ふしぎ魔法 フ ァ ン フ ァ ン フ ァ ー マ シ ィ ー            その29           ち て い た ん け ん                 第2稿                脚本/ 小 中 千 昭 Animation Play by Chiaki J. Konaka                       98/05/17 登場人物 ぽぷり〔西野かおり〕(10) ふきこさん〔ファンファンファーマシィー店主〕 ニボシ〔黒い子猫〕 のんすけ(03)〔各話必ず一回登場〕 ぽぷりのママ 煙草屋 カメラ屋 魚まさ 土猫たち つちクジラ 風の精霊ピンチィ ○にこにこ銀座商店街/夜 夜も更けた頃──。シャッターの閉まった商店街に ミョーな猫の鳴き声がニィア、ニィア。 その一匹がふっと往来に出てくる。 ほっかむりしたミョーな猫──、ひと鳴き。 ○同/翌午後 駅の方から元気良く歩いてくるぽぷり。 と、煙草屋前では、煙草屋とカメラ屋が店の前に立 って思案気にしていた。 ぽぷり「こんにちは」 煙草屋「やあぽぷりちゃん」 カメラ屋「お帰り」 ぽぷり「ただいま。何かあったの?」 煙草屋「ああ、ここに置いていた筈の、ライターの見本が無くな ってるんだ」 ぽぷり「え……」 カメラ屋「ウチの店でも小さなルーペがね、無くなっていて」 ぽぷり「(思案)──煙草屋さんの無くなったものって、どうい     うもの?」 煙草屋「(指で示し)これくらいの小さな銀色でピカピカなもの だよ。でも大したものじゃあないんだ」 ぽぷり「ふうん……、そういうものを持ってっちゃうなんて──     カラスかしら……?」 カメラ屋「(苦笑)店の中にはカラスは入って来ないと思うよ」 ぽぷり「そうよね……(思案)」 ─────────────────────── 商店街を歩きながらぽぷり── ぽぷり「でも勝手に持っていっちゃうなんて酷いわよね……。魔 法で探してみようかしら──」 ポケットに手を入れ── ぽぷり「あ、またふきこさんに貰わなくっちゃ!」 ○ファーマシィー/調合室 かがやきのこばこが開く。 ぽぷり「わぁ……。いつ見ても、この匣に入っている魔法の種は キラキラしていて綺麗ね」 ふきこ「(微笑)それぞれの魔法の力が輝いているのですから」 ぽぷり「宝石みたい。ううん、宝石よりもずっと綺麗だと思う。 ──もっと大事に魔法、使わなくっちゃ……」 と、それを窓からまん丸な目が覗いていた。 ニボシ「(気づき)にゃーっ! にゃにゃーっ!」 ぽぷり「ニボシ、どうしたの?」       ぽぷり、窓を見るが、もう目は消えている。 ふきこ「今日はニボシ、ちょっとおかしいのですわ」 ニボシ「にゃー……」 ぽぷり「──何かの気配に気がついていたのよ! きっとそうに     違いないわ! あたし外見てくる!」   飛び出していくぽぷり。 ふきこ「あらあら……(見送る)」 ○ファーマシィー前 買い物客達で賑わう、夕暮れの商店街。 ぽぷり、見回す──と、 ぽぷり「!」 ほっかむりした猫が前足に蛇口の把手を持って、の そのそと隅を歩いていた。 ぽぷり「へええんな猫。どうして猫があんなもの持っているの?     それにどうしてあんなものを被っているのかしら……」 ぽぷりの視線に気づいた猫、まん丸な目でじーっと ぽぷりを見つめる。 ほっかむり猫「ニィヤ ニィヤ」 猫、のそのそっと路地に消える。 ぽぷり「! そうだわ! きっとあの猫だわ!(慌てて追う)」 ○神社境内 もうかなり薄暗くなっている寂しい境内。 ぽぷり、駆けてきて見回す。 