ふしぎ魔法 フ ァ ン フ ァ ン フ ァ ー マ シ ィ ー               その10         く し ゃ み の ひ み つ                      第2稿                   脚本/ 小 中 千 昭 Animation Play by Chiaki J. Konaka                              98/01/17 登場人物 ぽぷり〔西野かおり〕(10) ふきこさん(年齢不詳) ニボシ〔黒い子猫〕 ニッケ〔妖精〕 八百ひち 魚まさ カメラ屋 主婦 客 たばこ屋 ○ぽぷりの部屋/夜 眠っているぽぷり。と、極く微かに水の音──。 目を覚まし窓の方へ向かうぽぷり(音は消えてる)。 寝惚け眼で夜空を見上げる。 キラキラと金色のオーロラがうっすらと見えた。 ぽぷり「あれぇ……、何だろう……。綺麗……」 ○にこにこ銀座/午後 学校帰りのぽぷり。元気よく走ってくると── ファーマシィー前に5〜6人の行列。 駆け寄るぽぷり。マスクをしてる人、始終くしゃみ をしてる人。 ぽぷり「どうしちゃったの?みんな」 八百ひち「おう、ぽぷりちゃん。なーんかくしゃみが止まらねぇ んだよ。全く商売ンなんねぇやくしゅん!」 魚まさ「花粉症とは無縁だと思ってたんだけどなぁはくしゅ!」 カメラ屋「急にアレルギーになる事もあるんだそうで──へっく しょい!へっくしょい!」 ぽぷり、びっくり。 ○ファーマシィー店内 主婦に薬を渡しているふきこ。 主 婦「まったく困ってしまうわくしゅん」 ふきこ「あんまり酷かったら、お医者さんに行かれた方がいいで すわ」 ニボシ「にゃあ」 主 婦「助かったわ。ふきこさんのお薬は本当に効くのよね」 出ていく主婦。 すれ違いに入ってくるぽぷり。 ぽぷり「みんな急に花粉症になっちゃったの?」 ふきこ「こんにちはぽぷりちゃん。みなさん大変ですのよ。(次 の客に)あなたも?」 客  「はっっっくしょん!」       くしゃみと一緒に、一片の金色の粉が舞う。 ふきこ「──あら、これがくしゃみの原因かしら……」 ぽぷり「! あたしこれ、昨日の夜窓から見えたわ!」 ○調合室 紅茶カップ脇のお皿にクッキーを入れて、残りが入 った袋は洗濯バサミで閉じるふきこ。 ふきこ「くしゃみを抑えるお薬、切れてしまいましたわ。また作 っておかないといけませんですわね」 ニボシ「にゃあ」 ぽぷり「あっ、そうだ! あたしの魔法の種も、もう少ないの」 ふきこ「(微笑)はいはい」 ─────────────────────── 種の小匣を開けるふきこ。 オルゴールが鳴って、色とりどりの種が輝いている。 ぽぷり「わぁ……」 種をすくって、ぽぷりのポッケに入れてあげる。 ふきこ「段々ぽぷりちゃんも魔法との付き合い方が判ってきまし たですわね」 ぽぷり「ええ。大事に使うわ!」 と、向こうの方から小さく子どもの声。 声  「すみませーん。くださいなー」 ぽぷり「あっ、またお客さんよ、ふきこさん」 ふきこ「あら、困りましたわ。くしゃみのお薬、もう無いのに」 ○店内 目をまん丸くしてるぽぷり。 店に来ていたのは──30センチ程の芋虫。 ぽぷり「いっ、芋虫さんが……」 芋 虫「おや? こちらのお嬢さんは私が見えてるんですか」 ふきこ「ぽぷりちゃんも、まだ見習い中ですけど魔女ですのよ」 ニボシ「にゃあ」 芋 虫「ああ、ならいいんです。とにかく、参ってるんです」 ふきこ「まあ、どうしたんですの」 ぽぷり「い、い、芋虫が……」 芋 虫「芋虫芋虫って呼ばないでください。私にはニッケってい う名前がちゃんとあるんですから」 ぽぷり「あ、ごっ、ごめんなさいニッケさん。でもあたし、びっ くりしちゃって」 ふきこ「ええとニッケさんでしたわね。