ふしぎ魔法 フ ァ ン フ ァ ン フ ァ ー マ シ ィ ー            その34(製作ナンバー33話)  お そ ば を た べ た く な る ま ほ う                 第2稿                脚本/ 小 中 千 昭 Animation Play by Chiaki J. Konaka                       98/06/16 登場人物 ぽぷり〔西野かおり〕(10) ふきこさん〔ファンファンファーマシィー店主〕 ニボシ〔黒い子猫〕 のんすけ(03)〔各話必ず一回登場〕 ぽぷりのママ さか本蕎麦店主 木村書房店主 花屋バイト 煙草屋孫息子 ペットショップ店員 町内アナウンス嬢 光の精霊 リック ○にこにこ銀座商店街/お昼どき/駅前 陸橋を渡ってぽぷり、降り立つ。 アナ音声「今日もニコニコ、いつもニコニコ、ニコニコ銀座でお 買い物──」 ぽぷり、真似をして ぽぷり+アナ音声「モンブラン、エクレアのゆりね、ケーキのゆ りね、御進物にもどうぞご利用ください」 ぽぷり、歩きながらクスクスッと笑い ぽぷり「もうぜーんぶ覚えちゃったわ」 アナ音声「たまには違う事だって、言うのよ(節回し良く)」 えっ!? と見回すぽぷり。 アナ音声「スーパーサンエースは毎日が特売日──」 ぽぷり、駅前のビルの二階の窓を見て ぽぷり「あーっ!」 アナウンス嬢がニコニコぽぷりを見ていた。 ぽぷりも手を振って ぽぷり「頑張ってねーっ! 今日はあたしお腹空いてるの。今度     遊びに行くねーっ!」       ─────────────────────── アナ音声「──へいいらっしゃい、今日は何を握りましょ──」 ランドセルを背負って駆けていくぽぷり、アナウン スの節を真似して── ぽぷり「おーなかすいた、すいたーすいたー」 と、蕎麦屋の戸が開いて、若い衆三人組が出てくる。 たばこ屋孫「ごっそーさまー」 ぽぷり「こんにちはー」 花屋バイト「やあぽぷりちゃん」 ぽぷり「ご飯食べていたのね。あたしも早く帰ってママとお昼食 べるの。(店を見て)今日はお蕎麦だったのね」 花屋バイト「いや、僕はカレーライス」 たばこ屋「俺は肉野菜炒めライス大盛り」 ペットショップ店員「僕はしょうが焼き定食」 ぽぷり「? おそばやさんなのに?」 店の方を見るぽぷり。やや暗い感じの古い店──。 ○ぽぷりの部屋 ぽぷり「えーっ!?(ランドセルを置きがっかり)」 外着のママが来てすまなそうに ぽぷりママ「ごめんねー。ママも今帰ったところなの。これから すぐ作るから」 ぽぷり「うん……(はっ)ねっ、そしたら外でご飯食べない?」 ぽぷりママ「レストラン?」 ○さか本蕎麦店内 扉を開けて入ってくるぽぷりとママ。 マ マ「ぽぷり、お蕎麦って好きだったっけ……?」 ガラン、とした暗い室内。古びた作りの店。 ぽぷり「あれ? もうお店終わっちゃったのかしら……」 ゴリゴリという音が奥から聞こえてくる。 ぽぷり「何の音かしら……」 ○厨房 蕎麦打ち用の台が大きい。奥でこちらに背を向け屈 んでいる初老の男。何かをゴリゴリと回している。 ぽぷり「こーんーにーちーはー」 作業をやめ振り向く店主。気弱そうな風貌。 店 主「あ……?」 ぽぷり「あたしたち、ご飯を食べに来たの。でも、もうお店お終 いなの?」 店 主「あはは、いやいや。すまないね。今行くから」 しかしぽぷり、脇に来て石臼に見入る。 ぽぷり「これ、何をしているの?」 店 主「蕎麦粉を挽いていたんだよ」 ぽぷり「え? お蕎麦の元ってこれなの?」       石臼脇に積まれた玄蕎麦を手にとるぽぷり。 店 主「玄蕎麦というんだ。秋の新蕎麦だよ」 ○店内 ぽぷりとママのテーブルに茶を運んでくる店主。 店 主「いらっしゃい。何します?」 和洋中華入り乱れた壁のメニューを見る二人。 マ マ「色々あるのね。