ふしぎ魔法 フ ァ ン フ ァ ン フ ァ ー マ シ ィ ー            その38(製作ナンバー36話)        や お ひ ち さ ん の プ レ ゼ ン ト                第2稿                脚本/ 小 中 千 昭 Animation Play by Chiaki J. Konaka                       98/07/19 登場人物 ぽぷり〔西野かおり〕(10) ふきこさん〔ファンファンファーマシィー店主〕 ニボシ〔黒い子猫〕 のんすけ(03)〔各話必ず一回登場〕 八百ひち 八百ひち妻 たばこ屋 カメラ店主 八百ひち妻の妹 その赤ちゃん 大地と緑の精霊 グリム ○にこにこ銀座商店街 買い物籠下げて、スキップしながら ぽぷり「♪にっこにっこ銀座でお買い物!」 八百ひち前に来るぽぷり。 ぽぷり「こんにはーっ! 八百ひちのおじさん、おばさん」 八百ひち妻「あーらぽぷりちゃん」 八百ひち「今日は何買ってくかい?」 ぽぷり「そうねぇ、あっ大っきな大根! でもそんなに大きな大     根、あたしとママだけじゃ食べきれないかな」 八百ひち「旨いよ〜? 千切りにしてサラダ、魚と一緒に煮つけ、 下ろして醤油をちょいとかけてご飯に──(ずるずる)」 ぽぷり「(一緒にずるずる)──お、美味しそう! でもこんな に大きいんじゃ高いのよね?」 八百ひち「まあぽぷりちゃんだ。大負けに負けちゃうよ!」 ぽぷり「ホント!?」 八百ひち妻「あんた! これ幾らで仕入れてきたんだよ。さっき     から負けてばっかじゃないかっ!」 八百ひち「うっせえなお前はいちいち。旬の野菜は安く美味しく 食べて貰いてぇんだよ!」 八百ひち妻「何言ってんだ、ウチは商売やってんだよ!?」 あわあわと見ているぽぷり。 八百ひち「たりめーだろうがっ! ここは“俺の店”だ!」 カチン、と来る妻。 八百ひち「俺が何を幾らで売ろうが勝手なんだよっ!」 八百ひち妻「あんたの店? ここはあたし達の店じゃないの?」 八百ひち「いーや、俺の店だ! 登記簿見てみやがれっ!」 ぽぷり「(おどおど)ど、どうしよう……、あたしのせいで……」 八百ひち妻「あんたそれ本気で言ってんの!?」 八百ひち「本気も本気、超本気だよっ」 八百ひち妻「──」 八百ひち「なっ、何だよお前」 八百ひち妻、前掛けをサッと脱ぎ、奥へ。 八百ひち「お、おい!」 ぽぷり「ご、ごめんなさい、なんかあたし……」 八百ひち「え? いやあ、(苦笑)あいつ時々、ああやって臍曲 げるんだ。ったくしょーがない奴──」 と、八百ひち妻、ビッと化粧してよそ行きの服。旅 行鞄を持って出てくる。 八百ひち「『あ?』」 ぽぷり「お、おばさん……」 八百ひち妻「あんたの店なんだろ? あんた一人でやってな」 八百ひち「ど、どこ行くんだよお前」 八百ひち妻「(最大剣幕)あたしの好きなところだよっ!」 八百ひちとぽぷり、「ひ〜〜っ」となる。 その間にサッサと歩いて行ってしまう妻。 八百ひち「な、何だよっ。あれが八百屋の恰好かっ? 化粧なん     んてしやがってちきしょっ」 ぽぷり「──どうしよう……」 ○ファーマシィー店内 ぽぷり「(しょんぼりと)こんにちはー。ふきこさん、あのね」 と、談笑していたふきこと八百ひち妻がいた。 ぽぷり「あっ! 八百ひちのおばさん!」 八百ひち妻「あら」 ぽぷり「あの、おばさんごめんなさい、あたし──」 八百ひち妻「え? ぽぷりちゃんは全然気にしなくていいよ」 ぽぷり「でも……」 ふきこ「奥さまは、御主人の事を怒っていらっしゃったのですわ」 ニボシ「にゃ」 ぽぷり「でも──。でも機嫌が直って良かった! じゃすぐお店 に帰るのね?」 八百ひち妻「(真顔になって)いいや、帰んないよ」 ぽぷり「えっ」 ふきこ「まあ……」 八百ひち妻「ふきこさんに話聞いて貰って、このお茶飲んだらち っとすっきりはしたのよ。