どうされたんですの?」 ニッケ「おおそうでしたそうでした。実は私、どこへ行ったらい いのか判らないのです」 ぽぷり「ええっ?」 ニッケ「それどころか、これまでどこにいたかも判らない。判る のは、私の名前がニッケという事だけで……」 ぽぷり「それはきっと記憶喪失、っていうのよ! でも、あたし 初めて見るわ。記憶喪失の芋虫さん、じゃなくって、ニ ッケさんなんて」 ふきこ「それは困りましたわねぇ……。記憶を取り戻すお薬って いうのは……」 ニッケ「無いんですか? ファンファンファーマシィーだったら あるかもしれないと思ったのに」 ふきこ「何か覚えている事って、他にありませんですの?」 ニッケ「それが……。ああ、何となく、私以外に仲間がいた様な 気がするなぁ……」 ぽぷり「ねえニッケさん、このお店までどうやって来たの? そ れを辿っていけば何か判るかもしれないわ!」 ふきこ「(ニッコリ)そうですわね」 ニボシ「にゃあ」 ○にこにこ銀座 ぽぷり、道路のはじっこをゆっくり歩いている。 ぽぷり「この道でいいのね?」 ぽぷりのポケットの中にニッケがいて顔を出す。 ニッケ「はいはいそうです。すみませんね、私、歩くのが遅いも んで……」 ペットショップ前で、たばこ屋とばったり。マスク をしている。 ぽぷり「あっ!」       ぽぷり、さっとニッケを隠す。 たばこ屋「おやぽぷりちゃん、へっくし」 ぽぷり「こっ、こんにちはたばこ屋さん。今日はお買い物?」 たばこ屋「ああ。ウチの金魚の餌を買いにね。どうして道のはじ っこを歩いてるんだね? 何か探し物でもあるのかね」 ぽぷり「えっ? そ、そう! 探しているの!」 たばこ屋「一緒に探してあげようかへっくし」 ぽぷり「平気! あたし一人で探すわ!ありがとう! お大事に ねー!」 ぽぷり、ダッシュ。 ○川に掛かる橋 相変わらず道のはじっこを歩くぽぷり。 ぽぷり「(ハッ)水の音──」 ニッケ「どうしたんですか? ぽぷりさん」 ぽぷり「あたし昨日の夜、水の音が聞こえた気がするの!」 ○川原 降りてきたぽぷり。 ぽぷりのポケットから飛び出すニッケ。 ぽぷり「どうお? ニッケさん。見覚えない?」 ニッケ「(川原を見回し)見覚えあるような、ないような……」 ぽぷり「もう、頼りないわねえ。どうしたら思いだしてくれるの かしら……。やっぱり、魔法を使ってみるしかないかも」 ぽぷり、アルデルの小瓶に種を入れ── ぽぷり「マホウヨマホウヨウマレテオイデ!」 ぴかっ! ぽよん! 出てきたのは、シブ。魚型で風船の様に浮いている。 ぽぷり「(嬉しい)シブー! 久しぶりね! あ、でも、シブは     水の魔法よね。ニッケさんの記憶喪失を治せる?」 シ ブ「ぷくっ、ぷくっ」 ぽぷり「どうしてシブが出てきたんだろう……?」 ニッケ「おや、水の精霊ですか。お嬢さん、大した魔女なんです ね。おみそれしちゃいます」 ぽぷり「(破顔)えっ!? あたし、大した魔女なんかじゃないけ ど、でも、うふふっ。そうなの、魔女なのよ! (あ) でも、シブ、このニッケさんを助けてあげたいんだけど」 シ ブ「ぷくーっ」 シブ、川の中にぽちゃんと入る。 ぽぷり「あっ! シブ!」 と、水の中からネッシーの様に首を伸ばし シ ブ「ぷくぷくっ」 ぽぷり「な、何をしてるの? そこは川の中じゃない」 シ ブ「ぷくぷくぷくーっ」 首を振ってるシブ。 ぽぷり「ええ? 何を言ってるのか判んないわ」 ニッケ「どうやら、あそこへ来て欲しいみたいですよ、お嬢さん」 ぽぷり「だって、川の中よ、あそこは。まだ水だって冷たいわ」 シ ブ「(ニコニコ)ぷーくぷーく」       シブ、首をぎゅーんと伸ばしてぽぷり達を包む。 ぽぷり「わっわっ! シブ何してるの!?」 ぼちゃん! シブはぽぷり達を川の中へ。 ○川の中 シブ(魚形態)は大きな風船の様になって、中のぽ ぷりを包んでいる。 ぽぷり「わあ! 息が出来る! 川の中をこんな風に動けるなん て!」 ぽぷり、川の中を泳ぎ回る。 流れる水草。岩の間を泳ぐ小さな川魚たち。 流れに身を任せてくるくると回るぽぷり。 ぽぷり「あははははは。何かこれすごーく面白いー」 ニッケ「め、め、目が回るんですけどおおお」 ぽぷり「あっ、ごめんなさい!」 回転を止めるぽぷり。 シ ブ「ぷくぷく?」 ぽぷり「えっ? なあに?」 ニッケ「あっ! ここら辺です! そうですそうです! 私は確 かにこの辺にいた!」 ぽぷり「やっぱりそうだったのね! 水の音が聞こえたんですも     の! でもどこかなぁ……」 見回すぽぷり。深くなっている川底には、岩がゴロ ゴロとしているばかり。 ぽぷり、泳ぐ恰好で岩を越え裏側を見る。 そこには──小さな穴が幾つも開いていた。 ぽぷり「あっ、何か光ってる……」 穴の中には、何かがキラキラと光っていた。 近づいて覗き込むぽぷり。 ぽぷり「何なのかしら、この穴……」 と、ニッケ、ぽぷりのポケットから飛び出して、シ ブのバルブからも飛び出す。 ぽぷり「ニッケさん!?」 ニッケ、穴の中に泳いで入り込む。 ニッケ「ここで私は冬眠していたんです。やっと思い出しました」 ぽぷり「冬眠……? ねえ、そこに光っているのはなあに?」 ニッケ「春の光ゴケです。そうだ、これが無いと私は羽化出来な かったんじゃないか。思い出した思い出した」 ぽぷり「大丈夫ーっ?」 ニッケ「見ていてください! 私のホントの姿を!」 光ゴケの光が淡く強まり,ニッケの体を包む。 ぽぷり「!」 ニッケ、身を丸め蛹状になって穴から浮上。       うっとりと見上げるぽぷり。太陽の光の中で、蛹の 背が割れ、美しい羽根が現れる! ぽぷり「なんて綺麗なの……。あっ、待って!」 慌ててシブと一緒に浮上するぽぷり。 ○川 ザバッ! シブが浮上し、ぽぷりを川岸へ上げた。 ぽぷり、見回す。 ぽぷり「ニッケさん! ニッケさん!?」」 と、頭上より飛来してくる妖精。 ニッケ「見習い中の魔女さん」 ぽぷり「わぁ……」 ニッケ「どうもありがとうございます。おかげで、寝ぼけていた 私も、やっと羽化出来ました」 ニッケが羽ばたく度に、淡い鱗粉が舞い散る。 ぽぷり「──妖精さんだったのね……」 ニッケ「そうなんですよ。冬の間は仲間たちと一緒に、川の中で 冬眠していたんです。もう仲間たちはとっくに羽化して それぞれに飛んでいってしまった様です」 ぽぷり「そうだったんだ……はっくしょん」 ニッケ「ほんとにありがとう。ふきこさんによろしくお伝え下さ     さいね」 ぽぷり「はくしっ。うん、わかっ──へっくし、へっくし」 ニッケ「そちらの水の魔法さんもお元気で。それじゃさよなら」 キラキラと輝きながら、ニッケ、上昇。 そのまま山の方に向かって飛び去っていく。       シブと一緒に見送るぽぷり。 ぽぷり「さよならーっ! 妖精さー、へくしっ」 ○ファーマシィー調合室 乳鉢で薬を擦り終えたふきこ ふきこ「さあ、お薬出来ましたですわ」 ニボシ「にゃあ」       椅子にちょこんと座ってるぽぷり。 ぽぷり「あ、ありがと──へくしっ」 ふきこ「商店街のみなさんのくしゃみは、一斉に羽化した妖精さ んたちのせいだったんですわね」 ぽぷり「とーっても綺麗だったのよ! 妖精さんたちがいっぱい、 一斉に羽ばたくところ、見たかったなぁ……へくしっ」 ふきこ「(くすくす)ものすごいくしゃみを覚悟しなくちゃいけ ませんわね」       ぽぷり、ぱっと自分の鼻を洗濯ハサミではさんで ぽぷり「(ニコッ)こうすれば平気よ!」 笑い合う二人。                     つづく