ふしぎ魔法 フ ァ ン フ ァ ン フ ァ ー マ シ ィ ー            その36                 ※スペシャル2             ジ ル ム と ジ ル モ                 第2稿                脚本/ 小 中 千 昭 Animation Play by Chiaki J. Konaka                       98/06/29 登場人物 ぽぷり〔西野かおり〕(10) ふきこさん〔ファンファンファーマシィー店主〕 ニボシ〔黒い子猫〕 のんすけ(03)〔各話必ず一回登場〕 ぽぷりのママ 八百ひち 八百ひち妻 たばこ屋 カメラ屋 魚まさ 洋品店主 くるみ けい なおみ マンションのサラリーマン 同     女子高生 籠屋 未来からの観光客 武士 風の精霊 ピンチィ 時の精霊 ジルム      ジルモ ○朝日が昇るにこにこ銀座商店街 ○ぽぷりの部屋 眠っていたぽぷり、目覚める。脇にはうさぎのぬい ぐるみ。 ぽぷり「ふぁ〜〜」 ぽぷり、うさぎのぬいぐるみを持って二段ベッドの 上へ。そこにはいっぱいのぬいぐるみがひしめいて いた。 ぽぷり「──仲間がいっぱい増えたね(やや寂しげ)」 うさぎを仲間に戻しつつ、ぬいぐるみを見渡す。 ────────────────────── すとん、と降りるぽぷり、もう元気な顔。 ぽぷり「さあって、今日はどんな魔法と遊ぼうかなっ!」 ○ファーマシィー店内 所狭しと品が並べられている棚──。 コチコチコチコチ……。時計が静かに時を刻む。 今日は暇らしく、ふきこはカウンターの椅子に座っ てこっくりこっくり──。 と、ぼーん、ぼーん……。十二時の知らせ。 ふきこ、ぱっと目を開き── ○ファーマシィー/外 『ちょっとお休み中です』の看板を下げ、出てくる ふきこ。と── ふきこ「あらぽぷりちゃん、どうしたんですの?」 ニボシ「にゃあ?」 ぽぷり「お買い物の時間でしょ!? あたし待っていたのよ!」 ふきこ「(苦笑)まあ」 ○にこにこ銀座商店街 楽しく買い物をする二人。 ♪『にこにこ銀座でお買い物』セカンド・ヴァージ   ョン 以下のやりとり、オフ。 ぽぷり「ねえふきこさん」 ふきこ「なんですの? ぽぷりちゃん」 ぽぷり「今日は魔法の種の元は買わないの?」 ふきこ「そうですわね、今日は何かあるかしら……」 ○八百ひち前 八百ひち「さーいらっしゃいいらっしゃい収穫の秋、味覚の秋だ よーん」 やってくる二人。 八百ひち「おうふきこさんとぽぷりちゃん。今日は何買っていく かい?」 ふきこ「そうですわねぇ……」 ぽぷり「ねっ、何が種の元になるの? ねっ、ねっ」 八百ひち「種の元? 野菜は元気の元だぁよ」 ぽぷり「八百ひちのおじさん、冴えてるわね」 八百ひち「え? えへへへ、そうかい? おまけしちゃうか」 八百ひち妻「あんたっ!」 ビクッとなる八百ひち。 八百ひち「(ぶつぶつ)るせーないちいち……」 ふきこ「御免なさい、今日は野菜はいいですわ」 八百ひち「(がっかり)あ、そうっすか……またどうぞ……」 ○にこにこ銀座商店街 ぽぷり「野菜って魔法の種の元にはならないの?」 ふきこ「そんな事ありませんわよ」 ぽぷり「魔法の種っていろんなもので出来るのよね」 ふきこ「ええそうですわ」 ぽぷり「あのー、ふきこさん」 ぽぷり、決意の顔で立ち止まる。 ふきこ「(立ち止まり)何ですの?」 