ぽぷり「──あれえ……? どこ行っちゃったの……?」 ─────────────────────── 社の裏側に回ってくるぽぷり。 薄暗い中、まん丸な目を爛々と光らせた猫、くるっ とこっちを向く。 ぽぷり「うっ……」 猫、むくっと二本脚で立ち上がり── ぽぷり「た、立った!」 しゅん! 一瞬の内にその場からかき消える。 ぽぷり「ええっ!?」 ぽぷり、猫がいたところまで駆けてくる。 穴がぽっかりと開いていた。 ぽぷり「(ギョッ!)」 まん丸な目が中から覗いていた。 ぽぷり「い、い、いた……」 猫、上を向いたままこそこそこそこっとそのまま穴 の下へ降りていってしまう。 ぽぷり「あっ、待って!」 ぽぷり、穴に手を差し伸ばすが届かず。 ぽぷり「──暗くてよく見えないわ……。あっ、そうだ! こう     いう時ならリックがきっと──」 ─────────────────────── アルデルの小瓶に、魔法の種を入れるぽぷり。 ぽぷり「(口に蓋くわえ)ひとふぶらってらいじに……あっ」 口から蓋が落ちてしまった。 ぽぷり「蓋、どこ行っちゃったの……?」 見当たらない。這い回って捜し回るぽぷり。その拍 子に、種が幾つかポロポロと瓶から落ちてしまう。 ぽぷり「ない! ないわ! どうしよう……、穴の中に落っこっ ちゃったに違いないわ……」 穴の中に入ろうとするが── ぽぷり「(見回し)もう帰らないとママが心配してる……」 唇を噛み──、ダッと駆けだすぽぷり。 と、穴からまたあの目が下から覗き──、すーっと 草の生えた土が現れて穴を覆ってしまう。 ○ぽぷりの部屋/窓外は夜 ぽぷり「マホウヨマホウヨ、ウマレテオイデ!」 掌で蓋をし小瓶を振って、ゆっくり掌を外す。 何も起きない。 小瓶を逆さにする。コロコロと種が転がり出る。 ぽぷり「──蓋が無いと魔法が生まれてくれない……(泣きそう) どうしよう……、ふきこさんから貰った小瓶なのに。も うあたし、魔法を使う事が出来ないの?(しょぼん)」 と、ドアがノックされ マ マ「(ドアを開け)ご飯だってば、ぽぷり」 ぽぷり「あ、うん……今行く」 マ マ「どうしちゃったの? 元気ないけど」 ぽぷり「──無くしものをしちゃったの……」 マ マ「──、大事なものなのね」 ぽぷり「ええそうよ。とっても大事なもの」 マ マ「(微笑)あたしもよく無くしものしちゃうじゃない」 ぽぷり「──」 マ マ「慌てて探していると見つからないけど、後でゆっくり落 ちついて探せば出てくるものなのよね(苦笑)」 ぽぷり「──うん。ありがとうママ」 マ マ「さ、ご飯食べましょ」 ぽぷり「はい(部屋を出ていく)」 と、窓の向こう── ○にこにこ銀座商店街 店も閉まって静かになっている。 と、暗がりを二本足でのそのそと進むほっかむり猫 の一群が移動。ファーマシィー前に集結する。 ○ファーマシィー/調合室 ふきこの指輪の輝く指が、輝きの小匣の蓋を開く。 窓から覗くまん丸な目たち。 鳴るオルゴール。その中に種を入れて閉じ──、 ふきこは部屋の外へ。 ふきこ「(オフ)さ、ニボシ、二階にいきますわよ」 まん丸な目達、ふきこの指を目で追って── ○ぽぷりの部屋 パジャマのぽぷり、蓋の無い小瓶に見入っている。 ぽぷり「──あたしが無くしたんだもの……、あたしが探さない といけないんだわ……(強い顔になっていく)そうよ!」  ────────────────────── 机で手帳に書きつけていくぽぷり。 ぽぷり「穴の中はきっと暗いから、懐中電灯は絶対に必要だわ。 中は結構広いのかもしれないわね。途中でお腹が空いち ゃうかもしれないから、お菓子も少し持っていった方が いいわ。