ポートレートセミナー

11、はじめのモノクロ

登場人物

達夫・・・撮影歴10年以上のベテラン

(はじめ)・・撮影歴数カ月の初心者

達夫:今回は白黒の話しだね。初は白黒を撮った事は有るのかな?

: いや、無いよ。

達夫:どの程度の知識なのかな。

: 最近写るんですでも白黒が有るって話しだね。セピアなんて言うのも有るし。普通の白黒は分からないね。

達夫:あのセピアって言うのは、基本的にはカラーネガと同じ原理なんだよ。現像もカラー現像しているし。他にもXP2やT-MAX400CNなんて言うのも有るし。

: 最初に白黒をやるなら、そういうのから入るのも手だね。

達夫:手軽に楽しみたいなら、一番いいと思うよ。

:普通の白黒と比べて、どう違うのかな?

達夫:特性としては、カラーネガと同じだね。カラーネガは銀粒子が無いので、非常に粒状性が細かいんだよ。だからポートレートなんかには向いているよ。

:露出に関してはどうなのかな?

達夫:普通の白黒ネガの場合、露出はアンダーがいいとされているんだ。その方が粒子も細かいしね。XP2等はオーバー気味がいい。感度400なら200くらいで撮るのがいいね。おまけにラチチュードが広いんだ。普通の白黒は、オーバーにするとがちがちにコントラストが高くなってしまう。しかしXP2などなら、オーバーになってもコントラストが高くはならない。カラーネガもオーバーに撮っても、コントラストは高くはならないよね。それと同じなんだ。

: カラーネガのいい所を上手く引き継いでいるんだね。何か欠点は無いのかな?

達夫:まずは当たり前だが、アンダーには弱い。粒子も粗くなるし、コントラストも低くなってしまう。あとは現像料金が高い事かな。普通の白黒は自分で出来るから、凄く安く出来る。1本数十円で出来るよ。

: それなら場合に寄って使い分ければいいんだね。

達夫:うん、そうなんだが、本格的に白黒をやる場合には、ちょっとやっかいな事も有るんだよ。

:やっかいって何かな?

達夫:これやった事のない人には分かりにくいだろうが、ネガの見た目の濃度が違うんだ。普通の白黒フィルムは、一番濃い所は透かして見た時に向こう側が透けて見えない。でもXP2は、向こう側が透けて見えてしまう。透けているからとプリントの露光量を押さえると、全然光量が足りなくて、像が現れない。これから推測すると、普通のネガは濃度でプリントの明暗を付ける。しかしXP2はネガの色の濃さで明暗を付ける。

: ちょっと意味が分かりにくい。両方ともネガに明暗は付いている訳でしょう?

達夫:そうだね。それじゃ暗室ってどんな感じか知っているかな?

: なんか赤いランプが付いていて、怪しい感じだよね。

達夫:その赤いランプは何の為か知っているかな?

: 作業をする時に、見やすくする為でしょう?

達夫:そりゃそうだね。真っ暗闇じゃやりにくい。それじゃ何故赤なんだか分かるかな?

:う〜ん、何故だろう。考えた事無かったな。

達夫:これは赤い光には印画紙が感じない為なんだ。逆に青い光には感じる。ネガの色も青っぽいでしょう?引き伸ばし機だって白黒用は青っぽい光なんだ。何故赤い光になったかは、多分赤の方が作業がしやすい為だろう。このライトをセーフライト、又は安全光と言うんだ。

: 赤いライトの理由は分かったが、XP2とどういう関係があるんだい?

達夫:いい所に気が付いたね。XP2は普通の白黒フィルムに比べてわずかに赤みがかっている。このわずかな差がプリントに影響を与えているんだろう。

: そうなんだ。それじゃ最初に使うフィルムは何がいいのかな?

達夫:そうだね、本格的に自分でプリントをやるなら、普通の白黒の方がいいね。気楽に白黒を楽しんで、自分でプリントをやらないなら、XP2でいいんじゃないかな。

: でもポートレートにはXP2が向いているんだよね。どっちか迷うね。

達夫:白黒は撮影からプリントまで一貫した考え方でやらないと駄目なんだ。例えばハイキーにするなら、露出はオーバー気味にしないと駄目だしね。プリントだけでは、カバーしきれない。最初にどう撮るかを決めて、その考え方に沿ってフィルムを選択して、露出を決め、現像して、プリントの印画紙の号数も決める。その為には現像からプリントまでを自分でやるのが一番なんだよ。

:印画紙の号数って何なのかな?

達夫:白黒の印画紙は、何種類かのコントラストを選べる様になっているんだよ。例えば2号が標準だとすると、3号が硬調、4号が更に硬調となるんだ。

:何故コントラストを選べるのかな?

達夫:白黒の場合、このコントラストが命なんだ。色が付いていない分、グラデーションが大切になる。明るい部分から暗い部分にかけての豊かな階調が、白黒の美しさなんだよ。自然の風景やポートレートには、特に必要だ。逆に都会的な風景には、高コントラストの方がいいと言う場合も有るしね。自分の意図に合ったコントラストに出来ないと、自分でやる意味がないしね。

: コントラストが大事とは、気が付かなかったな。

達夫:プリントの基本は、白は白く、黒は黒く、その中間をいかに上手く表現するかだね。一番難しいのは、この中間の階調をどうするかだね。

:それじゃその中間調を上手く表現する為には、どうすればいいのかな?

達夫:適切な露出や現像、それに適当な号数の印画紙を選ぶ事だね。前にも言ったが、XP2はラチチュードが広い為に、多少露出でミスっても中間調を出しやすいんだがね。

: やっぱり初心者には、XP2がいいんじゃないのかな?

達夫:これはカラーネガと一緒だね。普通の白黒は、リバーサルみたいにラチチュードが狭いと考えた方がいいね。本格的にやるには、やはり普通の白黒の方がいいよ。次回は白黒の撮影法について話そう。


    


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