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スカシユリ(交雑種)

スカシユリ
品種:‘ナボナ(Navona)’


ユリ科ユリ属(リリウム属)
学名正名:Lilium × elegans Thunb.、異名:L. maculatum var. elegans Koidz.
英名Thunberg Lily, Elegant Lily
和名スカシユリ(透百合)
別名 
花言葉 
メモ

 ユリ属の説明は、こちらをご覧下さい。
 和名は、花被片の間に隙間があって透けて見えることに因むそうです。

 江戸時代に、イワトユリ(L. maculatum)やエゾスカシユリ(L. davuricum)などが交配して出来た雑種であると考えられていて、イギリス王立園芸協会によるユリの園芸品種の分類では、アジアティック・ハイブリッドに分類されています。明治時代には、百数十品種があったそうですが、それらの中で、現存している物は十数品種程度しかないそうです。
 写真の‘ナボナ’という品種は、オランダの Vletter & Den Haan(オランダ語の他、英語もあります)が育成し、1994年に発表した品種だそうです。

 日本では、学名とそれに対応する和名が、一致していないことがあるように思われます。

 L. × elegansL. maculatum
原色日本植物図鑑・下
(?)
 スカシユリ
原色園芸植物図鑑・IV
改訂版(塚本洋太郎)
スカシユリスカシユリ
イワトユリおよびイワユリ
原色・花卉園芸大事典
(明道博・松川時晴)
スカシユリイワトユリ
花卉園芸の事典
(鈴木基夫)
スカシユリイワトユリおよびイワユリ
最新園芸大辞典
(清水基夫)
和名:スカシユリ和名:イワトユリ
園芸植物図譜
(浅山英一)
スカシユリイワトユリ、スカシユリ
園芸植物大事典
(浅野義人)
スカシユリの交雑種の総称和名:スカシユリ、別名:イワトユリ

 発行年順で、下ほど新しい。括弧内は、執筆担当者名(敬称略)

 「原色日本植物図鑑・下」には L. × elegans に関する記述はありませんでしたが、それ以外の図鑑では、L. × elegans(スカシユリ)は、交雑種の総称という点では一致しています。しかし、「園芸植物大事典」では、L. maculatum の和名に「スカシユリ」を当て、「園芸種(L. × elegans)の親の一つであり、園芸種をスカシユリと総称し、野生品をイワトユリと呼んで区別する」と説明しています。また、「原色園芸植物図鑑・IV」では、「スカシユリ(L. × elegans)の親は、イワトユリおよびイワユリで、これらにはスカシユリ(L. maculatum)の学名が与えられている」、「園芸上のスカシユリは、L. × elegans の学名を用い、自生種と区別する」と説明されています。他に、「園芸植物図譜」では、イワトユリ(L. maculatum)の説明に、「植物分類学の方では本種をスカシユリと呼んでいる」と書いてありました。
 図鑑の他、何本かあったスカシユリに関する研究論文・報告では、スカシユリの学名を「Lilium × elegans」としている物が多かったです。また、一つの論文の中で、スカシユリ系の交雑種を Lilium hybrid、イワユリを L. maculatum と、区別している事例もありました。
 以上のことと、ここで扱うスカシユリは交雑種であることから、学名は、L. × elegans としました。ご了承下さい。
 なお、研究報告によっては、学名を記載せず、単に、Asiatic hybrid としている物もありました。参考までに、日本で栽培されているアジアティック・ハイブリッドは、以下の3つの種類があるそうです。
1)エゾスカシユリとイワトユリを種として交雑して育成されたスカシユリ品種(このページで取り上げているものです)
2)第二次大戦後に育成されたもので、耐病性、高性、花が多いというような性質がある品種(例えば、‘エンチャントメント’)との交配品種群
3)ヨーロッパの品種