ぽぷり「あたしにも、魔法の種って作れるかしら」 ふきこ「……」 ニボシ「にゃあ(否定的に)」 ぽぷり「あたし作ってみたいの! だってあたしが使う魔法なん だもの! 自分で作った魔法の種だったら、あたしの言 う事だってすぐに聞いてくれるんじゃないかって思うの」 ふきこ「──そうですわね、一度作ってみるのもいいかもしれま せん」 ニボシ「にゃっ?」 ぽぷり「ほっ本当!? あたし作れる? 作ってもいいの!?」 ふきこ「でも、ひとつだけ気をつけなくてはいけません。自分で 作った魔法は、どんな事があってもちゃんと自分で消し てあげないといけないのですわ」 ぽぷり「ピンチィ達みたいに自然に帰っていくんじゃないのね… ……。でも判った! ちゃんと出来るわ」 ふきこ「でもぽぷりちゃん、一体どんな魔法を作ってみたいので すか?」 ニボシ「にゃあ」 ぽぷり「えっ……?」 ○ぽぷりのマンション/夜 ぽぷり「(オフ)どんな魔法がいいかなぁぁぁ……」 ○ぽぷりの部屋 机で手帳を広げ、うんうん唸っているぽぷり。 ぽぷり「いざ自分で作るって思うと、悩んじゃうわ」 と、ママが洗濯物を持ってきてベッドに置く。 ぽぷり「ねえママ! もし、もしもだけれど、魔法が使えるって 事になったら、どんな魔法を使ってみたい!?」 マ マ「そうねぇ……、あたしの代わりに事務所に行ってくれる 魔法とか」 ぽぷり「う〜ん……」 マ マ「パパの出張を少なくする魔法もいいな(くすっ)」 ぽぷり「もう、もっと魔法らしいの考えてよぉ」 マ マ「だってそういうの考えるのは、ぽぷりの方が得意じゃな い。じゃあお休み」 出ていくママ。 ぽぷり「でも、悩む時は悩むわ。(欠伸)今日はもう寝ようっと」 ぽぷり、電気を消してベッドへ。 ○深まる夜── マンションにタクシーのヘッドライトが当たり── ○ぽぷりの部屋/外側 マ マ「(オフ)ぽぷりはもう眠っちゃったわよ。明日も早いな んて、ぽぷり、ガッカリするわ……」 ドアが開き、大きな影が暗いぽぷりの部屋に延びる。 ベッドですやすやと寝ているぽぷりの脇に、ぬいぐ るみのくまがそっと置かれる。 影、出ていき──ドアが閉じる。  ○ぽぷりのマンション/翌朝 ぽぷり「(オフ)えーっ!?」 ○ぽぷりの部屋 パジャマのぽぷり、ぬいぐるみを抱きしめ半ベソ。 ぽぷり「どうしてどうして起こしてくれなかったのぉ?」 マ マ「だってパパが起こしちゃ悪いって言うんだもの」 ぽぷり「そんなの……、ひどいよ……(俯き)。昨日帰ってくる     って知ってたら、あたしずっと起きてたわ……」 ○駅向こうの町 くるみ、けい、なおみと歩くぽぷり、ションボリ。 け い「今日はぽぷりちゃん、ずーっと元気ないね」 なおみ「パパに会い損ねたんだって」 くるみ「ぽぷりちゃん、元気出して」 ぽぷり「うん……。だって、あとちょっとの時間、夜更かしして たら会えたのよ。それが悔しいの」 くるみ「お父さんまたすぐ帰ってくるんでしょ?」 ぽぷり「そうだけど……、パパが帰ってくる日より昨日の夜の方 がずっと今日の今からは近いわ……」 け い「そ、そういう考え方も、あるわね(苦笑)」 ぽぷり「(ハッ)そうよ! 昨日の方がずーっと近いじゃない!」 急に元気なぽぷりに顔を見合わせる三人。 ぽぷり「そうよそうだわ! あたしそうすればいいんじゃない!」 なおみ「ぽぷりちゃん、何をするの?」 ぽぷり「昨日のパパに会うのよ! じゃあね! また明日!」 ダッ、と駆けだしていくぽぷり。 口あんぐりの三人。 ○にこにこ銀座商店街 駆け抜けるぽぷり。 