ふしぎ魔法 フ ァ ン フ ァ ン フ ァ ー マ シ ィ ー            その37(製作ナンバー35話)          ね こ に な っ た ぽ ぷ り                 第2稿                脚本/ 小 中 千 昭 Animation Play by Chiaki J. Konaka                       98/07/05 登場人物 ぽぷり〔西野かおり〕(10) ふきこさん〔ファンファンファーマシィー店主〕 ニボシ〔黒い子猫〕 のんすけ(03)〔各話必ず一回登場〕 我楽多堂店主 サラリーマン ペットショップ店員 ぽぷり猫 猫人たち ○にこにこ銀座商店街/夕刻 買い物籠を下げたぽぷり、スキップしながら手帳を 見て── ぽぷり「ええっと、後はママに頼まれたベーキング・パウダー、 ベーキング・パウダーはスーパーサンエース、スーパー サンエースはお茶屋さんの隣──」 ぽぷり、立ち止まる。 ぽぷり「──あれれれ?」 スーパーと高橋茶舗の間に、狭い間口の古びた店が あった。 ぽぷり「(手帳と見比べ)ここにこんなお店なんてあったかしら ……。あたしすっかり見落としていたんだわ」 覗き込むぽぷり。 和洋取り混ぜた、変わった骨董品が店中に雑然と積 み上がっている。 ○我楽多堂店内 入ってくるぽぷり。色々な物に触れてみる。 ぽぷり「わぁ……。まるでふきこさんの屋根裏部屋みたいだわ。 でももっと古いものばかりね」 と、大人の拳程の、中国風香炉を見つける。 ぽぷり「これ、なんかとってもいい匂いがする……」 と、店の奥から年齢不詳な怪しい風体(黒眼鏡に黒 インバネス、太った体躯)の店主登場。 古道具屋店主「それは香炉というのさお嬢さん」 ぽぷり「こんにちは。あたしぽぷりっていうのよ、おじさん。こ こにこんなお店があるなんて、あたし全然今まで気づか なかったわ!」 古道具屋店主「ほっほっほっ。そうかね、小さい店だからね」 ぽぷり「これ、何に使うものなの?」 古道具屋店主「言ったろう? 香炉。香りのする木をそこで炊い て、匂いを楽しむ昔の粋な人の遊びさ」 ぽぷり「匂いを楽しむだけ? 食べたりはしないの?」 古道具屋店主「ほっほっほっ。匂いだけだよ、ぽぷりちゃん」 ぽぷり「ふうん、でもこれ、昔の人が随分使ったものなのね。だ ってとってもいい匂いが染みついているんだもの」 古道具屋店主「気に入ってくれたかい?」 ぽぷり「ええとっても! でも……」 古道具屋店主「持っていっていいよ。お金は要らない。それを大 事にしてくれるんならね」 ぽぷり「ホント!? ホントにいいの!? ありがとうおじさん!」 駆け出ていくぽぷり。 ニマーッと笑う店主。インバネスの内側は真っ白な 腹に『福』の文字──。 ○ファーマシィー調合室 ふきこの前に香炉を置くぽぷり。 ぽぷり「匂いだけを楽しむなんて、変わってるわ」 ふきこ「わたくしのお店でも、ハーブ・オイルを売ってますでし ょ。あれだって匂いを嗅ぐ事で気分を落ちつけたり、喉 の病気を治したりするのですよ」 ニボシ「にゃあ」 ぽぷり「ふううん……」 ふきこ「それはとっても古い物の様ですわね」 ぽぷり「やっぱりタダで貰っちゃったら悪かったかしら」 ふきこ「下さったんなら、大事にすれば良いのですわ。でも──、 金物屋さんの隣に、そんなお店、ありましたですかしら ねぇ……」 ニボシ「にゃ〜?」 ○にこにこ銀座商店街 公園の方へ歩くぽぷり。香炉の匂いを嗅ぎながら ぽぷり「でもこの匂い、前に嗅いだ事が──、あ……、ママがお 着物を着る時の匂いに似てるかも……」 目を閉じて立ち止まり、香炉の残り香をすーっと吸 い込むぽぷり。 と、香炉の中からピンク色の煙がすーっと広がりぽ ぷりを包む。 ぽぷり「(未だ目を閉じている)そうよ! ママが着物を箪笥に 仕舞う時に、伽羅っていう匂いの木を入れてた──あれ に似て……、あれ……?」 目を開けるぽぷり。 ぽよよよ〜ん……。 ハッと気づくと、子猫の姿となっているぽぷり。