あ、広いって、途中で道が別れていたりしたら 迷ってしまうかも──(思案)。そうだ! 前に本で読 んだ事がある。入口からずっと糸を引っ張っていけば、 迷路だって必ず出口に出られるのよね! 糸、糸……」 わくわくしているぽぷり。 しかしその窓の外── ○にこにこ銀座商店街/俯瞰 朧月夜。その月明かりが雲間に消えて── ○ふきこの部屋 ベッドサイドにカモミール・ティー、古いアルバム を膝に起きふきこ、椅子に座ったまま、眠り込んで       しまっている。 と、遠くからニィヤ、ニィヤという声が。 ニボシ、ハッと警戒した顔で見回している。 ニボシ「にゃっ! にゃにゃっ! にゃあああ!」 ふきこ「(寝ぼけて)はいはい、ちゃんとベッドに入りますよ」 寝ぼけたままふきこ、ベッドに入り── ふきこ「お休みなさい、ニボシ」 ニボシ「にゃ〜(そ、それどころでは)」 パチン。ベッドランプを消すや、ふきこの寝息。 月明かりが窓から差す──。 ○ぽぷりの部屋 机で突っ伏して眠ってしまっているぽぷり。 と、ドアが開いてママ、入ってくる。 マ マ「ぽぷり……」 ─────────────────────── 毛布を掛けてあげるママ。 ぽぷり「(寝言)むにゃむにゃ……」 マ マ「(苦笑)──みんなで山登りでもするのかしら……」 机の上には小振りなリュック。 ぽぷりのノートが手の下から覗いている。 マ マ「お菓子……ね……(思いつき笑み)」 ○ふきこの部屋 寝入っているふきこ。 その脇で眠っていたニボシ、耳をピンと立て── ニボシ「にゃっ!」 いつの間にか部屋の中に、まん丸い目達が群れで入 り込んできていた! ニボシ「にゃにゃっ!! にゃーっ!」 ふきこ「(寝ぼけて)こらこらニボシ、そんなにわたくし食べら れませんですわ」 ニボシ「にゃっ!」 ほっかむり猫達、ベッド脇に集結。 ふきこの指をじーっと見る。キラキラ光る指輪。 前列の猫、そーっと指に手を延ばす。 ニボシ「(威嚇してるつもり)にゃーっ」 ふきこ「う〜ん、うるさいですわよ、ニボシ……」 寝返りを打って手がベッドの向こう側に。 顔を見合せるほっかむり猫達。 ニボシ「にゃっ! にゃにゃーっ(起きてーっ)」 ふきこ「う〜ん……、あら?」 ほっかむり猫、いきなりふきこの体を持ち上げた。 ふきこ「あら? あららら?」 猫たちに担がれベッドから出されるふきことニボシ。 ふきこ「みなさんどちらからいらしたんですの? まあ、わたく しお化粧ちゃんとしてませんで、お出かけはちょっと困 りますわ、あら? あらららららら」 ふきこの重さで、猫の一匹、フラフラとなり、サイ ドボードにぶつかる。 がしゃん。ティーカップが落ちて割れた。 ふきことニボシは部屋から外に出ていく。 ふきこ「(オン〜オフ)ちょっと皆様、そんなに急に行かなくて     も、お茶でも皆様で如何?」 残った猫「……」 ほっかむりをとると、耳などなく、アンテナの様な ものが頭から生えている。 手拭いで零れたお茶を拭いた猫、否、奇妙な生物、 慌てて後を追っていく。後には猫達の足跡が……。 ○にこにこ銀座商店街/早朝 まだ茜色が残る空。新聞配達のバイクの音。 ○ぽぷりの部屋 ガバッと起きるぽぷり。 ぽぷり「さあ! 今日は探検の日だわ!」 机を見て驚くぽぷり。リュックの脇に大きな包み。 ぽぷり「(近づき)なあに?これ……。氷砂糖……?」 脇にメモが。 ぽぷり「(読む)疲れたら甘いものがいいのよ。みんなで分けて 食べてね。遠足、楽しんできてらっしゃい──ってママ (嬉しいのと困るのと……)」 ○ファーマシィー前 リュックを背負ったぽぷり、駆けてくる。 