ポートレートセミナー

12、はじめのモノクロ撮影

登場人物

達夫・・・撮影歴10年以上のベテラン

(はじめ)・・撮影歴数カ月の初心者

達夫:今回は白黒撮影だね。

: 白黒を撮るのは始めてなんだが、どんな事に注意するのかな?

達夫:一番注意するのはやはり色が無い事だね。

: ちょっとピンと来ないな。

達夫:赤も青も緑も濃さの違いは有るが、みんなグレーになってしまう。例えばポートレートなら肌はグレーに、唇は濃いグレーになる。だからカラーとはまったく違う感じになるんだ。

: と言う事は結果が予測し辛いんだね。

達夫:これは経験を踏むしか無いだろうね。

:パソコンを持っている人なら、パソコンに取り込んでPhotoshop等でモノクロにしてみると分かり安いんじゃないかな?

達夫:それはいい考えだね。

それじゃぁ実際の撮影のテクニックを紹介しよう。白黒で大切なのは、露出とフィルターの使い方だね。

: フィルターってあのUVとかの?

達夫:もちろんUVも白黒で使うが、オレンジや赤、緑等がよく使われるんだ。

:どういう風に使うのかな?

達夫:フィルターの使い方を知るには、まず色について知らないと駄目だね。

: 色なら知っているよ。赤とか青とか。

達夫:それじゃ色の三原色や光の三原色って知っているかな?

:光の三原色は、確か赤、青、緑だったよね。色の三原色って何なの?

達夫:色の事って知っている様で知らないんだね。光の三原色は、赤、緑、青でRGBで表現される。これは発光体の三原色だ。3つの色を合わせると白になる。テレビやパソコンのディスプレイもやはりRGBで表示している。

色の三原色は反射光の三原色で、シアン、マゼンダ、イエローでCMYで表現される。3つ合わせると、理論的に黒になる。印刷の時に使うのは、色の三原色だよ。

: シアンやマゼンダってあまり聞かない色だね。

達夫:そうだね。この光と色の三原色には、それぞれ関係が有るんだな。

: どんな関係?三角関係とか。(^^;)

達夫:おいおい、男と女じゃないんだから。でも確かに三角形の関係になってはいるがね。まず正六角形を書いてみよう。例えば一番上が赤なら右下が緑、左下が青になる。それぞれを結ぶと三角形になる。

:やっぱり三角関係だ。

達夫:それじゃ今書いた六角形の右上は何色か分かるかな?

: それってどういう意味?

達夫:赤と緑を混ぜると何色になるかな?

: ちょっと分からないな。

達夫:イエローになる。それじゃ緑と青は何色かな?

: やっぱり分からない。

達夫:シアンだよ。じゃぁ赤と青は?

:もしかしてマゼンダ?

達夫:その通り。それじゃ補色や反対色って知っているかな?

: 聞いた事無いな。

達夫:今書いた六角形の反対側になるのが、補色又は反対色になるんだ。それじゃ赤の反対色は何色かな?

: シアンだね。

達夫:青の反対色はイエロー、緑の反対色はマゼンダだね。晴れた日に芝生などの反射が強くて緑がかる時は、マゼンダを使うと有効なんだ。

: 色って案外難しいね。

達夫:まだ有るんだ。光には波長が有る。大まかに言うと青、緑、赤の順に波長が長くなる。フィルターとは、ある特定の波長をカットしているんだ。

:ふ〜ん。でも前の六角形とどういう関係が有るのかな?

達夫:例えば青の反対色は何だったかな?

: イエローだね。

達夫:フィルターである色をカットすると、反対色になる。青をカットすると、イエローになるんだ。それじゃ青と緑をカットすると何色かな?

: 青と緑を足すとシアンだから、その反対色は赤だね。

達夫:そこまで分かると完璧だね。

白黒では主にシャープカットフィルターを使う。これは短い波長をカットするんだ。フジではSCと書いてある。60とか書いてあるのは波長で、600nm(ナノメータ)の意味だよ。

:このフィルターは、どういう効果が有るのかな?

達夫:SCフィルターは大まかに言うと、イエロー、オレンジ、赤が有る。イエローから順番にコントラストが高くなるんだ。例えば風景で青空を暗くして、雲を白くしたい時に有効だ。

: SCの他には、どんなのが有るのかな?

達夫:BPフィルターが有る。これはある特定の波長だけ通すんだ。一般的には緑フィルターがBPだね。

: BPはどういう時に使うのかな?

達夫:これはポートレートで肌を飛ばさずに、肌の質感を出したい時に使うんだ。肌の部分だけ少し暗めになるよ。ケンコーではPO-0やPO-1と言う名前で出ている。0が弱く、1が強い効果が有る。

:ふ〜ん。覚える事がいっぱいあるね。

達夫:フィルターは、ある特定の色の露出補正をしていると思えばいいんだ。カットすればアンダーになるし、通過している所は明るくなる。

今度は露出について話そう。まずはフィルムの特性を知らないといけないね。前に話したXP2とかは基本的にカラーネガと同じだから、区別して考えないと。

: カラーネガと白黒ネガとはどう違うのかな?

達夫:カラーネガは色素で構成されていて、銀粒子が無いんだ。普通の白黒ネガは、銀粒子で構成されている。カラーネガはオーバー気味がいいと前に話したよね。

: 普通の白黒は、オーバーじゃ駄目なの?

達夫:オーバーになると銀粒子が粗くなって、コントラストも高くなるんだ。だからと言って、アンダーにするとコントラストが低くなって、プリントし辛いネガになってしまう。

: じゃぁどうすればいいの?

達夫:シャドウ部重点で露出をするんだ。シャドウ部を測って、そこをどの程度の濃度でプリントしたいかで決める。完全に黒にするなら5段アンダーでもいいが、質感を出したいなら2、3段アンダーにすればいいね。

: ポートレートなら髪の毛の部分だね。

達夫:髪の毛がアンダーになると、平面的で質感がまるで無くなってしまう。髪の毛には光っている部分が無いと駄目なんだ。ポートレートに限って言えば、少しオーバー気味の方がプリントはしやすいよ。アンダーでネガに残っていない部分は、どうやってもプリント出来ないからね。

: プリントしやすいネガ作りも大切なんだね。

達夫:そうなんだ。白黒は、撮影、現像、プリントの3つの作業に分けられるが、全部が一体となっていないといけないんだ。例えばハイキーにしたいなら、最初から露出をオーバー気味にして、現像も現像時間を長めにした方がハイキーにしやすいからね。

: それじゃ露出は現像の事も考えてやらないと駄目なんだね。

達夫:自分にとっての適正露出は、自分なりの現像を確立していないと駄目なんだ。安定した現像をしないと、露出が一定でもネガの濃度がバラバラになってしまう。

:白黒は結構難しいんだね。

達夫:リバーサルだと撮影時に殆ど決まってしまうが、白黒だと現像も大切なんだね。

: それじゃXP2とかの場合はどうなの?

達夫:カラーネガと一緒で、ある一定の範囲ならコントラストは殆ど変わらないんだ。オーバー気味に撮っていれば、そんなに露出はシビアーでは無いよ。オーバーの方が粒子が細かくなるし。

: 初心者にはXP2の方が楽なんだね。

達夫:普通のミニラボで現像もカラーのが使えるし、カラーペーパーを使えるから、自分でプリントしないで気楽に白黒を楽しみたい人には向いているね。でも本格的に白黒をやりたい人は、最初から普通の白黒ネガを使った方がいいね。次回は現像について話をしよう。


    


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