ポートレートセミナー

15、はじめの露出計

登場人物

達夫・・・撮影歴10年以上のベテラン

(はじめ)・・撮影歴数カ月の初心者

達夫:今回は露出計だね。初は露出計は持っているかな?

: カメラ内蔵のは有るよ。これだけ有れば十分じゃないの?

達夫:そうだね。普通に撮るなら内蔵だけでもいいかもね。でも露出に拘るとやっぱり単体露出計も欲しくなるね。

露出計にどんな種類が有るか知っているかな?

: カメラ内蔵と単体のが有るね。

達夫:そういう分類も有るが、まずは入射光式と反射光式の2種類が有る。

: 入射光ってどんなのだっけ?

達夫:入射光式は、被写体に当たっている光を測るんだ。反射光式は、被写体に反射した光を測る。カメラ内蔵は反射光式だね。

:なんで入射光式が必要なのかな?

達夫:入射光式は当たっている光を測るから、被写体の反射率に影響されないんだ。反射光式は反射している光を測るから、被写体の反射率に影響されてしまい、色によって補正しなければならない。反射光式は被写体の反射率を18%と仮定して、適正になる様に測っているんだ。

: 何故18%なの?

達夫:被写体の反射率の平均が18%なんだって。誰かが統計を取ったんだろうね。

: 入射光がいいなら、みんな入射光式にすればいいんじゃないの?

達夫:まず入射光式はカメラに内蔵出来ないね。それに入射光にも欠点が有る。ます被写体の所まで行かないと測れない。ポートレートを1対1で撮っているならいいが、撮影会ではわざわざ測りに行きにくい。それに風景では遠くに被写体が有る場合が多いから、被写体の所までいちいち行く訳にはいかない。

それと発光体や強い反射光も測れない。逆光で光る海をバックに撮る場合に、どの程度の明るさかを測れない。

: それじゃ反射光式の方がいいみたいだね。

達夫:反射光式と言っても何種類か測り方が有るんだ。それぞれに良い所や欠点が有る。どんな測光方式か解るかな?

:まずは平均測光、中央重点測光、部分測光、スポット測光かな。

達夫:あとは多分割測光だね。

平均測光は、その名の如く平均的に測る。順光や曇りなら失敗も少ないかもね。

中央重点測光は、中央が感度が高く、徐々に周辺に行くにしたがって感度を下げてある。測光分布は機種に寄って違うので、慣れが必要だね。この測光方式は昔からよく使われているね。

部分測光は、中央のみを測光している。輝度差が大きい時には有効だね。メインの被写体を測り、AEロックなんてやり方をやりやすい。

スポット測光は、部分測光よりも狭い範囲を測る。マニュアル露出で、背景との輝度差を測るなんて高度な事をやりやすい。

多分割測光は、何カ所かに分割して測り、メーカーが出した統計を元に露出を決定する。何も考えずに撮ってもそれなりに適正にしてくれるので、スナップに向いているね。

: 反射光式は内蔵の方が便利だと思うが、単体にする意味ってなんなのかな?

達夫:一番メリットが有るのがスポットだろうね。受光角が1度の場合が多い為、測光の範囲が狭いので必要な場所だけ測れる。ポートレートを広角で撮る時だと、内蔵のスポットだと測る範囲が広くなって正確に測れないからね。それと露出偏差を測るにも有利だね。単体なら露出偏差を確認しやすくなっている場合が多い。

あとは古いカメラだと中央重点が多いから、スポット的に測れるのはいいね。

: どこで測ったらいいのかな?

達夫:ポートレートなら顔がいいね。日が当たっている所と当たってない所が有る場合は、両方を測って輝度差をチェックした方がいい。

:どっちを重視すればいいのかな?

