ポートレートセミナー
20、はじめのフィルター3
登場人物
:達夫・・・撮影歴10年以上のベテラン
:初(はじめ)・・撮影歴数カ月の初心者
達夫:今回はカラーフィルターの実践的な使いこなしについてやろう。
まず基本は、色をノーマルにする事から始めよう。
初: まず色を修正する為には、色について知らないと駄目なんだね。
達夫:基本的に、補色(反対色)を使うんだ。
初: 前の話では緑がかった時には、マゼンダを使うんだっけ。
達夫:そうだね。
緑を補正するには、マゼンダ。
赤を補正するには、シアン。
青を補正するには、イエロー。
マゼンダを補正するには、緑。
シアンを補正するには、赤。
イエローを補正するには、青を使うんだ。
初: ポートレートでは、どういう状況が有るのかな?
達夫:例えば、曇りの日や、晴れの日陰では青みがかる。これを補正するにはイエローでもいいんだが、LBAを使うのが一般的だね。
初:具体的にどの程度補正するのかな?
達夫:曇りならLBA2〜4、晴れの日陰ならLBA4くらいかな。
初: 晴れの日陰の方が補正量が多いのは何故?
達夫:曇りなら空は白だが、晴れだと空が青だろう。だから青空光が多い日陰では、多く補正が必要なんだ。
あとLBAの使い道は、タングステンフィルムをデイライト光で使うときだね。LBA12でほぼ補正出来る。
初: 逆にLBBを使うのは、どんな時かな?
達夫:夕焼けで赤くなった時に使うんだ。
初: 具体的にどの程度補正するの?
達夫:夕日の傾きに寄って、かなり差が有るから難しいね。LBB2〜8くらいかな。日が傾く程、補正量を増やすんだ。
他のLBBの使い道は、電球の光で撮る時だね。写真用のタングステンライトだと、LBB12でほぼ補正出来る。電力が低い電球ほど赤味が強くなるので、余計に補正が必要になる。
初:あと蛍光灯も補正が必要だよね。
達夫:そうなんだ。結構緑がかってしまうんで、気を付けないといけない。マゼンダの30〜40くらいが目安かな。
初: あとはどんな補正が必要かな?
達夫:フィルムには相反則不規特性と言うのが有って、感度や色特性が変わってしまうんだ。
初: 相反則不規特性って何?
達夫:相反則特性とはシャッタースピードと絞りの関係が変わっても、EV値が同じなら露出が同じになる事なんだ。
相反則不規特性とは、フィルムに寄って、シャッタースピードが極端に長くなるか短くなると、相反則特性が崩れ、露出がアンダーになってしまうんだ。この時、カラーバランスも崩れてしまう。
この崩れ方は、フィルムに寄って違うから一概に言えないが、普通のデイライトフィルムなら、長時間露光の時にグリーンがかる事が多いね。具体的な補正量はデータシートに書いてある。RDPだと、4秒で5M、8秒で7.5Mになっている。
初:夜景とかでグリーンがかっているのは、相反則不規のせいも有ったんだね。
達夫:もちろん蛍光灯や水銀灯の影響も有るんだが、相反則不規も影響している。
初: 他に補正の必要性は有るのかな?
達夫:プロの場合リバーサルを使う事が多いが、この時製造番号のエマルジョンを大切にしているんだ。
初: 製造番号とフィルターとどう関係しているの?
達夫:フィルムは種類はもちろんだが、同じ種類のフィルムでもエマルジョンが変わると色が変わってしまうんだ。フィルムは非常に薄い幕で作られているから、少しでも乳剤層の厚みが変わると色が変わってしまうんだ。
初:随分微妙な物なんだね。 エマルジョンが同じなら、同じ色になるの?
達夫:保存状態が良ければ同じと思っていい。だからプロはテスト撮影して、色をチェックするんだ。バランスが悪い時は、CCフィルターで補正する。プロラボや大型店のフィルム売場では、エマルジョンごとの補正値を表示してあるから、フィルムを買う時はチェックしてみるといい。
初:フィルムの色は、種類に寄っても結構違うよね。
達夫:そうだね。フィルムごとの色の特長を把握して、それに合わせて補正する必要がある。
例えばベルビアとコダクロームを比べると、かなりベルビアが派手だよね。苦手の色が有れば、それをおぎなってあげればいい。
初: フィルターって言うと、補正するのもいいが、色を強調するのもいいんじゃないかな。
達夫:そうだね。色を加えるには、まずノーマルに出来ないと駄目だからね。ノーマルに出来たら、それから色を加えるのがいい。
初: 色を強調する時の注意点て何かな?
達夫:特別な意図が無い限りは、さりげなくやるのがいいね。色にも寄るが、やりすぎるといやみになってしまう。
初: 具体的にどの程度かな?
達夫:CCなら2.5が目安だね。5が限度かな。LBなら4が限度かな。
私がよく使うのが、LBA2とR2.5だね。場合に寄って、LBA2とM2.5だね。
初:これはどう使い分けているの?
達夫:曇りならR2.5かな。マゼンダには青の成分も有るから、レッドの方がいいんだ。
M2.5を使う時は、晴れとか回りに緑が多いとかだね。
初: でも強めにフィルターを掛けたい時もあるよね。
達夫:掛けるなら強めにした方が効果的だね。よくやるのが、夕日を強調する為にLBAやRを使ったりする。
初: 逆にLBBを使って、青を強調するのもいいかも。
達夫:こういうのはそれなりに意図が有れば、どんな風にやっても構わないだろう。こうしなければならないと言う決まりはないから、自分の感性でどんどん使う事だね。
次回は、モノクロのフィルターについてやろう。