ポートレートセミナー
7、はじめの絞り
登場人物
:達夫・・・撮影歴10年以上のベテラン
:初(はじめ)・・撮影歴数カ月の初心者
達夫:今回は絞りについてだね。絞りは何の為に付いているか分かるかな?
初: まずは明るさを調整する為だよね。あとはボケも変わるよね。
達夫:本来の目的は露出制御の為なんだろうがね。でも結果として被写界深度も変化していくんだね。ポートレートで開放F値が明るいのが選ばれるのは、ボケがいいからだよ。
初:85mmならF1.4あたりがいいんだね。
達夫:そうそう、同じ焦点距離のレンズなら開放F値が大きい方がいい。それと絞りの形状も選ぶ時のポイントにしたいね。
初:えっ、絞りの形状って?みんな同じじゃないの。
達夫:絞りは数枚で構成されているんだ。少なくて5枚かな。普通は6〜7枚位なんだ。多い方が円形に近くなるから、好ましいんだ。ミノルタやニコンのレンズの一部には、開放近くでは円形になる様に作られているから、こういうのを選べばいい。
初:円形だと何故いいの?
達夫:開放絞りでは口径食と言って、画面の端のボケがラグビーボールみたいな形になってしまうんだ。
初:で、ラグビーボールを防ぐにはどうするの?
達夫:1段から2段絞れば口径食は減るんだ。でも絞ると、絞りの形がボケの形になってしまうんだ。絞りが6枚だと6角のボケになってしまうんだよ。
初:そうか、それで絞りが円形だと絞ってもボケが丸くなるんだね。
達夫:レンズを選ぶ時に参考にしてね。キャノンには円形は無いがね。それと勘違いしやすいのが被写界深度と背景のボケはイコールでは無いんだよ。被写界深度が浅いから、ボケが大きくなるんじゃないんだ。
初:えっ、それってどういう意味?絞りを開ければ被写界深度が浅くなり、ボケも大きくなるんじゃないの。
達夫:同じレンズならそういう事になるね。問題は焦点距離だよ。じゃあ例えを出してみよう。300mmF2.8と50mmF2.8で全身のポートレートを撮ったら、どっちが被写界深度が浅いかな?
初:そりゃ300mmだろう。300mmの方がボケも大きいしね。
達夫:確かに300mmはボケが大きい。でも被写界深度は同じなんだ。
初:えっ、うそだ〜。300mmの方が浅いんじゃないの?
達夫:それじゃあもう一度被写界深度について復習しよう。絞りの値に正比例するんだ。F2からF4だと被写界深度は2倍になる。
焦点距離の2乗に反比例する。50mmから100mmだと1/4になる。
撮影距離の2乗に正比例する。1mから2mだと4倍になる。
これを見れば分かるが、撮影倍率が同じならば被写界深度は同じになるんだよ。後は絞り値が問題になる。
初:分かった様な、分からない様な。じゃあ何故被写界深度が同じなのに、ボケが違うんだい?
達夫:望遠だとボケが拡大されるんだ。焦点距離が2倍になれば、拡大率が2倍になるからボケも2倍になる。
初:だから300mmだとボケが大きいんだ。
達夫:それじゃあボケを大きくするにはどうすればいいか分かるかな?
初:まず望遠を使う。それと絞りを開放近くにする。
達夫:他にも有るよ。
初:う〜ん・・・。何だろう。
達夫:撮影距離を短くするんだよ。前に言った事を理解出来ていれば簡単なんだがね。
初:よく復習しておきます。
達夫:これは実際に確かめながら撮った方が理解が早いだろう。
でもポートレートだからっていつも絞り開放では駄目だよ。背景を生かすには、絞り込まなくては。
次回は焦点距離についてだね。