達夫:狙いに寄って違うが、シャドウ部を重視した方がいいね。晴れている時は背景も測るといいね。輝度差が大きいから、チェックしておいた方がいい。

: 人物はいいが、風景だとどこを測ればいいか難しいね。

達夫:反射率が18%に近い所が有れば、そこを測ればいい。無い場合白い場所なら測光値から1〜2段オーバーにする。黒い場所なら1〜2段アンダーにする。

: 何故白だとオーバーなの?

達夫:測ったままだと、白をグレーになる様に測光する。だから白くなる様にオーバーにするんだ。どの程度かは白さに寄って加減するんだ。

黒の場合はその逆だね。測光値のままだとグレーになってしまうから、黒くなる様にアンダーにするんだ。

: その加減が難しいんだろうね。

達夫:そんなに難しく考えなくてもいいよ。真っ白にしたいならプラス2段、階調を出したいならプラス1段を目安にすればいい。

これは顔を測った時にも応用出来る。肌色は大体18%だから明るめの肌色にしたいならプラス1段、飛ばし気味にしたいならプラス2段。

:白も肌色も同じ補正でいいってどういう事なの?

達夫:露出の考え方は二通り有るんだ。オリジナルに忠実と、撮影者の意図に寄って露出を加減する。
白をオーバーは、オリジナルに忠実に表現する為なんだ。
肌色をオーバーは、撮影者の意図で肌色を明るめに表現する為なんだ。

: 露出を決定する時は、そこら辺の事を考えてやらないといけないんだね。

達夫:そうだね。入射光露出計でも同じ事が言えるね。入射光の時は適正露出が得やすいんだが、撮影意図によって補正した方がいい。
例えば白の階調を出したい時はマイナス1段、黒の階調を出したい時はプラス1段とかね。

: スポットの時とは逆だね。

達夫:そうなんだ。入射光式の時は反射率に影響されないからね。補正しなくても適正だが、スポットは補正しないと適正にならない。

例えば白を例にとると、入射光は補正無しだと適正だが、白が飛んでしまう可能性が有る。だからマイナス1段なんだ。
反射光式だとプラス2段補正して適正だが、このままだと白が飛んでしまう。だからマイナス1段にする。プラス2段マイナス1段だからプラス1段になる。

: ポイントは適正露出なんだね。

達夫:入射光式にしても反射光式にしても、適正露出を出す事が基本になるんだ。そこから表現意図に寄って補正していく。

:なんとなくわかってきた気がする。

達夫:わかった所で実際に使ってみよう。まずはポートレートだね。

入射光式はMINOLTAのフラッシュメーターVを使って説明する。

: まずは電源をONだね。

達夫:最初にやる事は、まず感度設定だ。ISOボタンを押してダイヤルを回す。
次にモードを合わせる。

: どうやってやるの?

達夫:カバーをスライドさせるとMODEのボタンが有るから、押す度にモードが変わる。

: どのモードにするの?

達夫:AUTOでいい。普段は表示されないがね。

: 何がAUTOなの?

達夫:定常光とフラッシュを自動的に判断して測光してくれるんだ。

: 他のモードはどんな時に使うの?

達夫:定常光しか測らないならAMBIでいい。AUTOだと急激な光の変化が有ると、ストロボ光と判断してしまう事が有るから、そういう時に使う。
他はそんなに使わないから、覚えなくてもいい。

: 次はどうするの?

達夫:ダイヤルを回してシャッタースピードを合わせる。後は測光ボタンを押せばいい。

:測る時気を付ける事は?

達夫:まず光球をレンズの光軸に向ける事だね。それと測る時モデルさんの横から測る。そしてハレ切りもしないと。

: ハレ切りは何故するの?

達夫:光球に太陽の直射光が当たっていると明るく測光してしまうので、光を手のひらで遮ってあげるんだ。ポートレートは逆光で撮る事が多いでしょう?だから直射光が当たると誤測光してしまう。顔に光が当たっているなら、ハレ切りしたのとしない両方を測り、両方を考慮した方がいい。
これは曇りでもやった方がいいね。晴れ程の差は無いがね。

: ハレ切りが必要とは知らなかった。
モデルの横から測るのは、自分の体で光を遮らない為だね。

達夫:その通り。以外とやってしまうんだね。

: ボタンを押して、測光値が出たよ。FNo.に「2.8 2」と出ているが、2は何の値なの?

