5日目 ブライトン〜ヘイスティングス

 朝、ボンド・ストリートのホームで友人と待ち合わせ、ヴィクトリア駅へ。今日はBRに乗りブライトンへ向かいます。ブライトンはイギリスの南端にあり、古くから海辺のリゾート地として有名な所です。
 列車の時間を確認し、まずは切符を買うために並ぶ。窓口には長い行列ができているので、その間に電車の中で食べるものを買おうと、娘とともに駅構内にあったバーガー・キングへ。そこでコーヒー3個、コーラ1個、フライド・ポテト(こちらではチップスと呼びますが)、そしてオニオンリングを注文してお金を払うが、なかなか出てこない。発車時刻が迫る中、頼んでもいない飲み物が目の前に並べられていく。一方、頼んだ食べ物は用意されている気配がない。注文した物を繰り返し、「いそいでいるんだ!」と言うと、ようやく食べ物の入った袋も出てきたので(しかし、のろくさと)、それらをひっつかみ走る。なんなのだ! ちゃんと仕事しろよ! と怒りながら、なんとか発車時間に間に合う。4人掛けの対面シートに座り、真ん中のテーブルに買ってきた食べ物を並べていて、フライド・ポテトが入っていない事に気づいたのは、すでに発車した後でした。
 味のしないオニオンリングを食べながら外を眺めていると、友人が「あ、あれは」と進行方向左を指します。見るとピンク・フロイドの「アニマルズ」のジャケットになっている建物が、ドーンと目に入りました。これだったんです、本物は。これは「バタシー発電所」といい、今は稼働していないということで、かつてビートルズの「HELP」のロケ地としても使われたらしいです。でかくて圧倒的迫力があり、異様です。これは、ここにあったのか・・・(この旅行記の扉ページの写真は、この時列車の中から撮った写真に加工を加えたものです)。
 ブライトンへは1時間ほどで到着しました。
 駅を出ると、海岸まで下るメイン・ストリートを結構歩きます。ここブライトンは、映画「さらば青春の光(原題:Quadrophenia、ザ・フーのアルバム「四重人格」をもとに1979年に作られた映画)」のロケ地に使われた町で、今回はそのシーンを辿りたかったのです。何度も観た好きな映画なので撮影場所は簡単に見つけられるだろう、と思っていたのですが、実際のブライトンは思ったよりもずっと大きな町で、町中のシーンを辿るには足を棒にして歩き回らなければならないであろうと予想され、ほぼあきらめました。
 海岸沿いの通りに出ると、左にこれぞブライトンを代表する景観とも言える桟橋「Palace Pier」が見えます。一方、右には崩壊した桟橋「West Pier」があります。映画に登場したのはどちらだろう。映画で見たときは、ひなびたイイ感じの桟橋でしたが、当時からすでに25年近く経っているのです。「West Pier」の方は去年の暮れに嵐で崩れたそうで、それでも桟橋上の歴史的な建物はまだ修復可能な状態で残っていたそうです。しかし今年の3月には火事になり、今は完全に骨組だけの無惨な姿です。
 「Palace Pier」へ向かって歩いていると、サーカスの宣伝カーが通りかかりました。こういう所で見るサーカスも良さそうです。桟橋に到着すると多くの観光客でごったがえしていました。入り口あたりでうろうろしただけで、突き当たりにある遊園地までは行きませんでした。「Palace Pier」を後に、次は「West Pier」のほうへ向かいます。今度は道路から降りて浜辺を歩きます。砂浜ではなく、大きめの丸い石ばかりの海岸でした。レストランやメリーゴーランドなどもあります。昼食をどこで食べるか決めかねながら歩いていくと「West Pier」へ近づくほどに店もだんだんさみしくなってきて、結局最後の方の小さな店でフィッシュ&チップス等を買い「West Pier」の骨組みを見ながら食べました。
 再び道路へ上がり、駅に向かって戻る途中でようやく映画ゆかりの建物を見つけました。「グランドホテル」です。ここは、傷心のジミー少年が、あこがれのエース(スティングが演じた)がホテルのベル・ボーイとして働いている姿に幻滅して「ベル・ボーイ、ベル・ボーイ!」と怒鳴り、そこに置いてあった彼のベスパに乗って(つまり盗んで・・ひどい!)走り去るシーンが撮られたホテルです。記念写真を撮り、ジミー少年の足どりを追って(笑)我々も次の目的地「ホワイト・クリフ」へと向かいます。

