ふしぎ魔法 フ ァ ン フ ァ ン フ ァ ー マ シ ィ ー            その32(製作ナンバー31話)           う し ろ の し ょ う め ん                 第2稿                脚本/ 小 中 千 昭 Animation Play by Chiaki J. Konaka                       98/06/09 登場人物 ぽぷり〔西野かおり〕(10) ふきこさん〔ファンファンファーマシィー店主〕 ニボシ〔黒い子猫〕 のんすけ(03)〔各話必ず一回登場〕 なつみ なつみの祖母 八百ひち 高橋茶舗店主 たばこ屋 チュンセ……………………コロボックルの様な精霊・兄 ポウセ………………………     同      妹 ○にこにこ銀座商店街/八百ひち前/午後 買い物籠を下げたぽぷり── ぽぷり「♪にっこにっこ銀座でおっかいものー」 八百ひち前に来ると──、段ボールから野菜を出し ながら鼻唄で 八百ひち「♪かーごめかーごめ、かーごのなーかのとーりーは」 ぽぷり「こんにちは!八百ひちのおじさん」 八百ひち「おうぽぷりちゃん。今日は何持ってくかい?」 ぽぷり「う〜ん、そうねぇ……(悩む)」 八百ひち「グリーンアスパラなんてどうだい?」 ぽぷり「! あたしそれにマヨネーズつけるの大好き!」 八百ひち「(ニンマリ)まいだりー」 ○高橋茶舗前          歩いてくるぽぷり。と、ハタキがけ中の茶屋主人も 茶屋店主「♪かーごめかーごめ、と……」 ぽぷり「こんにちは。あれ? おじいさんもかごめかごめを歌っ ってるのね」 茶屋店主「おや、そうだったかね?」 ぽぷり「あたしも幼稚園の時、よく歌ったわ」 茶屋店主「(微笑)それはちょっと前の事だね」 ぽぷり「(やや憮然)そんな事ないわ。もうずーっと昔の事よ」       ○たばこ屋前 たばこ屋「(キンタの餌をあげながら)♪かーごめかーごめ」 ぽぷり「! たっ、たばこ屋のおじさんまでかごめかごめだわ! これって変よ! 絶対変!」 たばこ屋「(気押され)ど、どうしたんだねぽぷりちゃん」 ぽぷり「どうしてかごめかごめをにこにこ銀座中の人が歌ってい るの?」 たばこ屋「はて、そうなのかい?」 ぽぷり「おじさんはどうして歌っていたの?」 たばこ屋「どうしてって、歌くらい歌う時もあるさ」 ぽぷり「でも、どうしてかごめかごめなの?」 たばこ屋「さあて、どっかで最近聞いたのかな」 ぽぷり「──ふうん……(思案)」 ○ファーマシィー 飛び込んでいくぽぷり。 ぽぷり「ふきこさーん、こんにちはーっ。あのねあのねーっ」 ○同/店内 ぽぷり「あらっ!」 なつみが祖母に手を引かれて来ていたところ。 なつみ「ぽぷりちゃんだー」 なつみの祖母「こんにちは」 ぽぷり「こんにちは、なつみちゃん、なつみちゃんのおばあさん」 ふきこ「どうしたんですの?ぽぷりちゃん」 ニボシ「にゃあ?」 ぽぷり「え? あっ、そうだった──あのね──(ハッ) ねえなつみちゃん。最近幼稚園で、かごめかごめのお遊 ぎってやってる?」 なつみ「♪かーごめかーごめ」 なつみの祖母「最近、よく歌うね、なつみは」 なつみ「うん(顔赤らめ)。なつみ、好きなの」 ぽぷり「なあんだ、そうだったのね」 ふきこ「?」 ○同/調合室 ニンニクを干す為に紐に通しているふきこ。 ふきこ「──まあ、そうだったんですの。