達夫:0.2段の意味なんだ。この場合F2.8プラス0.2段と言う意味なんだ。

: これはちょっとわかりにくいね。

達夫:間違えやすいから気を付けないと。

: あと他の絞りとシャッタースピードの組み合わせを見たい時はどうするの?

達夫:ダイヤルを回せばいい。

: なんだ簡単だね。他に何か便利な機能は有るのかな?

達夫:フラッシュメーターVとIVはアナライズ機能が有るんだ。

:アナライズって何?

達夫:ストロボ光と定常光を分割して測り、比率を表示してくれるんだ。

: どんな時に役に立つのかな?

達夫:例えばデイライトシンクロだね。普通のフラッシュメーターだと定常光とストロボ光の両方を合わせた測光値しか表示されないんだ。アナライズ機能だとバランスがわかるから、ストロボ光が強くて夜の写真みたくなってしまうのを防ぐ事が出来る。

スタジオだったら、ストロボ光とタングステン光のミックスした写真を撮るなんて事も出来る。

この機能の凄い所は測光後ダイヤルを回しシャッタースピードを変えると、バランスの変化をチェック出来るんだ。

: よくわからないな。シャッタースピードを変えると、ストロボ光と定常光のバランスが変化するの?

達夫:説明するのは難しいな。ストロボ光は瞬間的な光で、シャッタースピードを変えても変化しないんだ。定常光はシャッタースピードが遅くなれば露光量が増える。

: なんとなくわかるかな?

達夫:判った所で次はスポット露出計にいこうか。
今度はMINOLTAのスポットメーターFを使ってみよう。

: やはり電源ONにして、感度を合わせて、シャッタースピードを合わせるんだね。

達夫:そして被写体の測りたい所に測光ポイントを合わせて、測光ボタンを押す。

: ポートレートでは、やはり顔を測るんだよね。

達夫:もちろん顔なんだが、何処を測るかに寄って露出が変化するから気を付けないと。
例えば目を測るとオーバーになってしまう。日が当たっている部分とそうでない部分でもちろん違うし、レフの当たっている方と当たっていない方でも違ってくる。

: やはり何カ所か測った方が安全なんだね。

達夫:そうだね。それとメモリーを使うと便利だよ。

:メモリーって事は、測光値を記憶するのかな?

達夫:もちろんそうだ。メモリーした所と、他の所の輝度差を測れるんだ。しかもファインダーから測光値が確認出来るからとても便利だよ。

: スポットだからメモリーが活かせるんだね。

達夫:わかってきたね。カメラに内蔵のでもマニュアルにすると同じ事が出来るんだが、スポット度が高い程有効だからね。それに内蔵だと輝度差が2〜3段しかわからないが、単体だともっと広い範囲が測れるんだよ。

: これはストロボも測れるのかな?

達夫:シンクロコードを使えば出来るよ。

: それじゃスタジオでも使えるね。

達夫:スタジオでストロボを使うなら、入射光式の方がいいよ。タングステンならスポットでもいいんだが。

:露出計を買うとしたら、どんな機種を買えばいいのかな?

達夫:被写体や撮り方にも寄るね。ポートレートで1対1が多く、スタジオでも撮るならストロボも測れる入射光式、撮影会や風景が多いならスポットメーターかな。

: 具体的にどの機種がいいの?

達夫:スポットメーターならMINOLTAスポットメーターFでいいだろう。

入射光はセコニックならマルチマスターL408がいいかも。受光角5度の反射光も内蔵しているから便利かも。
本格的に撮るならMINOLTAフラッシュメーターVがいいね。

: それじゃ検討してみよう。

達夫:まずは実際に使わないと、使いこなせないだろうからね。
次回はレフの使い方をやろう。


    


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