わー、コロッケ定食なんていいなー」 ぽぷり「ママっ。ここはお蕎麦やさんなのよ!?」 店 主「(気弱に笑う)いやいや、お好きなものをどうぞ」 ぽぷり「さっき挽いていたのって新蕎麦っていうのよね? あれ って美味しいんでしょ!?」 店 主「──(微笑)じゃ、食べてみるかい?」 ──────────────────────  蒸籠が二人のテーブルの上に。 ぽぷり「う〜」 あまり食べつけないのか、箸で蕎麦を不器用に掴み、 つゆにつけようとすると── 店 主「あ、最初の一口、つゆをつけないで食べてご覧なさい」 ぽぷり「え? だってそれじゃ味が無いわ」 ママは判っているのかニコニコしている。 マ マ「試してみたら? ぽぷり」 ぽぷり、蕎麦を口に──むにゅ、むにゅむにゅ……。 ぽぷり「──! 味が、ある……。それになんか、鼻にとっても いい匂いが広がるの!」 マ マ「(食べて)挽きたて、打ちたて、茹でたてだもの」       ぽぷり、遠慮しながらおちょぼ口でちゅるちゅるっ       と食べる。 店 主「(苦笑)お嬢ちゃん、蕎麦はズズッて音たてて食べても     いいんです」 ぽぷり「そ、そうなの?」 店 主「その方が美味しく食べられるんだよ」       ママ、ズルズルっと食べる。       ぽぷりも真似してズルズルズルッ! ぽぷり「こんなに美味しいお蕎麦屋さんなのに、どうしてみんな 他のものを頼むのかしら」 店 主「(自信無さ気に)蕎麦だけじゃ飽きてしまうんだ……」 ぽぷり「でも……」 ○ファーマシィー外観 ふきこ「あそこのお蕎麦やさん、私も時々いただきますのよ」 ニボシ「にゃあ」 ○同/店内 ぽぷり「でもみんなカレーライスとか違うものを食べてるの。お かしいわ」 ふきこ「若い人にはお蕎麦じゃ物足りないのかもしれませんわね」 ニボシ「にゃ」 ぽぷり「でも、洋食だったら洋食屋さん、中華だったらラーメン 屋さんで食べればいいじゃない? あのねふきこさん知 ってる? お蕎麦って、ズルズルズルッ(美味しそうに) って音を食べてもお行儀悪くないのよ」 ふきこ「ズルズルズルっ……。(急にソワソワ)あのぉぽぷりち ゃん、ちょっとお店を見てて下さいませんこと?」 ぽぷり「え?」 ふきこ「ちょっとお蕎麦を食べてきますわ」 ぽぷり「え、え、え、ちょっとふきこさん!」 イソイソと行ってしまうふきこ。続くニボシ。 ぽぷり「(クスッ)おかしなふきこさん。急に食べたくなるなん て──」 ○にこにこ銀座商店街 夕方。町内アナウンスが流れている。 ○さか本蕎麦店 ガラッ。ぽぷり、覗き込む。 薄暗い店内のカウンターでは、きむずか書房の老人 が蕎麦がきを肴に飲んでいた。 ぽぷり「あっ、古本屋のおじいさん」 古本屋「(ギロッ)……」 蕎麦屋「やあ、昼間の」 ぽぷり、入ってきて ぽぷり「おじいさんもお蕎麦を食べてないのね」 古本屋「いーや、これは蕎麦だ」 ぽぷり「えーっ? こんなお饅頭みたいなのが?」 蕎麦屋「蕎麦がきというんだ。蕎麦の粉を練って作るんだよ」 古本屋、箸で蕎麦がきをとってぽぷりの眼前に。 ぽぷり「!──(ぱくっ)──(むにむに)──ほぉんとだ……」 古本屋「(ボソ)秋の新蕎麦だから香りもいいだろ」 ぽぷり「ええ! ねえお蕎麦屋さん。ホントは他のみんなにもお 蕎麦を食べて貰いたいって思ってるんでしょう?」 蕎麦屋「そうです、ねぇ……」 ぽぷり「どうしたらみんなが、お蕎麦が食べたいって思ってくれ るかなぁ」 カウンターに蒸籠が来る。 古本屋、ズズーッと蕎麦をすすり── 古本屋「若いもんに蕎麦の旨さは判らんよ」 ぽぷり「そんな事絶対ないわ!」 ズズズズッ。 古本屋「蕎麦の香りは実に微妙なもんだ。なあ」 蕎麦屋「そうですねぇ……」 古本屋がズズッと啜るのを見ていたぽぷり── ぽぷり「(呟く)ズズズ……(ハッ)そうよ! そうだわ!」 二人、ぽぷりを見る。 ぽぷり「あたし、みんながお蕎麦が食べたくなるマホウを思いつ いたのよ(ウィンク)。