ぽぷり「氷砂糖が重たい……。でもせっかくママがくれたんだし     ──、ふきこさんおはよーっ!」 と、ドアが閉まっていた。 ぽぷり「あれ、未だ起きてないのかしら……」 ○ファーマシィー裏手テラス 回ってきたぽぷり、ドアが開いているのに気づく。 ぽぷり「──(嫌な予感)どうしてここが開いているの……?」 ○同内/階段 ぽぷり「(オフ)ふきこさん! ふきこさーん!? 二階だわ」 ぽぷり、階段を駆け上がる。 ○ふきこの部屋 ぽぷり「ふきこさ──」 バン! ドアを開けたぽぷり、愕然。 ベッドは乱れたままで、床には割れたカップ、その 回りには猫の足跡がびっしりと。 ぽぷり「(呆然)た、た、た、大変だぁ! ──ふきこさんが、 盗まれちゃった……、どっ、どうしよう──、(キッ) 怖がってちゃどうにもならないわ!」 ○神社裏 駆けてきたぽぷり、穴があった辺りに来るが── ぽぷり「! 無い! あの穴が無いわ!」 しゃがみ込んで見探すぽぷり。 ぽぷり「あれって夢だったの? ううん、そんな筈ない! 絶対 この辺にあった筈──、そうだ! こういう時は──」 ポシェットからルーペを出し ぽぷり「タビスのルーペなら、見えないものが見えるんだから。 ミエナイモノミエナモノミセテオクレ!」 ルーペ越しに覗くと── ぽぷり「! あった! ここだわ!」 ぽぷり、草の中に手を入れる。と、すーっと中に入 ってしまう。 ぽぷり「うん!(決意)」 ─────────────────────── 穴近くの低い木に、赤い糸を結びつけるぽぷり。 ぽぷり「これでまたここに帰ってこれるわ!」 ぽぷり、フードを被る。フードの耳で懐中電灯を頭 に結わえている。 ぽぷり「魔法が一緒じゃないからちょっと心細いけど──、でも ──、なんかワクワクしてきた! しゅっぱーつ!」    ぽぷり、狭い穴に入り込んでいく。 ○斜めの細いトンネル 下っていくぽぷり。 懐中電灯はすぐ前くらいしか照らせない。 ぽぷり「にこにこ銀座のすぐ下に、こんなトンネルがあったなん て全然知らなかった。街の人達だって知らなかったに違 いないわ!」 ぽぷり、手帳を出して見る。 ぽぷり「この方向だとすると、(見上げ)ちょうど魚まささんの お店の下だわ」 ○魚まさ 魚まさ「へっくしょいっ!ちきしょーめ誰か噂してやがんなっ」 ○細いトンネル 勾配は水平になっているが、依然細い径のトンネル。 ぽぷり「それにしてもあの猫ってなあに? 二本足で歩くし、鳴 き声だってニィヤニィヤだって。そんな鳴き方する猫な んて聞いた事もないわ。あ」 細いトンネルはやや広い二股に別れようとしていた。 ぽぷり「どっちだろう……。う〜〜〜ん、取り敢えず右に行って みよう。ダメだったら糸を辿って戻ればいいもの」 ぽぷり、右のトンネルへ消えていく。 ──と、黒い影が背後から現れ、糸をくるくると巻 いて団子にしている。 ○その先のトンネル 広くなっていた筈が、どんどん狭くなっていく。 ぽぷり「あれぇ……、こっちの方が広いと思ったら、なんか、ど んどん、狭く……あたっ!」 頭を天井にぶつけるぽぷり。拍子に懐中電灯が割れ てしまう。 ぽぷり「(オフ)どうしようっ! 懐中電灯どこっ!?」 ゴソゴソ動き回るぽぷり。ガンガン頭をぶつけてる。 ぽぷり「(オフ)あっ、イタッ、イタタタッ。えーーん、早くこ こから出ないと──わぁぁっ!」 ゴロッ! 床が突如割れて転落するぽぷり。 ぽぷり「(オフ)きゃああああ!」 と、提灯アンテナを点灯させた土猫、来て下を覗く。 土 猫「……」 ○回廊 直径5mはあるかという広いトンネル。 