このページ内の文章・画像の転載を禁止します


オミナエシ

オミナエシオミナエシ
オミナエシ
左上:茎の上位の葉。左下:茎の基部の葉。


オミナエシ科パトリニア属(オミナエシ属)
学名正名:Patrinia scabiosifolia Fisch. ex Trevir.
英名Dahurian patrinia
和名オミナエシ(女郎花)
別名アワバナ(粟花)、オミナメシ
花言葉美人、親切、忍耐
利用部
利用法 
薬効消炎、排膿、利尿、浮腫の治療、血液の循環の改善
メモ

 パトリニア属の解説は、こちらを御覧下さい。
 種形容語(種小名)のスペルについて、「園芸植物大事典」(1988年)、「日本花名鑑」(2001年)、「花卉品種名鑑」(2002年)では scabiosifolia、それより前に発刊された図鑑では scabiosaefolia となっています。scabiosifolia は、「国際植物命名規約(東京規約)」の以下に従ったものだと思います。

  • 第60条8.
     形容詞である形容語についての勧告60Gに反する合成形を使用することは訂正されるべき誤りとして扱われる。
     実例11.Candolle(1824)の Pereskiaopuntiaeflora” は P. opuntiiflora と引用すべきである。(以下略)(注意:赤字は目立たせるために私が色を変えたもので、オリジナルは他の文字と同じ色です。)

     
  • 勧告60G(一部のみの引用です).
     ギリシャ語またはラテン語の単語に由来する2個以上の要素が結びついた学名または形容語は、実行可能な限り、古典的な用法に従って合成されるべきである。

 そこで、このサイトでも、scabiosifolia を採用しました。なお、命名者名は「園芸植物大事典」に従いました。
 和名のオミナエシは、オトコエシに対して女性的なイメージがあることから付いたそうで、日本の古典では、女性に関わる歌や物語に取り上げられているそうです。山上憶良(660〜733年?)が詠み、万葉集(759年?成立)に入集された秋の七草の歌にも登場します。「をみなへし」に「女郎花」という漢字が当てられるようになったのは、延喜年間(901〜923年)の頃と考えられているそうです。「万葉植物事典」によると、漢字表記は、他に、佳人部為、美人部思、姫部志、姫押、娘部四、その他があるそうです。オミナエシの「オミナ(をみな)」は「若い女性、女性、美人」のことです。「エシ」の語源は、「飯(メシ;黄色い花を昔の食糧であったアワ[粟]に例えた)」であるとか、「減し(へし;花が美しいので、女性の美しさを減す。美女より美しさに勝る)」であるとかと言われているようですが、はっきりしたことはわかっていないそうです。別名のアワバナは、花をアワ[粟]に例えたそうです。
 日本、朝鮮、中国に分布しているそうです。

オミナエシの小花

 耐寒性がある多年草です。葉は対生していて、茎の基部に近い葉は卵形か長楕円形で縁は円鋸歯状、長い葉柄があります(上の写真左下)。茎の上位の葉は、種形容語(種小名)「Scabiosa(スカビオサ属)folia(葉)」の通りスカビオサ属の葉に似て、深い切れ込みが入った羽状になっています(上の写真左上)。花序型は散房花序です。小花は合弁で花冠は5裂していて、色は黄色、雄しべは4本、雌しべは1本です(左の写真)。子房は下位で、3室あるうちの1室に種子ができます。

 園芸品種として、‘大久保’、‘飛鳥’、‘黄冠’などがあるそうです。また、品種(ここで言う品種は、園芸品種[cultivar; cv.]ではなく、分類階級で変種の下のランクの品種[forma; f.])として、タマガワオミナエシ(f. compacta hort.)、フイリオミナエシ(f. foliis-marginata hort.)、ハヤザキオミナエシ(f. praecox hort.)があるそうです。この他、変種(variety; var.)のハマオミナエシ(var. crassa Masam. et Satomi )があるそうです。

 栽培に関して、繁殖は、株分けか実生かによります。株分けは、梅雨入りした頃に行うと良いそうです。秋にも出来るそうですが、翌年の芽立ちが悪くなるそうです。播種は春に行います。この場合、開花は翌年になりますが、これには幼若性が関わっていると考えられています。水捌けと日当たりが良い場所を好みます。良い品質の花を咲かせるためには、栄養成長が活発に成りすぎないように、やせた土壌で栽培すると良いそうです。

 根を乾燥させたものを利尿や浮腫の治療に用いたり、若芽や葉を茹でて食べることが出来るそうです。漢方では、根、もしくは、全草を「敗醤(はいしょう)」と称するそうですが、敗醤は、厳密には、オトコエシのことだそうです。薬効との関連は不明ですが、根、根茎、種子から色々な種類のトリテルペノイドグリコシドが見つかっているそうです。


本棚以外の参考文献
  • CRC World Dictionary of PLANT NAMES -Common names, scientific names, eponyms, synonyms, and etymology. CRC Press. 2000.(英名)

  • 大橋広好訳.国際植物命名規約(東京規約)1994.津村研究所.1997年.

  • 北村四郎.オミナエシ.世界の植物.193〜194ページ.朝日新聞社.1975年.

  • Nakanishi, T., et al. Phytochemical studies of seeds of medicinal plants: III. Ursolic acid and oleanolic acid glycosides from seeds of Patrinia scabiosaefolia Fischer. Chemical & Pharmaceutical Bulletin. 41: 183-186. 1993.

コメント

 播種は2002年の4月下旬、発芽はそのおよそ2週間後、最初の開花は2003年の7月中旬です。昨年と今年も咲いています。冬の間は、無加温の温室内で育てています。
 秋の七草の割に、咲き始めは夏です。今年は、キキョウと一緒に写真を撮って「秋の七草(マイナス五草)」として花リレーで紹介しましたが(8月27日〜9月9日)、キキョウも咲き始めるのは6月からで、今はほぼ咲き終わっています。今は育てていませんが、カワラナデシコも6月に咲いていました。私の身の回りにある秋の七草は、他にハギがありますが、今年は9月に入ってから咲き始めました。咲く時期が夏だったり秋だったりで、秋の七草って、結構いい加減です(^^;。それとも、山上憶良の時代と違って、現代は温暖化の影響があるんでしょうかね? 花芽形成には温度よりも日の長さの方が影響が大きいですが。
 誕生花は、本によって悉く異なりますが、私の誕生花の一つらしいです。香りが良いとは思えないので、贈られてもちょっと困っちゃうかもしれません( ̄▽ ̄ゞ。でも、切り花としての需要があるそうです。(2005.9.5.)

 
HOME   植物名一覧

このページ内の文章・画像の転載を禁止します