商店街のみなさんが同 じ歌を歌っていたら、それはちょっと不思議ですものね」 ニボシ「にゃあ」 ぽぷり「なつみちゃんが原因だったのよ。でも凄いわ。だってみ んなにも歌わせちゃうなんて!」 ふきこ「なつみちゃんの歌も可愛いかったでしょうけれど、その 歌にも魔法があるのかもしれませんよ」 ぽぷり「えっ? 歌に魔法?」 ふきこ「ええ。長い長い時間ずっと歌われてきたんですもの、そ れだけその歌に魅力があるという事ですわ」 ぽぷり「(ニッコリ)そうか! そうよね!」 ○公園に下る階段 階段を下りながらぽぷり、首を振り振り ぽぷり「♪かーごめかーごめ かーごのなーかのとーりーは」   ぽぷりの歌に合わせて小さな二人の声が重なる。 ぽぷり「♪いーつーいーつでーあーう よあけのばんに つーる とかーめがすーべった(気づいたぽぷり、怪訝な顔にに なりながら歌い続け)うしろの正面だーあ──」 ぽぷり、振り向き── ぽぷり「れっ」 誰もいない──。 ぽぷり「──」 ぽぷり、また階段を降り始めながら── ぽぷり「うしろの正面……」 また一緒に歌う者がいる。 ぽぷり「(ぞわぞわ)だーれ──(振り向き)だっ」 いない。 ぽぷり「だ、れ……? 誰が一緒に歌っているの?」 しーん。 ぽぷり「歌の、魔法……?(ハッ)そうだっ」 ぽぷり、腰のポーチからルーペを出して── ぽぷり「ミエナイモノミエナイモノミセテオクレ!」 覗いて見回すぽぷり。 しかし何もおかしな者はいない。 ぽぷり「──タビスのルーペでも見えないなんて──、う、うわ あああああ」 ぽぷり、階段を駆け降りていく。 ○ぽぷりのマンション/夜 ○ぽぷりの部屋 パジャマ姿で窓からにこにこ銀座を見ているぽぷり。 ぽぷり「──タビスのルーペで見えない、っていう事は、魔法じ ゃないのかしら……?」 思案気なぽぷり──。 ぽぷり「(ぽつりと)♪かーごめかーごめ かーごのなーかのと ーりーは いーついーつであう(小さな二人の声が重な りだす)夜明けのばんに──」 ぽぷりは歌うのをやめるが── 二人の歌声「つーるとかーめがすーべった……」 ぽぷり、微動だに出来ない。歌声はそこで止まって いる──。 ぽぷり「うしろの──、しょうめん──」 ぽぷり、怖さを抑えて──一気に振り向く。 ぽぷり「誰っ!? 誰なのっ!?」 薄暗い室内に、誰かが居るという気配は無い。 ぽぷり、凄く怖い。怖いが──、必死に壁に走り、 電気のスイッチを入れる。 ぽぷり「──」 明るくなった室内を見回す。しかしやはり、誰の姿 も無い。 ぽぷり「ま──」 ぽぷり、部屋を飛び出していく ぽぷり「(オフ)ママーッ!」 ○ぽぷりのマンション/翌朝 ぽぷり「(オフ)いってきまーす」 ○公園 歩くぽぷり。 ぽぷり「──ママと一緒に寝たなんて、恥ずかしくってふきこさ     んには言えないわ。なつみちゃんみたいな小さい子じゃ ないんだもの──」 ぽぷり、商店街へ登る階段前に立つ。 木々が鬱蒼の繁る石段──。 ○階段 登っていくぽぷり── ぽぷり「小さい子──、タビスのルーペで見えなかったのは── ひょっとしてとっても小さかったからじゃないかしら」 ぽぷり、立ち止まる。 風が木々の葉をそよがせる。 ぽぷり「(ぽつりと)♪かーごめかーごめ かーごのなーかのと ーりーは いーついーつであう(小さな二人の声が重な りだす)夜明けのばんに つーるとかーめがであった うしろのしょうめん だーあれ?」 ぽぷり、振り向く。 