ふしぎ魔法 フ ァ ン フ ァ ン フ ァ ー マ シ ィ ー            その35(製作ナンバー34話)     に こ に こ ぎ ん ざ が あ ぶ な い                 第2稿                脚本/ 小 中 千 昭 Animation Play by Chiaki J. Konaka                       98/06/24 登場人物 ぽぷり〔西野かおり〕(10) ふきこさん〔ファンファンファーマシィー店主〕 ニボシ〔黒い子猫〕 のんすけ(03)〔各話必ず一回登場〕 ヒトシ……………………ぽぷりと同じ程の少年 ウィルバー………………透明電気怪獣 電気の精霊 ガル ○ぽぷりの部屋/夜 窓を開け、夜空を見ているぽぷり。 ぽぷり「秋は明るい星が少ないのよね。でもあたし、秋の星座も 好き。あの四角形がペガサス。あれさえ見つかれば、他 の星座も見えてくるわ。すぐ北東がアンドロメダで……」 と、アンドロメダ座の中に、眩く輝く星。 ぽぷり「れ……、あんなに明るい星なんてあったかしら?」 輝く星、どんどんどんどん大きくなって── ぽぷり「う、うわああああ!」 にこにこ銀座の方に落ちてくる巨大彗星!? 思わず目を瞑るぽぷり。 ズズーン! 鈍い響きが轟く。 ぽぷり「ひいっ……」 しかし──静寂。 そっと目を開け、窓外を見回すぽぷり。 何も変わっていない。 ぽぷり「──何だったのかしら……」 ○にこにこ銀座商店街/翌朝 いつもの風景。ぽぷり、見回しながら── ぽぷり「昨日のって、一体何だったの? 大っきな隕石でも落ち たのかと思ったけど──」 と、道の真ん中で電柱を見上げている少年がいた。 ぽぷり「? 誰かしら。あんな子、この商店街にいたっけ」 ぽぷり、隣に来て一緒に電線を見上げる。 ぽぷり「烏さんが来るのを待ってるの?」 ギョッとぽぷりを見る少年。手には金属製の鞄。 少 年「か、カラス?」 ぽぷり「だって今は何もとまってないじゃない?(少年に向き) あたしぽぷり。ホントは西野かおりっていうんだけど、 ぽぷりって呼んで。そう呼ばれるのが好きなの」 少 年「(ぎこちなく)ぼ、僕は──」 ぽぷり「(ニコニコして返事を待っている)」 少 年「──」 少年、ぷいっと歩き始めてしまう。 ぽぷり「(ぷーっ)ちょっと! あたしが自己紹介をしたのに、 どうして名前を教えてくれないの?」 ぽぷり、後を追う。少年は電線を見上げつつ歩く。 少 年「僕は──(周りをそっと見回し)──ヒトシ」 ぽぷり「ヒトシ君ていうの。駅向こうの学校行ってる? 会った 事ないわよね?」 ヒトシ、黙って電線を見上げつつ歩く。 ぽぷり「ねえ聞いてる? どうして電線ばっかり見ているの?」 ヒトシ「あそこには電気が流れている」 ぽぷり「当たり前だわ。だって電線だもの」 ヒトシ「──だから危ないんだ……」 ぽぷり「え……?」 ○橋 少年、早足で歩いてくる。ぽぷり、その後に続く。 ぽぷり「何で電気が流れると危ないの? あなたって全然変だわ」 ヒトシ「あっ!」 ぽぷり「なっ、何っ?」 ヒトシ、川向こうの山に連なる高圧線の鉄塔を見上 げている。 ぽぷり「どうしたの?」 ヒトシ「──そうか……、電気は向こうから来るんだな……」 ぽぷり「あの山向こうには変電所があるの。この川の上にはダム     の発電所があるのよ。来年の遠足で行くのあたしたち」 ヒトシ、山から商店街の方に不安気に目を移す。 ヒトシ「──やっぱりここに来てたんだ……」 ぽぷり「えっ? 誰が来てるの?」 とぽぷり、辺りを見回す。 ぽぷり「誰もいないじゃ──あッ」 ヒトシの姿、そこから消えていた。 ぽぷり「なっ、何なのよあの子は!(むかーっ)(山の方に向か って)友達になんてなってあげないからねーっ!」 ○ファーマシィー/調合室 棚に薬瓶を並べ直しているふきこ。 両手に瓶を一杯持って手伝っているぽぷり。 ぽぷり「(ぷりぷり)せっかく男の子の友達がにこにこ銀座で出 来るかなって思ったのに、あたしの事なんて全然興味無 いっていう態度なのよ!」 