でも、あの分からず屋の顔は 当分見たくないね」 立ち上がり 八百ひち妻「ふきこさんごめんね、お茶まで御馳走なっちゃって」 ふきこ「それは構いませんのですけれど……、これからどちらへ」 八百ひち妻「さあ、風の向くまま気の向くまま」 ぽぷり「ええーっ!?」 八百ひち妻「そいじゃ、またいつかね」 出ていく八百ひち妻。 ぽぷり「──だめ!!」 ○ファーマシィー外 バン、とドアを開け、八百ひち妻を追うぽぷり。 ぽぷり「お、おばさんお願い待って!!」 八百ひち妻「え?(キョトン)」 ぽぷり「(必死)ああああの! そんな遠くに行っちゃったら仲 直りだって出来ないわ! おばさんがにこにこ銀座から いなくなっちゃったらあたし達も寂しいけど、八百ひち のおじさんはもっと寂しいと思うの!」 八百ひち妻「──(苦笑)遠くなんて行かないよ」 ぽぷり「え……」 八百ひち妻「駅向こうにね、妹夫婦が住んでんの。子ども生まれ たばっかだし、ちょっと泊まりがけで行って来ようと思 ってね」 ぽぷり「(安堵)遠くじゃないのね……」 八百ひち妻「でも、あいつには内緒だからね。女の秘密だよ」 言ってサクサクと歩き去る妻。 ぽぷり「そんなぁ……」 ○ぽぷりのマンション/夜 ぽぷり「(オフ)ねえ、ママだったらどうする?」 ○ぽぷりの部屋 洗濯物を持ってきたママ── マ マ「そうねぇ、最近、パパと喧嘩してないからなー。だって 喧嘩したくたって、いつもいないんだものね」 ぽぷり「ちゃんと考えてよぉ。やっぱりおじさんがごめんなさい って謝らなきゃダメよね?」 マ マ「(苦笑)ただ謝ったって、ダメなんじゃない?」 ぽぷり「えーっ? どうして?」 マ マ「だって、いつも喧嘩してても、出ていっちゃうっていう のはよっぽどだと思うな(OUT)」 ぽぷり、窓からにこにこ銀座商店街を見て── ぽぷり「すぐ帰ってくるといいのに……」 ○にこにこ銀座商店街/翌朝 八百ひち前に来て、そーっと陰から覗くぽぷり。 八百ひち「(意気消沈)──いらっしゃーい……」 ぽぷり「……」 そっと近寄るぽぷり。 ぽぷり「──やっぱり昨日、帰って来なかったのね」 八百ひち「(空元気)ったくしょーがねーやな、ははは。まあ、 こっちはせいせいしてんだけどよ」 ぽぷり「そ、そんな事言ったら奥さんずっと帰ってこないわ!」 八百ひち「(やけくそ)おー、その方がずーっと嬉しいぜ」 ぽぷり「だっ、だめよそんなの! ちゃんとごめんなさい、って 謝って、あ、ママがただ謝るだけじゃダメかもって言っ てたっけ。うーんと、そう! プレゼントとかちゃんと 用意して!」 八百ひち「プレゼントぉ? はん、そんなちゃらちゃらしたもん なんてやれっかい!」 む〜のぽぷり。 ○たばこ屋前 ランドセルを背負ったぽぷり、下校してきたところ。 たばこ屋「ほっほっほ」 ぽぷり「笑い事じゃないわ。もう三日目なのよ」 たばこ屋「ぽぷりちゃん、こういう言葉があるんだよ。夫婦喧嘩 は犬も食わない、ってね」 ぽぷり「犬も食わない?」 たばこ屋店主「それくらい、つまらない事だっていう意味だよ。 なあに、じきに帰ってくるさ」 ぽぷり「でも……」 ○路地裏 店と店の間の狭い道に入ってきたぽぷり、アルデル の小瓶に種を入れる。 ぽぷり「あたしがでも何とかしなきゃいけないわ!」 小瓶を手に思案。 ぽぷり「どんな魔法だったらいいのかしら……。とにかくやって みるしかないわ! 八百ひちさんと奥さんの仲直り魔法。 マホウヨマホウヨ、ウマレテオイデ!」 ぴかっ、ぽよよん グリム「かぷちかぷち」 ぽぷり「え、グリム……? グリムがどうやったら八百ひちさん     達仲直りさせてあげられるの?」 グリム「かぷ……」 グリム、ふわふわと飛んでいく。 ぽぷり「あっ、待ってグリム!」 ○商店街 グリムが飛んでいくのをぽぷりが追っていく。 ぽぷり「どこ行くのよグリムーっ」 グリム、八百ひち内へ。 八百ひち「ん……?」 大根の上に降りたグリム── ぽぷり「!」 