写真上:ピンク・フロイド「アニマルズ」のジャケットで有名な「バタシー発電所」。もちろん実際に豚は飛んでいません。
写真2番目:ブライトン駅外観。
写真3番目:「Palace Pier」。しかし看板は「Brighton Pier」となっていた。一つになってしまったので、この名前に変わったのだろうか?
写真4番目:「West Pier」の残骸。たもとでは、かつての優雅な姿を写した絵ハガキなどを売っているのでしょうか。ならば買ってくればよかった・・。
写真下:「グランドホテル」。映画では、エースがジミー少年から理不尽にも罵倒され、おまけに自慢のベスパが盗難にあったという気の毒な場所。


ウェールズへの旅(1)- カーディフ

 カーディフへは列車で行きました。ロンドンの「パディントン駅」から西へまっすぐ。ウェールズへの入り口とも言えそうな港町です。ここは単に目的地への最寄り駅というだけだったのですが、やはりせっかく行くのだし、カーディフ城という結構有名なお城も見たかったので朝早めにロンドンを出ました。この時は初めての列車旅行だったため(前回のロチェスターへの旅はすべてK氏に頼りきりだったので)、切符の買い方もよくわからずにハラハラしました。でもそういう事こそ旅の醍醐味で、なつかしく思い出すのも案外こういうことだったりするものです。
 快適な列車で、レディング、ニューポートなど聞き覚えのある駅を通ってカーディフへ到着。重いトランクを持って駅に降り、カーディフ城へ行く間だけそれを預かってくれそうな所がないか探しましたが、ありませんでした(そういう所ってないのだろうか?)。しかたがないので、ガラゴロとトランクを引きずり町の中を通り抜け、ようやくカーディフ城へたどり着きます。入り口で係の人に一時預かりを頼むと、あそこへ入れておきなさいと物置きを紹介されました(笑)。
 さて、カーディフ城では城内を案内してくれるツアーがあり、有料ですがもちろん参加しました。陽気な感じのおねえさんが、申し込んだ人たち十数名を連れて城内を巡ります。この城はとても綺麗に保存されており、当時の家具や調度品なども残っているなど、多くの見所がありました。最後のホールのような所では今日結婚式が行われるということで、その準備が整えられつつありました。ツアーが終わり表に出ると、その間に一雨あったようで空には虹がかかっていました。城と虹、いいもんです。
 城を出てカーディフの町に戻ります。通りには横断幕が張られていて、近くここでワールド・カップ(だったかな?)のラグビーの試合があると書かれていました。パブで食事をし、再び駅へ。駅ではタクシーを探します。これから目的地のホテルへと向かうのです。タクシーは簡単に見つかり、運転手にインターネットでダウンロードしてプリントしておいたホテルまでの地図(ただ、これはヤフーUKのヤフー・マップであり、あまり詳しいものではありません)と住所のメモを見せます。まあ、大丈夫だろうということで、出発。車は北へ向かいます。(続く)

