのに……」 ぽぷり、部屋に入ってドアを閉め、窓へ ぽぷり「どれくらい積もったかしら!」 窓の曇りを手で拭うぽぷり。 ぽぷり「……」 ぽぷり、更にごしごし ぽぷり「……」 がらっ。窓を開ける。 ぽぷり「うそ……」 雪はとうに降りやみ、真っ黒な空。 ぽぷり「どうしてーっ!? もうやんじゃったのぉ!?」 しゅんとなって窓を閉めるぽぷり。 ─────────────────────── アルデルの小瓶を手にベッド脇に座ってるぽぷり。 ぽぷり「魔法で雪を降らせようかな……。でも、魔法の種があん なに大事に作ってるなんてあたし知らなかった」 机の上には、手帳に書きかけた雪だるまの設計図。 ぽぷり、ちょっと窓を見て、ベッドに入り込む。 ぽぷり「また来年降るのを待とうっと」 電気を消して目を閉じるぽぷり。 窓の外は静かな静かな夜。と、白く大きなものがゆ っくりゆっくり空からにこにこ銀座へ降ってくる。 ○公園/翌朝 ところどころに白いものが残っているものの、濡れ てるばかりの公園。 ぽぷり、走ってきて見回し── ぽぷり「やっぱり積もってない……」 ○ファーマシィー店内 ドアを開けて入ってくるぽぷり。 ぽぷり「ふきこさん、おはよう……」 入ってきたぽぷり、思わずブルブルっ。 ぽぷり「な、なあに? この寒さ。どうしてこんなに寒いの?」 ぽぷり、見回す。室内が白くつららまで下がってる。 ぽぷり「どっ、どうしちゃったの?これ! ふきこさん!?」 ○同/調合室 やはりここも冷蔵庫の中の様。ぽぷり、来ると── ふきこ「あらぽぷりちゃん、おはよう」 ニボシ「にゃあ」 暖炉の火の前に巨大な白いもの。 ぽぷり「あれ……? 何で雪だるまが……」 それが振り向き── 雪だるま「あのぅ、ふきこさん、この子はぁ……」 ぽぷり「(あぐあぐ)雪だるまががが、しゃべったはっ」 ふきこ「大丈夫ですわ。ぽぷりちゃんも魔女の見習いなんですの」 ニボシ「にゃあ」 ぽぷり、駆け寄ってまじまじと雪だるまを見る。 それはぽぷりの書いた設計図にそっくり。 ぽぷり「びっくり! どうして雪だるまがこんなとこにいるの!?」 雪だるま「はあ……」 ぽぷり「(唇震わせつつ)それに、あなたって、あたしが昨日の 晩書いた雪だるまの設計図にそっくり……。不思議……」 ふきこ「この名残り雪さんは、お薬を買いに来られたんですわ」 ニボシ「にゃ……」 ふきこ、凄い防寒服。 ぽぷり「お薬? どうしちゃったの?」 雪だるま「それがぁ、この街に降ろうとしたんだけどぉ、風邪ひ いちまってこんな風に固まってしまったんだこんこん」       部屋の中を冷たい風が吹く。 ぽぷり「雪が風邪をひいて、固まっちゃった……へくしっ」 ふきこ「珍しいですわねぇ。でも困りましたわ。雪だるまさんに 効く風邪薬というのは置いてませんのよ」 雪だるま「だそうでなぁ、困ってるんだよぉ。名残の雪で、綺麗 な景色にしたかったのにこんこん」 ぽぷり「そう……。(強い顔)あきらめちゃだめ! 綺麗な雪景 色、あたし見たいもの! 商店街のみんなだってきっと そうよ! ふきこさん! 魔法で助けてあげられない?」 ふきこ「そうですわねぇ……(思案)」   と、雪だるまの鼻、ずるっとズレる。 ぽぷり「! ふきこさん! 雪だるまさんが溶け始めてる!」 ふきこ「あらあらうっかりしてましたわ! 風邪をひいていても     やっぱり雪は雪ですものね」 ニボシ「にゃあ」       ふきこ、暖炉の火を消す。 雪だるま「ご迷惑かけてすいません……。このまま水になっちゃ っても仕方ないですよね。二週間も遅れちゃったから」 ぽぷり「だっ、ダメよそんなの絶対!」 ぽぷり、必死に考え始める。うーん、うーん……。 ぽぷり「雪だるまさん、お空に帰らなきゃ! 雪になって降る     んでしょ!?」 雪だるま「でもぉ……」 ふきこ「ぽぷりちゃん、何かいい考えでもあるのですか?」 ぽぷり「(ニコッ)これだけ冷たい風が雪だるまさんの回りに吹     いるんだもの」 ○ファーマシィー前 ドアを開けて辺りを見回すぽぷり、人があまりいな いのを確認、すっと中へ。 