ポートレートセミナー

14:はじめのモノクロプリント

登場人物

達夫・・・撮影歴10年以上のベテラン

(はじめ)・・撮影歴数カ月の初心者

達夫:今回はモノクロプリントだね。

: プリントをするには何を準備すればいいのかな?

達夫:まずは引伸し機だね。それとイーゼルマスク、セーフライト、バット3枚、ピンセット3つは最低必要だね。それと現像液、停止液、定着液も必要だ。

: イーゼルマスクって?

達夫:印画紙を固定する為の物だね。これで縁の白い部分の大きさを変えるんだ。

:セーフライトは?

達夫:安全光とも呼ぶ。普通の光では印画紙に光が被ってしまい、黒くなってしまう。

:被る(かぶる)って難しい言葉だね。

達夫:引伸し機からの光以外の余計な光に反応してしまい、黒くなってしまう事を「被る」って言うんだ。
印画紙は、ある特定の色にだけ反応する様に出来ている。青い光に反応して、赤い光には反応しない。だから赤いセーフライトでは、被る心配が無いんだ。

: 何故赤なの?

達夫:赤の方が暗い中でも見やすく、作業がし易いからだね。これは印画紙メーカーの指定の物を使った方がいいね。

: 他に必要な物って何かな?

達夫:まずは暗室用の時計、引き伸ばしタイマー、恒温器、水洗い用のバットかな。

: 時計は何に使うの?

達夫:現像や停止や定着は、指定の時間が有るんで、 時計で指定の時間を測るんだ。ピピタイマーみたいに、時間になると音で知らせてくれる物がいいね。

:引き伸ばしタイマーって時計なの?

達夫:これは引伸し機の点灯している時間をコントロールするんだ。手でオン、オフしてもいいんだが、正確にやるにはタイマーがいいよ。

: 恒温器は温度を一定にするんだね。

達夫:特に現像液や定着液は指定の温度にした方がいいね。液温が低いと能力が落ちてしまうんで、効率が悪い。

:液温は 何度にするの?

達夫:20度だよ。多少高いのは構わないが、低い場合は上げる必要が有る。

次は号数について解説しよう。

:号数ってコントラストの事かな?

達夫:そうだね。普通は2号、3号、4号の3種類有る。2号が軟調でコントラストが低く、4号が硬調でコントラストが高い。普通は3号を基準にプリントするといいね。
ネガが濃い時に2号を使い、薄い時は4号を使う。

: 濃い薄いって、どういう基準で決めたらいいのかな?

達夫:大まかな目安は、ネガの一番濃い部分を透かして見て、やっと透けて見えるくらいがいいかな。実際にプリントして、自分の求めているコントラストがどのくらいかを確認しないと分からないかな。

: やっぱりやってみなけりゃ分からないか。
まず何から始めるのかな?

達夫:まずベタ焼きからだね。コンタクトプリントとも言う。

: これは何の為にやるの?

達夫:これはプリントするコマを選ぶ為にするんだ。

:確かにネガだと確認しづらいからね。

達夫:やり方は六切りか四切りの印画紙の上にフィルムを置いて、引伸し機の光を当てればいい。無反射ガラスをフィルムの上に置くか、コンタクトプリンターを使った方がいい。何枚かプリントするなら、コンタクトプリンターの方がいいね。

印画紙の号数は、2号を使った方がいいね。軟調の方がネガの情報が多くなるからね。

: そうか、ネガにある像がより多く分かる方がいいんだね。

達夫:号数なんだが、最近号数をフィルターで変えられる印画紙が有るんだ。マルチグレードやマルチコントラストと言う。例えば0号から5号まで変えられる。これだと一種類の印画紙を買えばいいから、経済的なんだ。号数も増えているから、濃いネガや薄いネガにも対応し易いし、微調整もし易い。それに特殊な使いこなしも出来るし。

: 特殊って?

達夫:それは後で教えよう。ベタ焼きもマルチグレードを使うなら0号や1号を使ってもいいね。

とりあえずコンタクトプリントをやってみよう。
現像液、停止液、定着液を作ってバットに入れる。
引伸し機にレンズをセットし、絞りを決める。普通はf5.6でいい。
レバーでランプハウスの高さを調節し、印画紙の大きさに合わせる。
コンタクトプリンターにフィルム、印画紙をセットし、露光する。
印画紙を現像、停止、定着液に順番に入れて、最後に水洗いする。

: この中からプリントするコマを選ぶんだね。

達夫:そうだね。フィルムでチェックするより、ベタ焼きの方がピンとにしても、露出にしても分かりやすい。プリントするコマが決まったらメモしておくといいね。プリントのデータも取っておくと、後で役にたつよ。

:撮影時のデータより大切なのかな?