ぽぷり「そうよそうよ! あたしが作る魔法、時間の魔法にすれ ばいいんだわ!」 ○ファーマシィー店内 飛び込んでくるぽぷり。 ぽぷり「ふきこさーん! あのねあのね!」 奥から出てくるふきこ。 ふきこ「どんな魔法の種を作りたいんですか?」 ニボシ「にゃあ」 ぽぷり「時の魔法! あたし、時の魔法を使いたいの!」 思案するふきこ。 ふきこ「時の魔法、ですか……」 ニボシ「にゃー」 ぽぷり「(心配そうに)ダメ? あたしじゃ無理?」 ふきこ「無理という事はありませんが……、でも、ぽぷりちゃん ならちゃんと判ってくれると思いますわ」 ぽぷり「(パッと顔を輝かせ)本当!? ね、どんな材料が要るの !? どうやって作るの!?」 ふきこ「ええと、そうですわね、まず必要なのは──、ねじまき 草の根っこ」 ぽぷり「!」 ふきこ「これは裏のテラスにありますわ」 ダッ! ぽぷり、ダッシュし── ねじまき草の株を手に戻っている。 ぽぷり「(はあ、はあ)それから?」 ふきこ「ええと──、樹齢百年以上は経った松の木の、松ぼっく り。これは神社の境内にあ──」 聞かない内に飛び出しているぽぷり。 ふきこ「……。」 ぽぷり「(ぜえぜえはあはあ)そ、それから? ふきこさん」 両手一杯に松ぼっくりを持って肩で息するぽぷり。 ふきこ「もう一つ、大事な材料が必要ですわ」 ぽぷり「なっ、なあに?それは」 ふきこ「砂時計の砂です」 ぽぷり「砂!?」 ふきこ「今ぽぷりちゃんが持っているものと一緒に同じ重さずつ     お鍋でぐつぐつと煮詰めれば出来ますの」 ぽぷり「じゃあ砂時計さえあればいいのね!?」 ふきこ「でも、その砂時計は、その魔法を使う人が長く使ったも     のでないとなりませんのよ」 ぽぷり「あたし──、砂時計なんて持ってない……」 ふきこ「困りましたわね……」 ニボシ「にゃあ」 ぽぷり「(がっくり)砂時計……。(きっ)探すわ!」 飛び出していくぽぷり。 ○にこにこ銀座商店街/時計店 ショーケースに飛びついているぽぷり。 時計屋「(たじたじ)す、砂時計……?」 ぽぷり「そう! ここは時計屋さんでしょ!?」 時計屋「しかし砂時計は売っていないよ」 ぽぷり「(しょぼん)そうなの……」 ─────────────────────── 魚まさ「砂時計? ウチにゃあ無いなぁ……」 ─────────────────────── 八百ひち「ウチには立派なぜんまい時計があんのよ!」 ─────────────────────── なつみのおばあちゃん「ウチは電気屋だから……」 ─────────────────────── がぁぁぁぁん……。 ぽぷり「──砂時計……。誰も持ってないんなら──自分で── 自分で作るしかないわね!」 ○公園 砂場の脇に座って、ポリ容器のジュースを二本分、 ストローで一気飲みするぽぷり。 ぽぷり「(ひっく)──ふう」 ─────────────────────── 水道で容器を洗い── 砂場に戻ってきて容器の一つに砂を入れる。 そして容器の口同士をセロテープで貼って止める。 ぽぷり「出来たわ! ちょっと大きいけど、これだって砂時計」 砂が入った方を上に向ける。 ストロー穴から砂がササーッと流れ落ちていく。 ぽぷり「ちゃんと出来たじゃない。あっ、でも……」 ○フラッシュ ふきこ「でも、その砂時計は、その魔法を使う人が長く使ったも     のでないとなりませんのよ」 ○公園 ぽぷり、しゃがみこんで何度も手製の砂時計をひっ くり返している。 ぽぷり「どれくらい使われてないといけないのかしら……」 砂、細く流れていく──。 