グリム「かーぷーちーっ!」 んごごごごごごご。巨大になっていく大根。 周囲の野菜、それにくっついて大きくなり、まるで 大根の木に成っている様になる。 八百ひち「う、うわぁ、何が起こったんだ!」 ぽぷり「なっ、何をしてるの!? グリム! ダメだってば!!」 大根が店先から大木の様に伸びていく。 商店街は騒然。 ぽぷり「どうしよぉぉぉ」 ○駅連絡通路 電車が走るのを赤ちゃんに見せている八百ひち妻。 側には妹。チラっとにこにこ銀座の方を見るが── 八百ひち妻「あ、ほーら電車だよー」 赤ちゃん「ばーぶー」 妹  「あれ? 何かにこにこ銀座の方、騒がしくない?」 八百ひち妻「え?」 にこにこ銀座側の窓に行って見る八百ひち妻── 八百ひち妻「うっ、ウチの店が!!」 八百ひちから大根巨木が伸びているのが見える。 ○八百ひち前 人々が取り巻く店前に駆けてくる八百ひち妻。 カメラ店主「おや、奥さん……」 八百ひち妻「どいとくれ! あんた!」 八百ひち「! (うろたえまくり)お、お前……」 八百ひち妻「一体これはどうしちまったんだよ」 八百ひち「さ、さっぱり判んねぇよ。急にこんなになっちまって」 脇ではぽぷりが必死に小声で ぽぷり「ぐーりーむー、早く元に戻してー(泣)」 グリム「かぷ(知らんぷり)」 と、そこへふきこが来る。 ふきこ「あらあら、どうしましたんですの?」 たばこ屋店主「おお、ふきこさん。まあご覧なさい」 ふきこ「まあ、随分立派に成長した野菜ですこと」 ぽぷり「せ、成長しすぎよ……」 ふきこ「(ぽぷりに耳打ち)ぽぷりちゃんの仕業ですわね?」 ニボシ「にゃー」 ぽぷり「ご、ごめんなさい、あたし──」 ふきこ「(大根を指し)外国ではこれくらいの南瓜は普通に売っ てますのよ。 たばこ屋「ほう、そうなんですか」 ふきこ「でもこんなに色々の立派な野菜を売ってるのは、八百ひ ちさんだけですわね」 八百ひち「立派な野菜ったって……、なあお前……」 八百ひち妻、大根の枝を齧ってみる。 八百ひち妻「(呟く)美味しいわこれ……」 八百ひち「(妻に)ど、どうしよう?」 八百ひち妻「(毅然と)あんた! 何してんだい」 八百ひち「え」 八百ひち妻「こんなに売るものがあって、こんなにお客が来てん だよ!」 八百ひち「──(はっ)」 八百ひち妻「ウチの店は何なんだい?」 八百ひち「(かーっ!)ウチは八百やの八百ひちだっ!」 八百ひち妻、よそ行きの恰好のまま前掛けをする。 八百ひち妻「さー、八百ひち名物、大きな野菜だよー! 大きく ても値段は一緒、お得だよーっ!」 八百ひち「らっしゃいらっしゃいらっしゃーい!」 人々、次々と買い物を始める。 ぽぷり「(ほっ)──良かった……」 ふきこ「(ウインク)ぽぷりちゃんもお手伝いしたらいかが?」 ぽぷり「うん! いらっしゃいいらっしゃーい!」 ─────────────────────── 一時間後。すっかり店先からは野菜が捌けた。 八百ひち「ありがとよ、ぽぷりちゃんも手伝ってくれて。すっか    り売り切れだぜ」 八百ひち妻「ウチが仕入れた野菜だもの、当たり前だろっ!?」 八百ひち妻、髪はほつれ、洋服もしわしわ。 二人、ちょっと黙ってしまう。 ぽぷり「(呟き)ああっ、せっかく仲良くなると思ったのに!」 と──、八百ひち、前掛けのポケットから包みを出 して、無言で妻に突き出す。 八百ひち妻「なんだよこれ」 八百ひち「(もじもじ)ぽぷりちゃんがな、ただ謝るだけじゃダ メだって言うからよ」 八百ひち妻「!」 受け取って、包みを開けてみると──、ハンドバッ グが入っていた。 八百ひち妻「──まあ……」 八百ひち「けどよ、そんな汚れたカッコじゃ似合わねぇなっ」 八百ひち妻「──(微笑)また、出ていく時に使うよ」 ぽぷり「えっ!」 二人、ぽぷりを見て、悪戯っぽく笑う。 ぽぷり「(安堵)──なあんだ……。ホントに犬も食わないわ!」                     つづく