ふきこ「(苦笑)男の子は、なかなか女の子に素直にはなれない ものですわ」 ニボシ「にゃあ」 ぽぷり「そっ。だから魔女にだってなれないんだわ!」 ふきこ「(笑いを堪えている)」 ニボシ「にゃ〜」 棚を歩いていたニボシ、瓶の一つを倒してしまう。 ふきこ「あらあらニボシ、いけませんですわ」 ニボシ「にゃ(すまなそう)」 零れるのは──黒いイガイガの種。 ぽぷり、拾うのを手伝いながら── ぽぷり「あら? この種、一度使った事がある……」 ぽぷりから種を受け取り瓶に入れるふきこ。 ふきこ「(真剣に)これはちょっと危険な魔法の種です。ぽぷり ちゃんが使うには未だ早いのですわ」 ぽぷり「わ、判ったわ……」 ○にこにこ銀座商店街 夕暮れ──そして、夜がやってくる──。 ○ぽぷりの部屋 ベッド脇の壁に貼られた星座図を見ているぽぷり。 ぽぷり「──昨日見えた光は──この辺だった──」 と、蛍光灯がチカチカして──消えた。 ぽぷり「て、停電っ!?」 ベッドから窓へ。外も暗い。 ママの声「(オフ/部屋外から)ぽぷり、大丈夫」 ぽぷり「(振り向き)うんママ!──(外を見て)でも……あッ」 川の向こうの山斜面、高圧電線に沿ってバチバチッ と光り、巨大なもののシルエットが一瞬浮かぶ。 ぽぷり「なっ、なあにあれ──(決意)ようっし」 ○夜の空 ピンチィ「しゅっかー」 傘で山に向かって飛んでいくぽぷり。 ぽぷり「ピンチィ、見える!? 何だかとっても大きなのがさっき ちょっとだけ見えたのよ!?」 ピンチィ「しゅーしゅー」 高圧鉄塔に接近するぽぷり──と! ヒトシの声「危ない!! 近づくんじゃない!」 ぽぷり「えっ!?」 バチバチバチ!! 眼前にスパーク! 再び一瞬、巨 大な獣のシルエットが浮かび、咆哮が轟く。 ぽぷり「きゃあああっ!」 傘から手を離してしまうぽぷり! 下で見上げていたヒトシ、愕然! ピンチィ「しゅかしゅかーっ」 傘ごとぽぷりの下に来てクッションになるピンチィ。 ぽぷり「あ、ありがとピンチィ!」 ○山の森の中 ヒトシ、高圧電線に沿って移動するスパークを見つ めている。ぽぷり、脇に来て── ぽぷり「何がいるのよ!?」 ヒトシ「ウィルバーだ。電気を求めて星を荒らす奴!」 ぽぷり「え……、星を……?」 ヒトシ、持っていた金属鞄を開き、中から奇妙な形 の機械を取り出す。 ぽぷり「何をするの?」 ヒトシ「あいつをこの中に捕まえるんだ」 ぽぷり「そんな小さなものになんて入らないわ!」 ヒトシ「(苦渋)確かにあいつは電気を食い過ぎて大きくなり過 ぎた。でもやるしかないんだ!」 ヒトシ駆けだす。 ぽぷり「あっ、待って!」 ────────────────────── 高圧電線が木々に隠れて見えなくなっている。 と、木々が見えない巨大なものによりメキメキと倒 れて、麓へと下りていく。 ヒトシ、やってきて機械を起動。アンテナの様なも のをウィルバーがいる方へ向ける。 ぽぷり「木が倒れていく……、大きい……(怖い)」 ヒトシ「くっ──、あいつの角に正確に当てないとダメなんだ!」 ぽぷり「! 待って!」 ぽぷり、ポーチからタビスのルーペを出し──見る。 ぽぷり「ミエナイモノミエナイモノミセテオクレ!」 ルーペに浮かぶ、巨大な怪獣の姿。 ウィルバーの咆哮「おおおおおおんんんんんんん」 ぽぷり「み、見えた……」 ヒトシ「見せてくれっ!」 ヒトシ、ぽぷりの顔のすぐ脇に自分の顔を寄せる。 ぽぷり「あ(ぽっ)」 ヒトシ「ぽぷり、すごいぞ! こんな事が出来るのか!」 ぽぷり「ふふっ。これって魔法なのよ」 ヒトシ「ようっし、これで──(照準を角に合わせ)どうだ!!」 ぴゅるるる! ヒトシのマシンからビームがウィル バーの角に照射される。 ウィルバーの咆哮「うおおおおお!」 苦しむウィルバー。しかし──、高圧電線の電気を 吸い、自己の躰を放電させてビームを拒絶! バリバリバリバリ! 全身に淡いプラズマを放ち、 見える様になるウィルバー! ヒトシ「だっ、ダメか……。こんなに遠くまで追っ掛けてきたっ ていうのに!(落胆)」 ぽぷり「遠くから……?(夜空を見上げ)──諦めるなんて男の     子らしくないわ!」 