2002年シーズン後のアンケート調査の結果をまとめ、秋の日本アレルギー学会で報告いたします。

花粉症対策と花粉症情報活用に関する電子アンケート調査

◯宇井直也、遠藤朝彦、野原 修、佐橋紀男、本田 靖、今井 透
1)慈恵医大耳鼻科、2)東邦大学薬学部、3)筑波大体育学部、4)聖路加国際病院耳鼻科、
  
【はじめに】花粉症対策には花粉情報や医療情報を入手して、飛散時期に応じて適した対応が求められる。平成14年春の花粉情報活用について、インターネット上で電子アンケート調査した。
【方法と結果】平成14年4月8日より24日まで、慈恵医大耳鼻科HPとNPO花粉情報協会HPでアンケート調査を行った。質問項目は患者背景と共に、行った対策法、薬剤の使用状況、今シーズンの満足度などである。さらに花粉症情報の入手経路やそれらの有用性を加えた。
【結果】男性232名、女性175名の計407名が回答し、30才代221名、40才代106名と花粉症好発年齢であった。関東甲信越地方に住むものが368名(90.4%)と大多数を占め、今年の住居地での花粉飛散数も389名(95.6%)が平年以上と回答した。行った花粉症対策は花粉情報入手343名(84.3%)、グッズによる花粉回避334名(82.1%)が多く、次に病院からの内服薬266名(65.4%)、外出や屋内持ち込みでの花粉回避230名(56.5%)が続いた。病院からの薬を継続したのは発症前から受診した患者の方が、発症後受診した患者より高かった。今シーズン全体の症状の満足度は298名(73.2%)が普通以上で、QOLの満足度は276名(67.8%)が普通以上と大量飛散年としては良い結果が得られたと考えられた。花粉症に関する情報入手はインターネット・携帯電話が357名と高く、TV・ラジオが91名、新聞・雑誌が44名であった。
【まとめ】花粉症に関する情報を積極的に入手することで、適切な花粉回避や薬物療法を継続でき、発症予防やQOLの改善につながるものと推測された。


PPnetのリアルタイム花粉情報についての結果をまとめ、秋の日本アレルギー学会で報告いたします。

スギ・ヒノキ花粉自動計測のリアルタイム情報提供の試み

◯今井 透、石井彩子1)、遠藤朝彦、野原 修2)、安枝 浩3)、横山敏孝4)斎藤央嗣5)、深谷修司6)
1)聖路加国際病院、2)慈恵医大、3)国立相模原病院、4)森林総合研、5)神奈川県自然環境保護センター、6)ゼフィールKK  
【はじめに】飛散花粉観測に自動計測器は省力化と共に、迅速性などの多くの利点が確認されている。平成14年春に一般の花粉症患者向けに、インターネットで4カ所のリアルタイム情報を提供する試みを行った。
【方法】東京都中央区と八王子市(高尾)、神奈川県相模原市と丹沢の4カ所で、花粉自動計測器(KH-3000)を用いてスギ・ヒノキ様の花粉を計測した。計測方法は半導体レーザー光線による光散乱法を用いた。60分ごとに計測した飛散数をグラフ表示すると共に、3時間前からの飛散観測数を前日の同時間帯の値と共に表示し、体感に訴えた。さらに地図上で風向きのリアルタイム情報も参照でき、患者自身での注意に役立てた。シーズン後に電子アンケート調査を行い、その活用度を確認した。
【結果】昨年までと同様に、多摩地方から都心に花粉が飛散されている様子が見られ、特に患者数の多い都心での花粉回避に役立つ可能性が推測された。ただし例年とは異なり、都心の方が多摩地方より花粉飛散数を示す場合もあり、花粉の発生源は多地点であることが推測された。インタ-ネットでのアクセス数は3月中旬には3万件/日を越し、シーズンを通しては100万件を越えた。405名のアンケート回答者のうち、135名は「時々見て参考」にし、188名は「ほぼ毎日確認」したと回答した。
【まとめ】花粉症対策に飛散花粉のリアルタイム情報は有効で、将来性が高いと推測された。観測地点が増加すれば、より精確な情報入手が予測され、活用する患者数も増加することが期待でき、生活の質の向上や医療費の削減につながると考えられる。