何もない──、否──、 ぽぷり、目を下に──階段脇の草の茂みに見入る。 ぽぷり「──」 近づいて草を手で分けると── ぽぷり「あ……」 小さな小さな祠があった。風雪で角がすっかり丸く なってしまっているが、小さな童のレリーフが刻ま れている。 ぽぷり「──(優しく)あなたたちが歌っていたの?」 レリーフは答えない。 ぽぷり「どうして歌うの?」 ゴオッ! 風が強く吹いた。 ぽぷり「──」 ぽぷりの髪が風に揺れている──。 ○ファーマシィー/午後 ふきこ「(オフ)──そうですわねぇ……」 ○同/店内 ぽぷり「あたし学校でもずーっと気になって気になって仕方なか ったの」 ふきこ「──その祠は、とっても古いものでしたかしら?」 ぽぷり「とーっても」 ふきこ「この町の昔の事を知っている人に聞いてみるといいと思 いますわ」 ぽぷり「──この町の昔の事を知っている──(あっ)」 ○電気店 ぽぷり「こんにちはーっ」 奥から飛び出してくるなつみ。 なつみ「ぽぷりちゃんだーっ」 ぽぷり「こんにちは、なつみちゃん。あのね、おばあさんにお話 しを聞きたいの」 なつみ「おばあちゃんに? 呼んでくるー」 ○商店街〜階段 なつみ、その祖母と一緒に歩くぽぷり。 なつみの祖母「この商店街が出来るずっと昔、ここは旅人が通る 道だったんだそうよ」 ぽぷり「ふうん……、じゃあこの道ってずっと昔からあったのね」 ○階段 草を分けて祠を見るなつみの祖母。 なつみ「ちっちゃーい」 なつみの祖母「すっかり忘れていたよ、ここにこんな祠があった なんて」 ぽぷり「これも昔からあったのね」 なつみの祖母「(微笑)──寂しかったろうね、すっかり草に覆 われちまって」 ぽぷり「(ハッ)寂しい……」 ─────────────────────── 周りの草を刈り取っているぽぷりとなつみの祖母。 なつみが階段下から子ども用のバケツを持って上が ってくる。 なつみ「持ってきたー」 なつみの持ってきたバケツには水が酌まれている。 なつみの祖母「ありがとうよ、なつみ」 バケツの水をそっと祠にかけて、埃を払う祖母。 ぽぷり「これで、ここを通る人はみんな気がついてくれるわね」 三人、祠を暫し見入る。 ─────────────────────── 三 人「♪かーごめかーごめ かーごのなーかのとーりーは」 三人、手を繋いで階段を登っていく。 三 人「いーついーつでーあーう よーあけのばーんに つーる とかーめがすーべった うしろの正面 だーあれ」 「だーあれ」と振り向くぽぷり。 ぽぷり「!」 その下は階段では無く、土の細い坂道。 周囲の木々は無く、坂の下は公園では無く森に連な っている──。そこは──、昔の峠道。 ぽぷり「──」 未だ古びていない祠の脇に、身長十五センチ程の、 二人のコロボックルの様な兄妹が手を繋いでぽぷり を見ていた。 ぽぷり「──あなたたちだったの……」 兄と妹、ぽぷりに手を振った。 ぽぷり、手を振ろうとした時── ゴオッ。風が吹く。 一瞬目を閉じ、また開けた時── ぽぷり「──」 なつみ「ぽぷりちゃんどうしたの?」 なつみの祖母「?」 もう、そこはいつもの公園に下る階段だった。 ぽぷり「──(ニコッ)昔って素敵ね」 なつみの祖母「(怪訝〜苦笑)ぽぷりちゃん、不思議な事を言い だすのね」 ぽぷり「さ、なつみちゃん、また歌おう!」 なつみ「うん!」 歌いながら、商店街へ登っていく三人──。                    つづく