そこに壁を伝いながらザザーッと落ちてくるぽぷり。 ぽぷり「わああああああっ!」 ずる。やっと停止。 ぽぷり「ふうっ……。(見回す)一体ここ、どこら辺なの……? 懐中電灯が無いと暗くって全然見えないわ……」 ぴちーん……。水の雫が遠くで落ちる音。 ぽぷり「(悪寒)──なんて冷たい空気なの……? こんなとこ ろであたしひとりぼっちなんて。魔法も使えないのに、 あたし──」 カサカサッ。何かが背後で動いた音。 ぽぷり「(ひくっ)──誰……?」 しーん……。 ぽぷり「(泣きそう/虚勢を張って)あ、あたし、魔女なのよ!?」     (ハッとなる)そうよ……。あたし魔女なんだもん、元     気出さくっちゃダメだわ!     こういうところ、前にも来た事があったじゃない! つ ちクジラさん、この近くにいないかな。つちクジラさぁ ぁぁぁん!」 ぽぷりの声、こだまする。 ────────────────────── 後を尾けていた土ネコ、びっくりして耳を抑える。 ────────────────────── ぽぷり「──(あの時の歌をアカペラでヴァースだけ歌う)」 ずもももももも。地が震えた。 ぽぷり「!」 眼前の壁の向こうから、光が透けて近づいてくるの が見える。 ぽぷり「つちクジラさん!」 半透明の壁の向こうに、つちクジラの優しい目。 ぽぷり「つちクジラさん! また会えてとっても嬉しいわ!」 優しい目でぽぷりを見つめるつちクジラ。 ぽぷり「懐中電灯を無くして困っているの。あたしここで大事な ものと大事な人を探しているのよ」 と、土の壁からつちクジラの星くず提灯だけが突出。 ぽぷり「!」 星くず提灯から、ひと雫の光が落ちる。 ぽぷり、慌てて掌でそれを受け止める。 ぽぷり「星くず……。分けてくれるの!?ありがとう!」 つちクジラの姿、壁の向こうに小さくなっていく。 ぽぷり「つちクジラさん、ありがとぉぉぉ!」 クジラが消えた後も、ぽぷりの手の星屑が回りの雲 母類を反射してきらきら輝く世界になっている。 ─────────────────────── 目を爪の手で隠し、眩しそうな土猫。 ─────────────────────── 元気よく歩きだすぽぷり。 ぽぷり「さあっ! 頑張って探さなくっちゃ!」 と、ぽぷりのリュックの底がさっきスライディング したおかげで破れており、ポロポロと氷砂糖が一粒 ずつ落ちている。 気づかないで奥へ向かうぽぷり。 土猫、氷砂糖を拾い、まん丸な目の前へ。 土 猫「……」 キラッと奥が光る。 毛糸玉持った土猫、無心で氷砂糖を拾い集めていく。 と、闇の中から丸い目がもう一組、二組……。 ○ドーム ばおおおんん。広大な地下湖が広がる空間。ぽぷり の手にした星くずが、高い天井の雲母をきらめかせ ている。 ぽぷり「──すごぉぉい……」 湖の沖、霞の中で、首の長い龍悠然と泳いでいる。 ぽぷり「──こんなに凄いところが地下にあるなんて……。ああ! あたしここ大好きになっちゃったわ! でも、今はとに かくふきこさんとアルデルの小瓶の蓋が先よね。(あ… …)ここはもう先に行けないって事は──、(ガクッ) さっきの別れ道まで戻んなきゃいけないのぉ……?」 ぽぷり、リュックにつけた赤い糸を手繰り始める。 ぽぷり「この糸をたぐっていけばいいんだけど……」 と、糸をたぐりながら元のトンネルに戻ろうとする と── ぽぷり「(ギョッ)」 赤い糸を巻いた毛玉を持った土猫、氷砂糖を両手一 杯に抱えた土猫らとばったり。 ぽぷり「……」 土猫達「……」 ぽぷり「きゃあああああああっ!」 土猫達「(声無き悲鳴)」 土猫数匹、慌てて逃げ出し闇の中に消えていく。 