達夫:プリントは条件が同じだからね。ネガが同じなら、同じ号数や露光時間なら同じプリントが作りやすい。

露光時間なんだが、普通は1秒、2秒、3秒ってやってしまうが、これでは駄目なんだ。

: えっ、何故いけないの?

達夫:1秒、2秒ときたら、4秒にするんだ。要するに同じ倍数系列でやるのが理想的なんだ。

だから絞り系列でやるとちょうどいい。
1、1.4、2、2.8、4、5.6、8、11、16秒とすると、全部1.4倍の系列になるだろう?

: 1秒の次は1.5秒にしたくなってしまうね。

達夫:1.5の1.5倍は2.25になるだろう?それを2秒でやると、変化が一定にならないんだ。変化を一定にする事は、以外と大切なんだよ。

: それじゃあ、その中間はどうするの?

達夫:絞り系列には、1/2段と1/3段が有るが、1/3段を使うといいね。更に一覧表を作るとなおいい。

1 1.1 1.2 1.4 1.6 1.8 2

2 2.2 2.5 2.8 3.2 3.6 4

4・・・・

と言った具合にね。

: これが有ると便利だね。

達夫:それじゃプリントをやってみよう。ネガの埃をブロアーで飛ばし、ネガキャリアにセットする。ランプを点灯してピントをチェックする。この時にフォーカシングルーペが有ると、より正確なピント合わせが出来る。

印画紙を小さく切ってテストプリントをする。露光の基準が分からない時は、何段階か分割露光してもいい。

: 露光が終わったら、現像、停止、定着、水洗いでいいんだね。

達夫:定着はフィルムの時も言ったが、2浴定着した方がいい。新液を2次定着液にして、古い液を1次定着液にする。

水洗いは明るい所でやるから、この時にプリントをチェックしてもいいね。

: いいプリントの基準て何かな?

達夫:まず白は白く、黒は黒く、中間調も表現されていれば理想的かな。写真を見ると分かるが、白が白く、黒も黒くなっているでしょう。肌色も薄いグレーになっている。これが大事なんだな。肌が真っ白になってしまう様では、豊かな階調とは呼べないんだ。

プリントデータ:露光2.8秒、ILFORD MG 3.5号
(MGは、マルチグレードの意味)

:ちょっと難しいね。

達夫:やっぱり経験を重ねるのが一番だね。

これは印画紙にILFORD(イルフォード)のMULTIGRADEを使っている。フィルターを変えるだけで号数を1/2号単位で変えられる。これで裏技を使えるんだよ。

:便利な印画紙だね。裏技は後で見せてもらえるのかな。

次の写真は明るさが違うね。

達夫:この写真は露光量が違うんだ。

左、露光1.6秒、MG3号   右、露光2.5秒、MG3号

: あんまり露光量が違わないのに、明るさが随分違うね。

達夫:かなり微妙なもんなんだよ。

この写真は、ちょっとしたテクニックを使っている。何だか分かるかな?

露光1.4秒、MG1号プラス露光7秒、MG4号、フォギーA

: なんかソフトフォーカスが掛かっているね。もしかしてプリントの時にやったのかな?

達夫:フォギーフィルターを使っている。これにより、黒が滲んでいるんだよね。ソフトは明るい所が滲むんだが、ネガでは薄い部分、つまりプリントで黒い部分が滲む。

使いこなしとしては、コントラストが落ちるので、号数の高い印画紙を使う。又全部の露光中に掛けてしまうとソフトが掛かりすぎるので、分割するといいんだ。

この例で言うと、1号を使い1.4秒、そしてフィルターを使い4号で7秒なんだ。号数を変えるのが、裏技って事だね。普通の印画紙では、これは出来ない。

: 何故1号を使うんだい?

達夫:これはコントラストを低めにしたかったので、1号を使っている。コントラストを上げたいなら、2号や3号を使うんだよ。ここら辺は色々試してみるしか無いね。

次の写真もテクニックを使っている。何だか分かるかな?

露光10秒、MG1号(全体)プラス露光25秒、MG5号(全体)プラス35秒、MG1号(部分)

: やはり号数を変えているのかな?

達夫:それもそうだが、覆い焼きをしている。背景が明るいので、人物の所を覆って露光しているんだ。まず全体に1号で10秒、5号で25秒露光して、人物を覆って1号で35秒の露光をしているんだ。

: 結構手間が掛かっているんだね。何故1号と5号で2回露光しているんだい?

達夫:これが裏技なんだがね。ちょっと難しい。5号でコントラストを出し黒を締めて、1号で階調を出すんだ。

: やっぱり難しいね。

達夫:普通はそこまでやらなくてもいいんだがね。

今回で白黒は一段落する。次回は単体露出計についてやろう。


    


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