ヒトシ「は?」 ぽぷり「このままじゃ、ウィルバーはにこにこ銀座に下りちゃう のよ! みんなのお店が危ないじゃない!」 ヒトシ「でも、あいつは電気を食い過ぎて──」 ぽぷり「電気! (ニコッ)あたしに任せて!」 ○夜空 ピンチィ、二人を支えて重そうに飛ぶ。 ピンチィ「しゅ、しゅか……しゅ……」 ぽぷり「頑張ってピンチィ!」 ヒトシ「(下を見て)ウィルバーは川をもうすぐ越える!」 木々を割って姿を現す眼下のウィルバー。 ○ファーマシィー裏/テラス 降り立つ二人。ぽぷり、ドアを叩いている。 ぽぷり「ふきこさん! ふきこさん起きて!」 蝋燭の灯が中で点き、ふきこがドアを開ける。 ふきこ「どうしました? ぽぷりちゃん」 ぽぷり「(真剣に)ふきこさんお願い! あの黒い魔法の種が欲 しいの! どうしても必要なの!」 ふきこ「(じっとぽぷりを見る)」 ぽぷり「──」 ふきこ「──判りました。今持ってきますわ」 ─────────────────────── 黒い種を手の平に乗せられるぽぷり。 ぽぷり「ありがとうふきこさん」 ふきこ「──頑張ってね、ぽぷりちゃん、それに、ヒトシ君」 ヒトシ「──」 魔法の種をアルデルの小瓶に入れ── ぽぷり「マホウヨマホウヨ、ウマレテオイデ!」 ヒトシ「!」 ぴかっ! ぽよん! バチバチバチ! ガ ル「ぴーがりがりがりがりがりがり」 ぽぷり「ガル! 電気の魔法! この前はあたしがちゃんと魔法 にしてあげられなかったの! 御免ね! お願い! ガ ルじゃなきゃ出来ない事があるの!」 ガ ル「(やや神妙)ガル、ガルルルルルル」 ヒトシ「これは──何ですか?(ふきこに)」 ふきこ「(微笑)ぽぷりちゃんの魔法ですよ」 ヒトシ「魔法……」 と! ウィルバーの咆哮が轟く。 ぽぷり「ガル! 来て!」 駆けだすぽぷり。あっ、と追うヒトシ。 ○にこにこ銀座商店街 シャッターの閉まった商店街の真ん中に立つぽぷり。 公園側の階段下から淡い光が立ち登り始める。 ぽぷり「──来る……、このにこにこ銀座は、みんなが大切にし ている町なの! 壊さないで!」 ウィルバー「おおおおんんんんんん!」 階段を上がってきたウィルバーの頭部が見えた! ぽぷり「ガル! お願い! あの怪獣の電気を吸い取って!」 ガ ル「がるるるるるるるるる」 ガル、むむっという顔を引き締め──ウィルバーに 向かっていく! ヒトシ「!」 ウィルバー「ぐおおおおおおんんんん!」 ガ ル「がるるるるるるるるるる」 バチバチバチバチ!!!!!! 凄まじい光電の交錯。 ぽぷり「ガルゥゥゥゥ! 頑張ってぇぇぇぇ!」 ガル,ぽぷりの声を受け──、力を漲らせ──一気 にウィルバーの電気を吸い取っていく! ガ ル「がるるるるるるるる!」 ウィルバー、どんどん小さくなっていく。 ヒトシ「今だ!」 ヒトシのマシンがビームを放つ! ウィルバー「きゅうんんんんん」 ビームに牽引され──マシンに封じられる小怪獣。 後ろで見ていたふきこ──、微笑。 ふきこ「(呟く)ぽぷりちゃん、よく頑張りましたわ」 ニボシ「にゃ……」       巨大に膨れ上がったガル、透明になって──消えた。       ─────────────────────── 向き合うぽぷりとヒトシ。 ヒトシ「ありがとう、ぽぷり──」 ぽぷり「良かったわ……。でも、ヒトシ君はどこから来たの?」 ヒトシ「(微笑)もう気づいてるんじゃないのかい?」 ぽぷり「え……(と星空を見上げる)。じゃあ、本当にやっぱり」 再びヒトシの方を見ようとすると──いない。 ぽぷり「! ヒトシ君!? どっどこ!?(見回し──空を見上げ) もう行っちゃうなんてひどいじゃない!」 ヒトシの声「(遠くから)ありがとう!西野かおり!」 ぽぷり「(涙を浮かべ)もっと色々お話ししたかったのに──。 (大声で)今度はそっちも本当の名前を教えてよねー!」 星空の下に独り立つぽぷり──。 ふ、と電柱を見上げる。 『ヒトシ質店』の看板。 ぽぷり──、ちょっと寂し気に笑みを浮かべ── マンションに向かって駆けだす。                     つづく