ふしぎ魔法 フ ァ ン フ ァ ン フ ァ ー マ シ ィ ー            その30(二九話)           ど き ど き ま ほ う                 第2稿                脚本/ 小 中 千 昭 Animation Play by Chiaki J. Konaka                       98/05/27 登場人物 ぽぷり〔西野かおり〕(10) ふきこさん〔ファンファンファーマシィー店主〕 ニボシ〔黒い子猫〕 のんすけ(03)〔各話必ず一回登場〕 小坂良美(20)……………………コンビニバイトの女子大生 高間俊之(22)……………………花屋バイトの大学生 緑と大地の精霊グリム 風の精霊 ピンチィ ハートの精霊ラルゥ ○にこにこ銀座商店街/コンビニ前 駅から駆けてくる学校帰りのぽぷり。 と、女子大生バイト良美、店前を掃除している。 ぽぷり「こんにちはお姉さん!」 良 美「ああ、ぽぷりちゃん。お帰りー」 ぽぷり「いつもあたしが帰ってくる時、お掃除しているのね」 良 美「(うろたえ)えっ? そ、そうかな」 ぽぷり「ええそうよ! お姉さんがバイトなのは月水金の二時か ら七時まででしょ」 良 美「よ、よく覚えてるねー(どきどき)」 ぽぷり「だって毎日歩いてるんだもの、それくらい覚えるわ。じ ゃ、またね!」 手を振りながら走っていくぽぷり。 良 美「……」 花屋の前で、水をあげているバイトの俊之に ぽぷり「その花、綺麗ね、あたし初めて見る」 俊 之「やあ、ぽぷりちゃん。×××××っていうんだ。ちょっ と早いけど、秋の花さ」 ぽぷり「ふうん……。あたしね、お花屋さんになりたかった時も あるのよ」 俊 之「へえ、どうして?」 ぽぷり「だってお花屋さんって、季節によってお店に置いてある ものが違うじゃない? 絶対に飽きないお店だと思うの」 俊 之「(苦笑)まあ、それは確かにそうだね。でも、こうやっ     てお水をあげるのは決まった時間なんだよ」 ぽぷり「決まった時間──」 と、ぽぷり、ふとコンビニの方を見る。 こちらを見ていた良美、ハッとなって店の中へ。 ぽぷり「……」 俊 之「ん、どうしたんだい?」 ぽぷり「……」 俊之、振り向くが、そこにはもう誰もいない。 ○ファーマシィー/調合室 ぽぷりの前にティーカップ。 ふきこ「秋のハーブのお茶ですわ」 ぽぷり「わぁ、これもいい匂いだわ」 ふきこ「クッキーと一緒に召し上がれ。お砂糖は入れないでね」 ぽぷり「え、お砂糖入れちゃダメなの?」 ふきこ「(微笑)ぽぷりちゃん、ハーブの香りにも随分と慣れ親 しんできましたでしょ。そのまま戴いた方が繊細な香り を楽しめますのよ」 ニボシ「にゃあ」 ぽぷり「判ったわ!」 ぽぷり、ふぅっと湯気を吹いて、ティーを啜る。 ぽぷり「──(むにゅ〜〜ん)……。ふ、不思議な味……」 ふきこ「ほほほ。直にそれも美味しいって思える様になりますわ」 ぽぷり「もっと大人にならなきゃ判らないと思うわ……。あっ! そうだった! ね、ふきこさんあのねあのね、コンビニ のお姉さん、花屋のお兄さんに恋をしてるってあたし思 うの!」 ふきこ「はい?」 ─────────────────────── ぽぷりのカップとクッキーの皿、空になっている。 ぽぷり「──そうじゃないかな、って思うの。だってコンビニの お姉さん、バイトの日は必ずなのよ」 ふきこ「──(微笑)恋ですか……。素敵ですわね」 ニボシ「にゃ?」 ぽぷり「素敵よとっても! でもぉ……、だとしたらどうしてい つも黙って見ているだけなのかしら。好きだったら好き って本人に言えばいいのに」 ふきこ「ぽぷりちゃんならそうしますかしら」 ぽぷり「絶対するわ! そうよ、コンビニのお姉さんだってそう した方がいいに決まってるわ!」 