 生態ですが、複数の種が交雑して出来たために、品種(基となった親の種)によって異なるそうです。花芽分化については、
1)秋に花芽分化を開始し、発芽直後に完成するもの
2)冬に花芽分化を開始し、発芽して間もなく完成するもの
3)発芽前に葉原基の分化を終えており、発芽直後に分化を開始するもの
4)発芽後しばらく葉原基の分化をしてから花芽分化を開始するもの
の四つのタイプがあるそうです。営利栽培では、周年生産するために促成栽培や抑制栽培(長期低温貯蔵)が行われているそうですが、このような花芽分化の特性に応じて品種を使い分けているそうです。
 一般には、日当たりの良いところを好み、光が弱い条件下では、花が発育停止すると言われています。人工的な栽培環境下でも、栽培が容易いそうです。


参考文献
  • 北村四郎ら.原色植物図鑑(下).保育社.1964年.

  • 塚本洋太郎.原色園芸植物図鑑〔IV〕・改訂版.保育社.1972年.

  • 塚本洋太郎監修.原色・花卉園芸大事典.養賢堂.1984年.

  • 阿部定夫ら編集.花卉園芸の事典.朝倉書店.1986年.

  • 浅野義人.ユリ類・栽培の基礎・原産と来歴.農業技術大系・花卉編10.シクラメン/球根類:467−470、517−524.?年.

  • 大川 清.スカシユリ系交雑品種の凍結貯蔵.(第1報)茎軸の伸長開始期と花芽分化期について.園芸学会研究発表要旨.昭和59年秋季大会:294−295.1984年.

コメント

 球根の植え付けは2001年9月下旬、出芽は2002年3月中旬、最初の開花は同年6月上旬です。個人的な感想ですが、オリエンタル・ハイブリッドより育て易く、栽培で気を使ったことは、アブラムシ対策以外は、特にありませんでした。もっとも、アブラムシ対策をしたと言ってもオルトランを撒く程度でしたし、撒くまでもなくアブラムシは着きませんでしたけど。ユリの栽培の場合、アブラムシ対策は、着いた後より着く前の予防をするべきですけど、まぁ、気休めです(^^ゞ

 サカタのタネの通販で購入したものです。前述の通り、オランダで育成された品種だそうですが、‘ナボナ’と言ったら、王貞治ダイエー監督が巨人の選手だった頃に、CMに出演していたお菓子の「ナボナ」(亀屋万年堂)を思い出してしまうのは、私だけでしょうか?(笑)。「ナボナはお菓子のホームラン王です。」なんて、ずいぶん古い話ですね。歳がばれそうです( ̄▽ ̄ゞ。亀屋万年堂のウェブサイトを見てみたら、未だに(?)王監督がイメージキャラクターをされていることを知りました(^^;。仙台ではCMを見かけませんが(民放はあまり見ないこともありますが(^^;)、関東圏では今でも放送しているのでしょうか?

 今回も、学名を調べるのに手間取ってしまいました。しかも、それだけに時間を費やして、他のことが疎かになっていまいました(--;。色々と調べていて、頻繁に引用されていた「日本のユリ−原種とその園芸種」(清水基夫編著、誠文堂新光社、1987年)が手に入れば良かったのですが、残念ながら身近にはありませんでした。幸い、「最新園芸大辞典」のユリ属の解説を書かれたのが清水氏で、発行年も近いので、おそらく、「日本のユリ」でも学名と和名は同じように説明されているものと思われます。Web上では、 L. maculatum とする、小学館の「園芸植物大事典」派が圧倒的に優勢でした。それに従っていたら、このページを作るのに、さほど時間がかかることはなかったのですが。今後、「園芸植物事典」派が、研究報告などでも多く見られるようになったら、学名・和名・別名の記述を変えるかもしれません。(2003.1.18.)

もう一言(2003.6.28.)
 今年も咲きました。鉢に植えっぱなしにしていましたが、3月中旬頃に芽が出て、6月中旬に最初の花が咲きました。今年は下葉に病斑が出てしまって、今後健全に育つか心配です。

 
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