明日のお昼、いっぱいお蕎麦の 粉を挽いておいてねっ」 顔を見合わせる蕎麦屋と古本屋。 ○フラワーモモ/翌昼 植木鉢を並べている花屋バイト。外は雨。 と、煙草屋孫、ペットショップ店員が来て 煙草屋孫「やあ、飯食い行こうぜ」 花 屋「そうだね。今日は何食べようか」 と、突如拡声器からズズッ、ズズズッという音。 ペットショップ店員「なっ、なんだ?」 煙草屋孫「──何か食ってる音か?」 花 屋「──ズルズルっ、て……」 三人、むーん……。 ○雨のにこにこ銀座商店街 拡声器からズズッ、ズズズズッ。 道行く人、ギョッとなって立ち止まる。 ○駅前ビル/放送室 マイクの前で蕎麦をズズッと食べたところのぽぷり。 マイクを向けていたアナウンス嬢、くすっ。 町内アナウンサー「見事な食べっぷりね。あたしも食べたくなっ てきちゃった」 ぽぷり「でも、こんなのを放送しちゃって怒られない?」 町内アナウンサー「いいわよ。毎日同じアナウンスばっかりじゃ つまらないもの。お店が繁盛するのが一番だしね」 ぽぷり「(ニコッ)ありがとう!」 ○さか本蕎麦店前 傘を差し駆けてくるぽぷり。店前には凄い行列。 ぽぷり「わーっ! こぉんなにお客さん!」 花 屋「やあぽぷりちゃん」 ぽぷり「今日はとってもお蕎麦を食べたい気分でしょ」 煙草屋孫「そうなんだ。なんか急に食いたくって食いたくって」 ペットショップ店員「でも、未だやってないんだよ」 ぽぷり「えっ?」 扉は閉まり『準備中』の札。 ○同/厨房 裏口の窓から覗き込むぽぷり。 石臼の前でうなだれている店主。 ぽぷり「どうしちゃったの!? お客さんいっぱい並んでいるわ!」 蕎麦屋「──ダメだよ。こんな湿っ気た日に蕎麦を挽いたって、 あの風味は出ないんだ……。折角一番の新蕎麦を食べて 貰おうと思っていたのに……」 ぽぷり「みんな楽しみにして来ているのに……。ようっし」 ○厨房外の狭い路地 魔法の種をアルデルの小瓶に入れ── ぽぷり「お願いリック、出てきて。マホウヨマホウヨ、ウマレテ オイデ!」 ぴかっ! ぽよよん。 リック「にっかにっかにっっっかーっ」 ○厨房 薄暗い厨房がほの明るくなる。 蕎麦屋「(顔を上げ)おや……? なんか温かい感じが……。     (手に玄蕎麦をとって揉む)──いい感じだ──、これ     ならいいぞ!」 ゴリゴリゴリ! 石臼を挽き始める蕎麦屋。 天井ではリックがふわふわ。 ぽぷり、脇に来て見入る。 ぽぷり「みんな待ってるのよ」 蕎麦屋「──(微笑)あんたは不思議な子だね。あんたが来ると ウチの店が明るくなる」 ぽぷり「(ニコッ)お店は明るい方がいいわよね!」 と、店側から若い衆が覗き込む。 煙草屋孫「あのー、未だっすかねー。蕎麦食いたいんだけどー」 ぽぷり「もうちょっとよ!」 ────────────────────── 熟達の手つきで蕎麦を打つ店主。延ばした生地に粉 を打ち、丸めては延ばす。 畳んだ生地を、蕎麦切り包丁で正確に切っていく。 若い衆らが厨房に入って見学していた。 ペットショップ店員「なんか簡単そうだね、蕎麦を打つのって」 と、きむずか書房店主、ギロッと睨み 古本屋店主「蕎麦粉だけの蕎麦は打つのが難しいんだぞ」 花屋バイト「(アハハ)べ、勉強になります」 ○店内 ズズズズズーッ! 店内に響く蕎麦をすする音。 天井ではリックがふわふわ。 ぽぷり「にこにこ銀座のお蕎麦屋さんは、最高に美味しいお蕎麦 屋さんですよーっ。秋の新蕎麦でーす!」 と、ふきこが列に並んでいるのに気づく。 ぽぷり「あっ、ふきこさん」 ふきこ「(天井のリックを見て)とってもお店が明るくなりまし たですわね(ウインク)」 ニボシ「にゃ!」 ぽぷり「えへへ……」 と、アナウンス嬢がやってきた。 ぽぷり「あっ、お姉さんだ! いらっしゃいませーっ!」 店はどんどん賑わって、店主は大忙し。                     つづく