ぽぷり、椅子から飛び降りる。 ニボシ「にゃっ?」 ふきこ「どうするんですの? ぽぷりちゃん」 ぽぷり「あたしお姉さんに言ってくる!」 駆けだしていくぽぷり。 不安そうに見送るふきこ。 ○コンビニ・カウンター 良 美「──(ぎえーっ)あわわわわっ」 良美、慌ててぽぷりの口を抑える。 ぽぷり「(むぎゅう……)」 店内の客、びっくりして見ている。 良 美「あ、アハハハハ。だ大丈夫だよぽぷりちゃん、口の汚れ はとれたみたい」 言いながら口から手を離す良美。 ぽぷり「(小声)酷いわ、いきなり口を抑えるなんて」 良 美「(むっ)変な事急に言いだすから」 ぽぷり「変な事なんかじゃないわ。もしホントにお姉さんが花屋 さんの──」 がばっ。再び身を乗り出してぽぷりの口を抑える。 良 美「(泣)やめてよ〜」 ぽぷり「(むぎゅ〜)」 ○コンビニ前〜にこにこ銀座商店街 出てくるぽぷり、プリプリ。 ぽぷり「好きじゃないなんて、嘘だと思う。大体何で、好きだっ て気持ちをあんなに隠すのかしら。あたし全然納得出来 ないわ!」 と、花屋の店頭でにこやかに接客している俊之の姿。 ぽぷり「──お似合いだと思うんだけどなぁ……」 ぽぷり、振り向く。 コンビニのガラスドア越しに、カウンターでため息 をついている良美の姿。 ぽぷり「(じっと見つめ)──ようっし(小瓶を握る)」 ○花屋店頭 店の奥で花束を作っている俊之。 俊 之「ん……?」 束ねたばかりの切り花、ひくっ、と動く。 俊 之「え……」 ぐにゅにゅにゅ〜〜ん。どんどん成長し、太くなり 長く長く延びていく花。 俊 之「うわっっ」 蔓が店の中をのたくりまくる。 ○コンビニ店内 ぼんやりカウンターに頬杖をついていた良美──、 前髪がふわっと風に揺らされる。 良 美「──風……?」 ごおおっ! 突如つむじ風が店内に巻き起こる。 良 美「えええっ?」 小さな竜巻になった風、棚のお菓子を一箱持ち上げ 始める。 良 美「(脅え)なっ、なによぉ、これぇ……」 ふわふわとお菓子の箱、良美の眼前を浮遊し──、 自動ドアが開いて、外に出ていく。 良 美「ちょっ、待ちなさいよっ!」 慌てて後を追う良美。 ○にこにこ銀座商店街/夕刻 ピンチィの声「しゅー」 ふわふわと飛ぶ箱。それを追ってくる良美。 良 美「これ、いったいどうなっちゃってんのぉ?」 往来の真ん中に来る箱。と──、そこには 俊 之「あれ?」 一本だけ店先から延びてきた花を追って、俊之も出 てきたところ。二人、ばったり。 良 美「──あ……」 俊 之「変な事が起こったんだよ。店の花が急に──」 と、花、シュン、と一瞬の内に普通の切り花となり 俊之の手の中に落ちる。 俊 之「あれ……」 グリム「(ふっと現れ)かぷち……」 ─────────────────────── やや離れた店の看板に隠れて見ていたぽぷり、くす っと笑い ぽぷり「(小声)グリム、ピンチィ、ありがとう」 ─────────────────────── 花を一輪持って呆然としている俊之。 俊 之「今、確かに……」 と、浮かんでいたお菓子の箱、落ちる。 ピンチィ「(ふっと現れ)しゅかしゅか」 良 美「あああ」 慌ててそれを受け止める良美。 二人の頭上でピンチィとグリム、浮かんでいる。 俊 之「(苦笑)おかしな事もあるもんだね」 良 美「──そうね(やや冷たく)」      ─────────────────────── ぽぷり、身を乗り出す。 ぽぷり「せっかく二人っきりにしてあげたのに、どうしてちゃん と話さないのっ!? しょうがないわね! ようし」   アルデルの小瓶に魔法の種を入れ── ぽぷり「マホウヨマホウヨ、ウマレテオイデ!」   ぴかっ! ─────────────────────── 俊 之「──」 良 美「──」 なんだか気まずい二人。 