ぽぷり「──(む〜〜)これじゃいつまで経ってもキリないわ! ようっし」 ぽぷり、一端容器を分解。蓋部分をベリッと剥がす。 素抜けの口になった容器を再度接着。 ぽぷり、容器をさっと引っ繰り返す。一瞬にして落 ちる砂。 ぽぷり「早いわ!」 ぽぷり、シェーカーの様に容器をザクザクと振る。 ぽぷり「これなら、長く使った事と同じになるわ!」 ザクザクザク! ○ファーマシィー/調合室 目を丸くしているふきこ。 ニボシ「にゃ?」 ふきこ「それが、砂時計ですか?」 ぽぷり「あたしが作ったの! ね、ふきこさん。ねじまき草の根 っこと松ぼっくりと、これがあればいいのよね!?」 ふきこ「それらを煮詰めるには、このお鍋でないといけません」 ふきこ、使い込んだ鉄鍋をフックから降ろす。 ぽぷり「随分古いお鍋……」 ふきこ「魔法の種を作る時、ずっと私が使ってきましたの」 ぽぷり「(心配)それが無いとダメなの……?」 ふきこ「(微笑)ぽぷりちゃんに貸して差し上げます」 ぽぷり「(顔を輝かせ)ありがとうふきこさん!!」 ○ぽぷりの部屋 部屋中央に置かれた電気調理器上の鉄鍋。 エプロンをしたぽぷり、正座してぐつぐつ煮込んで いるところ。 脇から覗き込むママ。 マ マ「臭いんだけど……。何作ってるの?」 ぽぷり「パパと会えるおまじない」 マ マ「……、ふうん……」 関心を失って向こうへ行くママ。 マ マ「お鍋気をつけてね」 ぽぷり「はーい。(呟く)もうすぐ煮詰まるわ……」 鍋の中、マーブル色のチョコレートの様。 ─────────────────────── 机前のぽぷり、掌に不揃いな粒を載せて ぽぷり「出来た出来たーっ!」 テーブルに載せて転がす。 ぽぷり「あたしが初めて作った魔法の種! 待ちきれないわ!」 アルデルの小瓶を出し、他の種と一緒に、出来た種 を一粒。 ぽぷり「マホウヨマホウヨ、ウマレテオイデ!」 ぴかっ!──しかし、なかなか、出てこない。 ぽぷり「(当惑)どうして……? どうして出てこないの?」 小瓶を下にするぽぷり。 と、むにょ〜ん、と何かが出てこようとしている。 ぽぷり「あっ! いるいる!」 ぽぷり、シェーカーの様に小瓶を振る。 ぽよん! ジルム「じりりりりん じりりりん」 まるで時計の様な三角形の精霊が現れた。 かぽかぽと部屋を歩き回っている。 ぽぷり「時計みたい……、そうよ! やっぱり時の魔法が出てき てくれたんだわ!」 ジルム「じりりん じりりん」 ジルム、知らんぷりしてカポカポ歩く。 ぽぷり「名前をつけなくっちゃね。ええっと──、そう! あな たの名前はジルムよ!」 振り向くジルム。 ジルム「ジル……ム……?」 ぽぷり「さあ! 昨日の夜にあたしを連れていって!」 ジルム、ぴょん! と飛び上がり── ジルム「ジルムーッ!」 ぐらっ。空間が一瞬捩じれた──。 ぽぷり「えっ……?」 窓の外、太陽がぎゅうううんと昇って、あっという 間に昼間になってしまう。 ぽぷり「お、お日様が昇ってる……」 と、部屋の外からママの悲鳴。 ぽぷり「! ママ! どうしたのっ!?」 ドアを開けるぽぷり。 ママ、ボサボサの髪で慌てて出ていくところ。 マ マ「すっかり寝坊しちゃったのよ! ぽぷり学校は!? 行っ てきまーっす!」 バタン! ぽぷり「ど、どういう事……?」 部屋を振り向くと──、ジルムがいない。 ぽぷり「あれ? ジルム、どこ……?」 窓が開いていた。ぽぷり、窓から外を見る。 ぽぷり「ジルムー!」 と、下から「じりりんじりりん」の声。 