ぽぷり「(はっ)あっ、待って!」 土猫の一人、逃げ遅れ、片方の爪でいきなり壁をガ       リガリ堀り始める土猫。 土 猫「すもももっもももっ」 ぽぷり「なっ、何してるの?」 ずんずんと壁の奥に入っていく土猫。 ぽぷり「逃げるつもりね! いいわよ! あたしだって!」 むんっ! 狭い穴に無理やり入るぽぷり。 ○すごく狭い穴 ずんずんと堀り進んでいく土猫。 後を追うぽぷりも負けてない速さ。 ぽぷり「待ちなさーーーい!」 ボロッ。土猫、向こう側の壁に出たらしく消える。 ぽぷり「!」 ○土猫里 ミョーな彫刻が施されたホール状の暗い空間。 ぽぷり、狭い穴から抜け出て──落ちる。 ぽぷり「あたっ……」 見回すぽぷり──ギョッ。 土猫たちがまん丸い目を開けたままじーっと隅に固 まって立っている。 ぽぷり「ひっ(怖い)こんなにいっぱい……」 土猫達、動かない。 ぽぷり「?」 ぽぷり、ゆっくりと移動するが、土猫、見ない。 ぽぷり「──ひょっとして」 そーっと近づき、耳を澄ませるぽぷり。 くーか くーか くーか……。 ぽぷり「(安堵)眠ってるのね。なぁんだ。でも、目を開けたま ま眠るなんて、ホントに変だわ」 耳に当てた手を戻そうとすると──、 ぽぷり「『んっ?』(再度耳に手を当てる)」 遠くからオルゴール音が。 ぽぷり「──!あの音──、ふきこさんがいるんだわ!」 行こうとするぽぷり。しかし── ぽぷり「あら……?」 土猫達、さっきとちょっと位置がずれ、ぽぷりの行 こうとする前に立ちはだかっている。 ぽぷり「う……、こんなところに、いたっけ……?」 そーっと脇に移動するぽぷり。 と、丸い目がじーっとぽぷりを追う。 ぽぷり「(脅え)ひ〜。起きてるぅぅ」 ダッシュ! どどどどどど! 追う土猫の群れ。 ○地中迷宮 ぽぷり「きゃああああっ!」 縦横に入り組んだトンネルの中を逃げまどうぽぷり。 ぽぷり「なっ、何であたしをそんな追っかけるのよぉぉぉぉ!」 土猫達「すもももももも」 真っ当に追っ掛ける土猫もいれば、とんでも無いと ころからいきなり顔を出す土猫もいる。 土猫達「(口々に)すももも、もももももも、すももも」 ぽぷり「うっ! ここは行き止まりぃぃ!」 反転して、迫る土猫の上をジャンプ! ─────────────────────── ぽぷり「わわわわわわわわ」 土猫達「すももももーん ももももも」 必死に走るぽぷり──、いきなり落とし穴の様な縦孔 に落ちる。 ぽぷり「きゃあああっ!」 ○地下牢 滑り落ちてくるぽぷり。 ぽぷり「また落っこちたぁ(泣)……」       と、オルゴールの音が。 ぽぷり「!」       向こうの方から明かりが漏れている。 ふきこ「(オフ)まあ、こんなものまで……。あら、これはカメ ラ屋さんのルーペじゃありませんか」 ニボシ「(オフ)にゃあ」 ぽぷり「ふきこさん!」 ぽぷり、壁を回り込んで向こう側へ。 ふきこ「あらあら、ぽぷりちゃん、こんなところまでよくいらっ しゃいましたわね」 ニボシ「にゃ……(ふきこの呑気さに呆れてる)」 ふきこ、くり抜かれた洞穴の中で、ガラス器や光る ものの山の中に座っていた。 ぽぷり「良かった! 無事だったのね!」 ふきこ「わたくし達を助けに来てくださったのですか」 ぽぷり「勿論よ! ふきこさんそんなのんびりしてちゃダメ!     早くここから逃げないと──」 ふきこ「でもぉ……(ぽぷりの後方を差す)」 ぽぷり「え?(と恐る恐る後ろを見る)」 いつの間にか、土猫の群れがどーっとぽぷりをとり 巻いていた。 ぽぷり「ひ〜〜っ」       前列の土猫、氷砂糖を抱えている。