と、ぽぷりがいきなり下からワッ!と飛び出す。 俊 之「わっ」 良 美「ぽっ、ぽぷりちゃん! やめてよ急に、脅かさないで」 ぽぷり「ふふっ。ごめんなさい。だって、黙って立ってるなんて 変だなぁって思ったから」 良 美「(憮然)別に変じゃないけど?」 俊 之「変に見えたかい(苦笑)」 ぽぷり「(呟く)じれったいなぁ。ラルゥ?」 ふわっ。ぽぷりの頭の上にラルゥ。両手をひゅるる と二人の腕に延ばして── 巻きつく。 ぽぷりを中に、対峙する二人がラルゥで結ばれた。 ぽぷり「気持ちが、伝わればいいな……」 俊之+良美「え?(とぽぷりを見る)」 ニコニコしてるラルゥ──、光が腕を伝わって── ぽぷり「気持ち、伝わるのよ、絶対」 ハッとなる俊之。 続く良美。 二人の顔を交互に見るぽぷり。ラルゥの腕、解けた。 ぽぷり「──(わくわく)」 俊之、急に顔を赤くしてうろたえ始める。 俊 之「な、なんだろう……。急に胸が苦しくなってきたぞ」 良 美「──あたしも……、なんでこんなに──、病気かしら」 ぽぷり「え」 俊 之「風邪をひいたのかもしれないね。うう……。今日はお互 い早く帰って寝た方がいい」 良 美「そ、その方がいいみたい。じゃ」 二人、ぽぷりから離れて行ってしまう。 ぽぷり「(愕然)──そんなぁ……」 ○ファーマシィー/調合室 大笑いしているふきこ。 ニボシ「(呆れ)にゃあ」 ぽぷり「(憮然)笑いごとじゃないわ、ふきこさん」 ふきこ「まあまあ……。きっと二人とも急にバッタリと出会って、 とてもドキドキしていたんですわね。それに加えて相手 のドキドキも伝わってしまったから、ものすごいドキド キになってしまったんですわ」 ニボシ「にゃ」 ぽぷり「そうだったのね。なぁんだつまんない。折角お姉さんの 気持ちが伝わると思ったのに……」 ふきこ「(真顔になって)ぽぷりちゃん」 ぽぷり「なあに?」 ふきこ「──(微笑)人を恋する心は大切で、とても大きなもの なのですわ。ハートの精霊が短い間に伝えきれるものじ ゃありませんのよ」 ぽぷり「──そうなの……。(俯き)あたし、恋した事がないか ら判らないわ、そんなの……」 ふきこ「それに、ハートの精霊だけでは、恋は伝わりません」 ぽぷり「どうして? 気持ちが伝わればいいんじゃないの?」 ふきこ「人を恋した時には、気持ちを言葉にしなくてはいけませ んのよ」 ぽぷり「言葉?」 ふきこ「ええ。言葉は人の心を伝えるのに、とても大事なものな のですわ。言葉として口にする事で、その気持ちが真実 になる──」 ぽぷり「(当惑)──判んない……。だってあたし、恋をした事 がないんだもの……」 ふきこ「(微笑)もう、すぐ先の事ですわ。ぽぷりちゃんにも判 る日が来ます」 ぽぷり「! わたしが恋をする日が来るのよね! そうよ! う わーっ! わたし、どんな人に恋をするのかしら!? 恋 って苦しいのかしら!? でもでも!やっぱり早くしてみ たい!」 笑っているふきこ。 ○ファーマシィー前/夕暮れ ファーマシィーのドアを開け出てくるぽぷり。 ぽぷり「(奥に)じゃ、ふきこさんまた明日ねーっ」 家に向かって走ろうとしたぽぷり、帰宅途中の良美 とばったり。 ぽぷり「あ……、お姉さん……」 良 美「(上機嫌/両手は後ろに)あら、ぽぷりちゃん」 ぽぷり「もう、ドキドキは直ったの……?」 良 美「うん! 全然ヘーキ。──(呟き)お大事にね、だって。 きゃーっ!(一人で盛り上がり)」 ぽぷり「? ? ?」 良美、歩いていく。 その後ろ手には──、さっきの切り花が一本、綺麗 に包まれていた。 ぽぷり「──!──(ニコッ)」 良美と反対側に駆けだすぽぷり。 ぽぷり「早くあたしも恋がしたいなっ!」                     つづく