ぽぷり、下を見ると、マンションの庭をカポカポと ジルムが歩いている。 ぽぷり「ジルム!」 ○マンション外 飛び出してきたぽぷり、見回す。 ぽぷり「ジルムどこーっ!?」 公園をカポカポと歩くジルムが見えた! ぽぷり「ジルムー!」 と、ぽぷりの脇から走っていく女子高生やサラリー マン。 サラリーマン「遅刻だ遅刻!」 女子高生「さっき寝たばっかりだって思ったのに〜(泣)」 ぽぷり「え……、まさか……」 ○公園からにこにこ銀座へ登る階段 一段一段昇っていくジルム。 ジルム「じりりりん じりりりん」 ─────────────────────── ぽぷり「待ちなさーい! ジルムーっ! どうしてあんな変な魔     法が生まれてきちゃったのぉ!?」 ○にこにこ銀座商店街 駆け登ってきたぽぷり。息を切らしている。 次々と開いていく店のシャッター。 皆欠伸をしている。 ぽぷり「まだ朝じゃないのに!」 と、洋品店のおばさんが顔を出し── 洋品店主「何言ってんのよ、とっくにお日様が昇ってるじゃない」 ぽぷり「だって、だって今何時!?」 店主、店内の掛け時計を見る。 洋品店主「ほら、もう九時よ」 ぽぷり「違うわ! 今は夜の九時なの!」 洋品店主「何寝ぼけてるんだろうね、この子は(ブツブツ)」 ぽぷり「ジルムの魔法は、ただ夜を昼にしちゃうだけなのよ! ふきこさんに助けて貰わないと──(ハッ)」 ○フラッシュ ふきこ「でも、ひとつだけ気をつけなくてはいけません。自分で 作った魔法は、どんな事があってもちゃんと自分で消し てあげないといけないのですわ」 ○にこにこ銀座商店街 愕然となっているぽぷり。 ぽぷり「どうやったらいいの? こんな事になっちゃって……」 ─────────────────────── 八百ひち前に来るぽぷり。 眠そうにしている八百ひち、大あくび。 八百ひち「ふぁ〜〜。ったく全然寝た気がしねぇや」 ぽぷり「あっ、あの、今は夜の九時だから、眠った方がいいわ!」 八百ひち「ハハハ、ぽぷりちゃん、学校はどうしたい?」 ぽぷり「おかしいと思わない? さっき晩御飯食べたばっかりで しょう?」 八百ひち「そう言われるそういう気もするが……」 八百ひち妻「(欠伸しながら)あんたっ。早く市場に行かないと 売るもん無くなるよっ」 八百ひち「おっといけね。それじゃあな、ぽぷりちゃん」 ぽぷり「──どうしよう……。ジルムはどこ行っちゃったか判ん ないし──、しょうがないわ! もう一度だけ、魔法で」 ○路地裏 駆けてくるぽぷり、ポケットから種を出す。自分で 作った大きな種。 ぽぷり「今度はちゃんとした魔法、出てきてねっ!」 種を入れようとするが、小瓶の口にギリギリで入ら ない。 ぽぷり「う〜〜〜〜ん!」 力任せに小瓶に種を押し込むぽぷり。 ぐにゅん! やっと入った。 ぽぷり「(ホッ)──マホウヨマホウヨ、ウマレテオイデ!」 ぴかっ! ころろん ジルモ「じるるるるる じるるるる」 やけに四角い時計型の精霊が現れた。 ぽぷり「……。」 ジルモ「……。」 ぽぷり「あ、あなたも時の精霊ね。あっ、名前名前! ええっと あなたは──ジルモ、ジルモよ!」 ジルモ「じるるる……。ジルモーッ!」 ぐわん! 空間が捩じれた。 ぽぷり「うわっ!」 突如太陽が急速に流れていき──、代わりに月が現 れ、夜になってしまう。 ぽぷり「なっ、なんなぉ……?」 ジルモ、ぴこたんぴこたん商店街の方へ。 ぽぷり「あっ、待ってジルモ!(追う) ジルモは昼を夜にしち ゃう魔法なんだわ。