ぽぷり「(オフ/囁き)喋ったり動いたりしちゃダメよ」 雪だるま「はい」 ぽぷり「(オフ)だから返事しちゃだめってば」 と、ぽぷり、板の上に載った雪だるまを前から引っ 張って外に出そうとする。 ぽぷり「う〜〜〜〜ん」 力いっぱい引っ張るが、ドアより大きい雪だるま、 出られない。 ぽぷり「ふきこさん押してるぅぅぅ?」 ふきこの声「押してますわぁぁぁ」 ニボシ「にゃあああああ」 びくともせず。 と、雪だるま、ちょっと辺りを見回し、びょん、と ドアのこちら側に短い足を出して、身を一瞬変形さ せ自分から外へ。 ずるずるずる。 ぽぷり「わっ」 ぽぷり、一気に雪だるまを外に出す事に成功。 道歩く人、その辺りに漂う冷気にぞくっ、となって 通行人「(足を止め)立派な雪だるまだなぁ。昨日のあんなちょ びっとの雪でよくここまで作ったねぇ」 ぽぷり「あはは。ありがとう」 通行人「(風に身を竦み)何でこの辺はこんなに寒いんだ……」 通行人、去る。 ぽぷり「この風があれば、きっとピンチィが雪だるまさんを持ち 上げて、高いところまで連れてってくれるわ! そした らきっと雪になれる!」 ふきこ「まあ、ぽぷりちゃん、それは良い考えですわ」 ぽぷり「じゃあ、あたし魔法を呼び出してくる!」 ○ファーマシィー店内 戻ってきたぽぷり、ポッケから魔法の種を出し、ア ルデルの小瓶に入れて── ぽぷり「今度こそピンチィ、出てきてね! 雪だるまさんの風邪 を治したいの! マホウヨマホウヨウマレテオイデ!」 ぴかっ! なかなか出てこない精霊。瓶の口でモヨモヨ。 ぽぷり「どうしたの? 早く出ておいで?」 みゅ〜〜〜〜っ、と出てきたのは、ニコニコ笑顔の 光の精霊。 ぽぷり「また違っちゃったぁ……。あなたは何の精霊?」 精 霊「にっかにっかにっか、にっかにっかにっか」 ぽぷり「何か、陽気な子……。明るいっていうか……。おひさま みたいだけど、カニにも似てるかも……」 精 霊「にっかにっかにっ」 ぽぷり「えっと、あなたはリックよ。そういう名前だって覚えて いてね。リック、雪だるまさんを助けてあげられる?」 リック「にっかにっかにっか……」 ぽぷり「(困った顔)聞いてるぅ……? どうしよう! この子     がもしものすごく熱くなったりしたら、雪だるまさん溶     けちゃう!」 と、背後のドアが凄い風に叩かれる。 ぽぷり「(振り向き)!」 ○ファーマシィー前 ひゅううううう ごおおおおおお 凄まじい冷気が白いブリザードとなって商店街を吹 き抜けている。シャッターがどんどん閉まっていき、 通行人達もいなくなっている。 ぽぷり「どっ、どうしちゃったの!?」 ふきこ「(寒い)今、雪だるまさんがくしゃみをしましたの」 ニボシ「にゃ、あ、あ(寒い)」 雪だるま「ごめんよぉぉ、そんなつもりはなかったんだよぉ」 バン! ドアが開いて満面笑みのリック登場。 ぽぷり「リック!」 ふきこ「あら、光の魔法ですわね。光で、どうするんですの?」 リック「にっか……? にっかにっかにっか……」 リック、ふわふわと雪だるまの顔の前に。 雪だるま「──君は陽気だねぇこんこん」 リック「にっかっかにっか」 リック、いきなり体から眩い閃光! ぽぷり「わ!」 雪だるまの体が反射してキラキラと光り始めた。 ぽぷり「! すごい! 何て綺麗なの!?」 雪だるま「ああ、気持ちいいなぁ。段々──力が、湧いてきたよ。     君の光を浴びると──」 ぽぷり「光?──光に照らされて──結晶……!」 リック「にっかにっかにっか」 リックの体、膨張し光になって拡散! 真っ白! 目を開けるぽぷり──、目をまん丸に── ぽぷり「きれい……」 にこにこ銀座商店街の道から、雪の結晶(手のひら くらい)が沢山、青空に向かい浮き上がっていく。 ぽぷり「でも、雪が降る、っていうのとは違っちゃった……」 ふきこ「(ニコ)こんなに素敵な景色になれたんですもの、名残 り雪さんも喜んでますわ。それに、商店街の人達も」       ぽぷり、振り向く。 シャッターが次々と開き、見上げる商店主達。 ぽぷり「──(ニコ!/見上げ)名残り雪さん、また来年ねーっ」                     つづく