ア ルデルの小瓶だけ首に下げている。 ぽぷり猫「あ……、あたし……、何か、変かも……」 転がっていた香炉、すっと消えるがぽぷり気づかず。 脇を通りすぎる買い物客や通勤帰りの勤め人達。 ぽぷり猫「わあっ!」 ぽぷり、四つ足でひょこっと避ける。 ぽぷり猫「(見上げ)ちょっとひどいじゃない! あたしここに いるのに!」 立ち止まるサラリーマン。 サラリーマン「ん?……」 ぽぷり猫「な、何よー」 サラリーマン「首に変な小瓶を下げてる……、飼い猫か。早くお 家に帰りな」 言って去っていくサラリーマン。 ぽぷり猫「ちょっ、待ってよ! あたしの話聞いて──(ハッ) あたしの言葉、通じないの!?」 ─────────────────────── お好み焼き屋のドアに姿を映し、ショックを覚える ぽぷり猫。 ぽぷり猫「ね、猫になっちゃったー! たっ、大変だ! どうし てこんな事に──(ハッ)これよ! この香炉の匂いを 嗅いだからなっちゃったのよ!」 ─────────────────────── ぽぷり、四本脚で商店街を戻っていく。 ぽぷり猫「あのお店に行って、元に戻して貰わなきゃ!」       人を避けて低い視線で道を往く。 ぽぷり猫「こんな風に見えてるのね、ニボシって……」 ─────────────────────── 我楽多堂があった筈の場所──。 しかしそこには狭い路地があるだけ。 ぽぷり猫「! 無いわ! お店が無い! 金物屋さんと食料品屋 さんの間に確かにあった筈なのに!」 と、脇を通りかかるペットショップ店員。 ペットショップ店員「あれ? こんな猫、初めて見るな」 ぽぷり猫「ペット屋のお兄さん! あたしよ! ぽぷりよ!」 店員、ぽぷり猫を抱き上げる。 ペットショップ店員「ハハハ、ぽぷりちゃんとそっくりなのを首 から下げてるね。貰ったのかい?」 ぽぷり猫「違うってば! あたしがぽぷりなの!」 ペットショップ店員「お腹が空いてるのかなぁ、なんでこんなに 騒ぐんだろ……。よし、ウチにおいで」 ぽぷり猫「ちょっ、ちょっとー!」 ○ペットショップ店内 ぽぷり猫、シオシオの顔で座っている。前に置かれ るミルクの入った皿。 ペットショップ店員「さあ、お飲み、ミルクだよ」 ぽぷり猫「あたし、お皿でミルクなんて飲めないわ!」 ペットショップ店員「ちゃんと飲まないと、大きくなれないぞ」 ぽぷり猫「大きくって、人間に戻れば大きくなれるわ」 と、きゅ〜っとお腹が鳴るぽぷり。 ぽぷり猫「あれ、ホントにお腹減ってる……。ちょっとだけ……」 ぽぷり猫、ペロッとミルクに舌をつける。 ペットショップ店員「ほーら、美味しいだろ?」 ぽぷり猫、既にミルクを飲むのに没頭。 ─────────────────────── おねむなポーズとなっているぽぷり猫。 ペットショップ店員「今夜はウチで泊まってっていいよ。僕は帰 るけどね。明日飼い主さんを探そう。じゃ」 出ていく店員。 暗くなる室内。 ぽぷり猫「お腹いっぱいになったら、何だか動きたくなくなって きた……。ふぁ〜〜」 眠りに落ちるぽぷり猫──、ハッと目を開き ぽぷり猫「眠ってる場合じゃない!」 ○ペットショップ裏 窓を必死にこじ開け、飛び出すぽぷり猫。 ぽぷり猫「ママがもうすぐ帰ってきちゃう! あたしがいなかっ たら心配するわ! ふきこさんに助けて貰わなきゃ!」 ○ファーマシィー前 駆けてくるぽぷり猫。 ドアをトントンと前足で叩く。 ぽぷり猫「ふきこさーん! ふきこさーん!」 しばらくして、置くからニボシが姿を見せる。 ぽぷり猫「にっ、ニボシ! あたしよ! あたしぽぷり!」 ニボシ「にゃ……?」 ぽぷり猫「あたし猫にされちゃったの! あなたなら判るわよね!? だって猫同士だもの」 ニボシ「にゃにゃ?」 ぽぷり猫「判らないのっ!? ほら、これ、ふきこさんから貰った アルデルの小瓶よ!?」 ニボシ「(凝視)──にゃー」 奥に消えるニボシ。 ぽぷり猫「あっ、待って! ふきこさんを呼んでよぉー」 ─────────────────────── しょんぼり座っているぽぷり猫。 