どうしてこんな変な魔法──。あ、 やっぱりあの砂時計でズルしたのがいけなかったのかな」 ○にこにこ銀座商店街 次々とシャッターが閉まっていく店。 ジルモは堂々と通りの真ん中を歩いてる。 ぽぷり「あれっ?」 煙草屋もシャッターを閉めようとしていた。 煙草屋「おやぽぷりちゃん。子どもがこんな夜遅くに出歩くなん て感心しないぞ」 ぽぷり「ええっ? だって、つい今までお日様が上がっていたじ ゃない」 煙草屋「ふーむ、そんな気もするが──、ほら、空をご覧。お月 様が出ているじゃないか。もう夜の九時過ぎだよ」 ぽぷり「違うっ──わないわ……、そう、今はそうなんだけど、 でも……」 と、向こうでジルムの声。 ジルム「ジルムーッ!」 ぽぷり「えっ!?(振り向く)」 ぐわん! 空間が捩じれ── 凄まじい勢いで太陽が登る。 またシャッターがガーッと開いていく。 煙草屋「なんて短い夜だったんだ。ふぁ〜」 ぽぷり、見回す。 ぽぷり「ジルムどこっ!? ダメよ勝手に昼にしちゃ!」 駆けだすぽぷり。 煙草屋のところに来る写真屋店主。 写真屋「おはようございます」 煙草屋「ああどうも、おはようさん」 写真屋「何だかここんとこずっと寝てない気がするんですがね」 煙草屋「そうですなぁ……。まあしかし気のせいですよ」 写真屋「そうですかねぇ……」 ────────────────────── 見探しながら走るぽぷり。 ぽぷり「ジルムー! ジルモー!?」 と、向こうの路地を過るジルモ。 ぽぷり「ジルモ! 待ってってば!」 ジルモ「ジルモー!」 ぐわん! ぽぷり、バランスを崩し、座り込む。 ぽぷり「あわわわっ」 再び夜となるにこにこ銀座商店街。 シャッターがまた閉まっていく。 ぽぷり「こ、こんな事が続いたら大変だわ!」 起き上がり、見回すぽぷり。 ぽぷり「ジルムもジルモも、どうして勝手な事ばっかりするの!? どこ言ったのよ!?」 と、通りを挟んでジルムとジルモが対面している。 ぽぷり「あっ!」 ジルム「ジルムー!」 ジルモ「ジルモー!」 ぐわわわわわん! にこにこ銀座が、通りを挟んで夜と昼に別れてしま った! 片側の店のシャッターは開き、 片側の店のシャッターが閉じる。 ぽぷり、昼と夜の真ん中に立つ。 ぽぷり「ジルム! ジルモ!」 二人、ぴょーんと一緒に飛んで──、空中で合体! ぽぷり「えっ!?」 ジルム+ジルモ「ジルムモー!!」 ぐわわわわわわわわわわわわわん!! かつて無い程に空間が歪んだ。 立っていられないぽぷり、地面に座り込む。 ぽぷり「なっ、何をしたのよ〜」 はっと見上げるぽぷり。 空が昼と夜のマーブルになっている。 光と闇が奇妙の交錯し、にこにこ銀座商店街が異様 な世界へ変容している。 ぽぷり「これって……」 太陽と月が凄まじい勢いで行き来している。その速 度はどんどん増して、光の線になっている。 ハッと見回すぽぷり。 にこにこ銀座の周囲がおかしい。侏蘿の木々が鬱蒼 と茂り、その向こうにはメトロポリスの様な高層都 市が。 と、ぽぷりの脇を籠屋が── 籠 屋「えっさ、ほいさ、えっさ、ほいさ」 道を歩く人々は時代がめちゃくちゃ。丁髷を結った 町人、大正期のマントを着た人、超モダンなミニル ックの女の子──。 ぽぷり「じ、時間の魔法だわ!」 ○ファーマシィー前 ふきこ、店のドアを開けて空を見る。 ふきこ「まあ……」 ニボシ「にゃにゃ、にゃー」 ふきこ「ぽぷりちゃんの魔法の仕業ですわね……。