と、その中にア ルデルの小瓶の蓋も! ぽぷり「! あった! アルデルの小瓶の蓋! それ返して! これはあたしのよ!」 土猫、ぬっと爪の手を差し出す。 ぽぷり「なっ、なによぉ。あたしがあげるんじゃなくって、あた しが返して貰うのよ!?」 ふきこ「(苦笑)ぽぷりちゃん、この土猫さん達は、ぽぷりちゃ んの背中の物が欲しいみたいですよ」 ぽぷり「え?」 リュックから半分以下になった氷砂糖の袋を出す。 ぽぷり「ママがくれた氷砂糖……。これが欲しいの?」 ぬっと手を出す土猫。 ぽぷり「これ、宝石か何かだと思っているのかしら。違うのよ、 これは氷砂糖。お菓子みたいなものなの」 ぽぷり、一つをパクっと口に入れる。 ぽぷり「ほら、甘いのよ」 土猫、びっくりして見ている。 ぽぷり「食べてご覧なさい」 土猫、恐る恐る口に一粒入れる。 ぽぷり「……」 土 猫「……」 じわわ〜ん。涙を流す土猫。 ぽぷり「そ、そんなに感激しなくても、いいわ……」 ─────────────────────── ぽぷりの手に渡される小瓶の蓋。 ぽぷり「(ニコッ)じゃ、これで交換ね」 土猫達、全員涙を流している。 ぽぷり「そ、そんなに美味しい? 喜んでくれて、あたしも嬉し いわ。あ、もう猫のフリして泥棒なんてしちゃダメよ」 ニボシ「にゃ!」 土猫達、涙を流してるばかり。 ぽぷり「(む〜)判ってんのかしら……。ふきこさんまで盗んだ くせに」 ふきこ「土猫さん達は、ずっと旅をしているみたいですわ。もう     にこにこ銀座の物を勝手に持っていったりしませんわ」 ぽぷり「そう……。ならいいわ。さよなら、土猫さん達」 土猫達、涙を流してるばかり。 ○トンネル 土猫里からトンネルに戻ってきた二人とニボシ。 ぽぷり「あっ! そうだった!」 ふきこ「どうしました? ぽぷりちゃん」 ニボシ「にゃ?」 ぽぷり「外に戻れる様に、って、赤い糸を木に結んできたの。で もそれってもう切れてしまってるの……」 ふきこ「まあ、困りましたわね」 ぽぷり「どうやって外に出たらいいの?」 ふきこ「そうですわね……」 必死に考えるぽぷり。うーん、うーん……。 ひゅうぅぅぅ……。微かに揺れるぽぷりの髪。 ぽぷり「…………、! 風……」 ふきこ「(微笑)」 ぽぷり「風って外から吹いてくるものよね!? そうだわ! こう いう時こそ!」 アルデルの小瓶に種を入れるぽぷり。 ぽぷり「マホウヨマホウヨ、ウマレテオイデ!」 ぴかっ! ぽよん! ピンチィ「しゅっかーっ」 ぽぷり「ピンチィ! 会いたかった!」 ピンチィ「しゅ?」 ピンチィを抱きしめるぽぷり。 ぽぷり「ピンチィ、風よ! 風がどこから来るか教えて!」 ピンチィ「しゅかしゅか」 ─────────────────────── トンネルをふわふわと飛んで進むピンチィ。 後に続くぽぷりとふきこ。 ピンチィ「しゅーしゅ、しゅかしゅか、しゅーしゅ」 ふきこ「風の魔法、すっかりぽぷりちゃんと仲良しですわね」 ぽぷり「そうよ! ピンチィは友達なのよ! ねっ!」 ピンチィ「しゅ?」 ぽぷり「もうちょっと、判り会えるといいのになぁ」 ふきこ「魔法のお勉強はまだまだしなくてはいけませんわね」 ニボシ「にゃあ」 ぽぷり「うん! でも、ちょっと楽しかったな、今日の探検。     ──あっ!」 前方に眩い陽光。 ○草原。 穴から出てくるぽぷり、ふきこ、ニボシ。 楽しそうに飛び回るピンチィ。 空気を思いっきり吸うぽぷり、背後を見てびっくり。 ファーマシィーのすぐ裏だったのだ。 手をつないで戻っていく魔女たち。                     つづく