"PROXIMITY" Vol. 9, No. 31

特集:「ZEPPELIN IN JAPAN」


レッド・ツェッペリンのファンジン「PROXIMITY」の98年10・11・12月号が「ツェッペリン・イン・ジャパン」の特集を引っ提げて出版されました。この本を知らない人のために説明しますが、これはツェッペリンに関するあらゆる事柄、つまり音源、雑誌、海賊盤、歴史的事実、イベント、そして最新情報にいたるまで幅広く網羅した雑誌で、内容的にもかなり深いところまで突っ込んだ記事が掲載されています。とはいえ、マニアックな人たちのための本かといえば、決してそんなことはなく、ツェッペリンが好きな人ならかなり楽しんで読むことができます。アメリカの本ですから当然英語ですが(この号は「ツェッペリン・イン・ジャパン」ということで、私が依頼されて制作した日本語の帯が表紙に来ていますが、中身は全て英語です)、書いてあることはツェッペリンのことばかりなので、そういう意味では英語が多少苦手でも大丈夫だと思います。
なぜこれを取り上げるかといえば、今回の編集作業を多少手伝ったからで、とはいってもツェッペリンの日本公演を観たわけでもない私から提供できるものはグラフィック意外にはほとんどなく、実際には徳島の横畑さん、広島の小林さん、そして宇多村さんから提供していただいた貴重な証言と写真を掲載するための橋渡しをしたというのが主だったことです。ほかにもYASさんからは、アナログ・レコードのデータに関する深い知識を提供してもらいました。協力いただいたみなさん、ありがとうございました。Hugh Jones(この雑誌の編集長)が制作過程において、メールで「I think this is going to be one of the best issues of Proximity ever!」と書いてきたほど、内容的にかなり充実したものになっていると思います。では中身の方を軽く紹介します。


今回の特集では、71年、72年の来日公演だけではなく日本で出版された雑誌、写真集、アナログ盤、CD、ブート、そしてPAGE/PLANTの日本公演までカバーしています。くわしくは本を見てもらうこととして、ここでは日本側スタッフ(?)の提供した来日公演のものを中心に紹介します。まずは71年来日時の写真で、ロバート・プラントの東京駅での写真です。日本のファンに囲まれており、手には牛乳を持っています。ロバート・プラントの牛乳好きは有名で、きっと腰に手をあてて、シャウトするようなポーズで飲んだと思われます(冗談です)。この写真の撮影者については、本の中ではクレジット意外には出てこないのでちょっと説明します。そもそもは現在横畑さんが所有している写真なのですが、撮影したのは彼の友人で、若林志郎さんという、東京在住(当時)の方です。70年代に来日した数多くのミュージシャンの写真を撮影しており、その資料的価値は絶大なものがあります。なにしろツェッペリン71年の武道館公演を長時間に渡り8mmフィルムにも収めたという人です。ただ、現在消息がつかめません。彼をご存じの方は横畑さんのHPまでご一報していただければ幸いです。
ツェッペリンは71年、72年と来日していますが、この本でもそれぞれの年の全ての公演の演奏曲目等の資料が掲載されています。71年の武道館初日は、宇多村さんによる詳細なコンサートレポートによって当時の模様がまざまざと再現されています。そして71年広島公演においては小林さん提供のコンサートレポートとともに、ジョン・ポール・ジョーンズが「広島楽器センター」を訪れたときの模様が載っています。小林さんのHPからのものです。
72年の大阪公演では、横畑さんが自ら撮影した写真が掲載されています。これもまた横畑さんのHPからの提供ですが、やはりこれほどのものはこういった本に掲載され評価されるべきものであり、たとえばメジャーな音楽雑誌に載っている写真ではカバーしきれない部分をも見事に補って(あるいはある部分ではそれらを上回って)いると感じます。この写真で見られるジミー・ペイジが着ている「Zoso」ベストにしても、これは71年ロンドンで行われた「Electric Magic Show」の有名な写真以来初めて見たものであり、大阪公演でこれを来ていたという事実はこの写真が出てくるまで誰も知らなかったことです(もちろん、この日のライブを観た人達はこれを見ているわけですが、いままで話題にものぼらず写真もなかったわけですから、そう言う意味でもこの写真の資料的価値は絶大です)。以上、軽くですが内容の紹介をしてみました。今回、この号に協力するにあたって、もちろん最初はあちらから持ちかけられた話だったのですが、出来る限りのことをしようと思いました。日本人としてやらなけりゃ、といったような感情を抱いたのです。別に愛国精神とかそんなものじゃなく、むしろそれだけかつて日本公演で行われたライブが凄かったからだと思います。彼らが日本において繰り広げたライブを誇らしく思っており、その気持ちはわかってもらえると思っています。まあ当然、それを観られなかった悔しさもあり、それを補いたいという気持ちも働いたのでしょう。しかし、なによりも今回の号は記事の強さがあってこその出来だと思っています。
ぜひじっくり読んで欲しいと思います(別にお金をもらって言っているわけではありませんが)。「Proximity」のHPで購読の申し込みが出来ます。残念ながら現在の所、日本の書店及びレコード店では手に入らないようです。
以上、宣伝もかねて「Proximity」を紹介しましたが、これで「ZEP IN JAPAN」が終わったわけではありません。実際に「ZEP IN JAPAN」を観た人は数千人いると思われますが、その割にはそこからの証言や写真、音源はまだまだ少ないです。どこかに眠っている財産は計り知れないものがあると思いますので、もしこれをご覧になって、まだあるよ!という方がいらっしゃればぜひご連絡ください。心よりお待ちしています。

PROXIMITY Vol. 9, No. 31
Published by Proximity/HJR Productions
Special Thanks to: Kimio Yokohata, Yoshio Kobayashi, Kazuo Utamura, Yas

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