でも、これは ぽぷりちゃんが自分の力でないと、収める事は出来ない のですわ」 ニボシ「にゃ〜」 ○にこにこ銀座商店街 いきなりぽぷりの眼前の地面からエレベータが突出 し、中から観光ルックの人が現れる。 観光客1「ここが二十世紀の日本か」 観光客2「にこにこ銀座っていうらしいわ」 ぽぷり「あの、おじさんたち、どこから来たの?」 観光客1「二十二世紀だよ」 ぽぷり「(ひえ〜)にっ、二十二、世紀!?」 ぷっぷーっ。T型フォードが警笛を鳴らす。 ぽぷり、さっと避ける。 脇の侍「こら娘、危ないぞ、往来の真ん中に突っ立ってたら」 ぽぷり「な、なんだかよく判んないけど時間が目茶苦茶になっち ゃってる……。は、早くジルムとジルモを止めきゃ!」 軒先にパラソルの花屋脇に来て見上げるぽぷり。 ジルムとジルモ、くっついたまま、花屋の屋上でく るくる回っていた。 ジルム+ジルモ「ジルムモーッ!」 ぽぷり「──! 空が!」 ジルムとジルモの回転に呼応し、昼と夜の空がマー ブルに渦巻いている。 ぽぷり「あの二人が回っているから夜と昼が渦巻きになってる!」 ぽぷり、見回す。花屋の店先にはパラソルが。 ぽぷり「!」   ○花屋上空の空 ピンチィ「しゅかしゅかーっ!」 パラソルにつかまったぽぷりをピンチィが空へ。 ジルムとジルモ、ぐるぐる回転を加速している。 ぽぷり「ジルム! ジルモ! 止まって!!」 ジルム+ジルモ「ジルムモーッ!」 ぽぷり「ピンチィ! あの回転を止めたいの! 風であの二人を 止めて!」 ぽぷり、懸命に腕をぐるぐる回しジルム達を指す。 ピンチィ「しゅ?」 ぽぷり「逆に回して! 時の魔法の回転を止めるの!」 ピンチィ、口を大きく開け── ピンチィ「しゅかっ、しゅーーー」 ピンチィ、凄い風を巻き起こす! ジルムとジルモとは逆方向に、猛烈な速度で回転し だすピンチィ。 ひゅううう! 凄まじい風が二人を取り巻くが──       ジルムとジルモ、知らん顔で回転している。 ジルム「じりりりりり」 ジルモ「じるるるるる」 ぽぷり、パラソルで二人の前へ。 ぽぷり「二人とも! いいかげんにしなさーい!」 ジルム+ジルモ「じ……?(ぽぷりを見る)」 ぽぷり「あなたたちは確かに凄い魔法だわ。それは認めてあげる。 でも、みんなは一日を昼と夜、ちゃんと交代交代に過ご さないといけないの。勝手に昼にしたり夜にしたりして はいけないの!! そうよ! あたし、あたしパパと会い     たかったから、時の魔法が使いたかった。でも──でも     ね、パパと会えた時の嬉しさって、待ってる時のワクワ     クがあるからだわ。時って、一分一分を大事に、一緒に     過ごしていくもの──、そうなのよ! 判るでしょ!?」 ジルム「じりり……」 ジルモ「じるる……」 ぽぷり「判ってくれる筈だわ! だってあたしがあなたたちの種 を作ったんだもの!」 ジルム+ジルモ「じ……」 ジルムとジルモ、見つめ合い──、淡い光に包まれ       て──、ぽんっ! 小さくなって弾けた! ぽぷり「!」 ぽぷりの手元に落ちてくる粒。魔法の種。 ぽぷり「──今度はちゃんとした魔法にしてあげるね……」 ○ぽぷりの部屋 机に向かうぽぷり、時の魔法の種をポプリの瓶に入 れる。 ぽぷり「──でも、ちょっと面白かったな……」 ぽぷり、壁に貼ったカレンダーを見る。 日付に青い輪。『パパが帰ってくる日』 笑みを浮かべ見つめていたぽぷり、欠伸をして、ベ ッドへ向かう。 パパに貰ったくまのぬいぐるみを抱きしめて眠りに つく──。                     つづく