日が暮れていく。 ぽぷり猫「あーあ……、どうしてこんな事になっちゃったの……」 と、裏からニボシが出てきた。 ニボシ「にゃあ」 ぽぷり猫「ニボシ、ふきこさんは?」 ニボシ「にゃにゃ、にゃにゃにゃ」 ぽぷり猫「何言ってるのか判んないわ。あたし姿は猫でも、猫の 言葉が判る訳じゃないのね……」 ニボシ「にゃー」 ニボシ、勝手に歩きだす。 ぽぷり猫「ちょっ、待ってよニボシ、どこ行くの?」 ○にこにこ銀座商店街 人の間をすり抜け、早足で歩くニボシ。ぽぷり猫、 必死に後を追う。 ぽぷり猫「まったくニボシったら、あたしの事ちゃんと判ってる のかしら。でも──、何か体が軽くなって、歩くのが結 構楽しい! たまには猫になるのも悪くないわね」 ニボシ、食料品店と金物屋店の間の路地前に来る。 ぽぷり猫「あら? ここはあの変なお店があったところじゃない」 ニボシ「にゃあ」 ニボシ、暗く狭い路地に入っていく。 ぽぷり猫「あっ、待ってニボシ」 ○暗く狭い路地 二匹の猫が進んでいく。と── ぽぷり「こんな狭いところ、猫じゃないと通れないわね」 突き当たりに、ぼーっと月明かりが差し込んで幻惑 的な袋小路。 ぽぷり猫「ああっ!」 そこには、朽ちたガラクタがそここに山を成し、そ の中央には古く汚れた招き猫が斜めに地面から生え るかの様に聳えていた。 ニボシ「ふにゃーっ!」 ニボシ、空を仰ぎ大きく声を上げる。 ぽぷり猫「この招き猫──まるであのお店の人そっくりだわ……」 ニボシ「にゃ、にゃにゃっにゃー」 ぽぷり猫「ニボシ、誰とお話ししているの?」 ニボシ「にゃあ」 ニボシ、前脚で招き猫の下をとんとんと叩く。 ぽぷり猫「え? ここに何があるの?」 ぽぷり猫とニボシ、地面を掘っていく。 と──、現れる香炉。 ぽぷり猫「! これってあたしが貰った筈の香炉じゃない!」 ニボシ、にま〜っと笑う。 ぽぷり猫「そうよ! 匂いがするもの!」 ぽぷり、香炉に鼻を近づけ、くんくん。 ニボシ「にゃっ!」 香炉からまた、ピンク色の煙が立ち昇り、ぽぷり猫 の姿を包んで── ふきこの声「ポプリポプリ、ネコジャナクテニンゲンノポプリニ モドレーッ!」 ニボシ「にゃーっ!」 ぽぷり「うわっ」 人間の姿(服や顔、手足は泥だらけ)に戻るぽぷり。 ぽぷり「あ……、あたし──」 自分の手足、スカートの後ろを見て── ぽぷり「やったぁっ! あたし戻った! ありがとうニボシ!」       ニボシを抱きしめるぽぷり。 ニボシ「(苦しい)にゃ、にゃ〜〜」 ぽぷり「え?(上を見て)ふきこさん!」 建物と建物の隙間から覗く空に、ほうきに乗ったふ きこが浮かんでいた。 ぽぷり「ありがとうー!」 ふきこ「(微笑)猫になった気分は如何でしたか?」 ぽぷり「(ニマッ)案外悪くないものよ。ねっ、ニボシ」 ニボシ「にゃ〜」 ○夜空 ふきこのほうきに一緒に乗ってるぽぷり。 下を見る。あの路地にぽつりと白い招き猫が見えて いた。 ぽぷり「──どうしてあたしを猫にしたのかは判ったの。あの細     い路地は、猫じゃないと通れないのよ。でも、どうして     あそこに来させたかったのかしら……」 ふきこ「あそこには、昔むかしに大変繁盛したお店があったのか もしれません」 ニボシ「にゃあ」 ぽぷり「お店?」 ふきこ「招き猫は、お店が繁盛しますように、っていうお願いを して置いてあったものなのですよ、ぽぷりちゃん」 ぽぷり「ふうん……。あっ、じゃあふきこさん!」 ふきこ「何ですの?」 ニボシ「にゃあ?」 ぽぷり「ファンファンファーマシィーにも、招き猫を置かなくっ ちゃね!」 ふきこ「(苦笑)猫のお客さんもいっぱいいらっしゃるかしら」 笑い合う二人、月にシルエットになって── ○我楽多堂──招き猫の店〔イメエジ〕 月夜の下で猫人間の客が集まってきている。 古道具屋店主「さあいらっしゃい。ここには何でもありますよ。 (微笑)今日は変わったお客さんが来て楽しかったんで すよ。あ、その香炉、如何です? いい品ですよ」                     つづく