写真上:カーディフ駅外観。
写真下:カーディフ城の一画。ただし、こちらの建物の内部は公開していないようでした。


 グランド・ホテルを後にし、再びブライトン駅に戻りました。ここで英語堪能な友人が、バスの案内所の係のおばさんに「ホワイト・クリフ」への行き方を聞いてくれました。旅行案内の本にも載っている「セブン・シスターズ」というところへ行きたいと写真を見せながら聞くと、彼女は「BEACHY HEAD」へ行けという。で、ここでは今日、航空ショーもやっていると言う。行き先がわかったところで、次は交通手段です。実は以前のアメリカ旅行でこの友人に車でいろいろ案内してもらったこともあり、今回もレンタカーで行こう、という案が我々家族の間で浮上していたのです。もちろん、運転は彼で。レンタカー屋の場所を聞き行ってみたところ、この日は土曜日で、早々に閉店していました。
 では仕方がないということで、タクシーに変更。バスもあったのですが、今日はその後さらに行きたい場所があり、それを考えてのことです。
 タクシーがブライトンの町を出たあたりから、すでにその景色は見えてきました。「ホワイト・クリフ」とは海からほぼ垂直に切り立った崖で、その断面が真っ白なのです。「さらば青春の光」のラストシーンがここでした。綺麗な緑の草原が急に途切れ、その下はまっ逆さまに海です。そのコントラストの鮮やかさは感動的です。さっき見えた景色からして、もうそろそろ着くだろうと思っていましたが、なかなか車は止まりません。どんどん高いところへ登っていきます。おかしいなと思っていると、やっと着きました、山の頂きです。ここが「BEACHY HEAD」だそうです。人も車も結構集まっています。タクシーには30分くらい待ってもらうことにして車を降り、あそこへ登れば崖だろうと思われるところまで行きました。
 てっぺんにたどり着き、下を見ると・・・崖じゃない! そこは下方へなだらかに100m以上も続く広大な草原でした! ここじゃない! やっぱりここまでの途中にあったのだ、「セブン・シスターズ」は。しかしもう遅い。こうなったら多少景観が違っていても、どうしてでもあの崖っぷちに立たずにはいられません。我々はおもむろに山を下り始めました。
 とはいえ、かなりな距離を下ることになります。ということは、帰りは登らなければならないということです。でもそんなことは言ってられません。ものすごい強風が間断なく吹きつける中、どんどん降りて行きます。左側、遠くにイーストボーンという町が見えます。多分この草原を降りた突き当たり、緑と海との境にあの崖があるはずです。そして、とうとうたどり着きました。あの崖がありました。
 結局、ここはホワイト・クリフの終点だったようです。崖っぷちから海までの距離はあまりありません。右を見るとあの崖がずっと先まで続いています。左はイースト・ボーンの町。強風で飛ばされそうになりながらも、右側の崖にそって登って戻ることにしました。しかしホントに危険でした。手すりなどなく、ちょっとふらついたところに突風でも吹けばまっ逆さまに崖から転落します。でも写真を撮るには縁に近づかなければなりません。かなりなスリルを味わいながら息を切らせて登る途中、足下を見ると貝殻がたくさんありました。これはここがかつては海だったということで、これらも大昔の貝殻なのでしょう。ようやく頂上にたどり着き、ひと休みしているとイースト・ボーンの海岸のほうで航空ショーが始まりました。こんなすごい場所からそんなものを見れたのはラッキーでした。
 タクシーへ戻り、イーストボーンの町へ。ここで車を降り、パブでひと休みします。パブでギネスを飲んでいると、悪魔の扮装をした女性達がぞくぞく集まってきました。どこかで何かの催しがあるのかもしれません。
 さて、出発です。イーストボーンから電車に乗り、ヘイスティングスへ向かいます。予定では、ヘイスティングス駅でロンドン行きに乗り換え、ロンドンへ戻る途中にある駅で降りて「熊のプーさん」の森まで行くつもりでしたが(先程のタクシーで行くという案もありましたが、あまりの料金の高さに断念しました)、ヘイスティングスに着いてみたら、ロンドン行き電車の出発まで1時間もあるとわかり、この時点で時間的に「プーさん」は無理という感じになってきました。時間つぶしに駅の外に出てみると、遠くの小高い丘にお城が見えます。まだ待ち時間は十分あるので行ってみようということになり、またタクシーをつかまえて向かいます。
 着いてみるとすでに城の入り口は閉まっていました。ここはヘイスティングス城といい、廃虚タイプの城ですが、昼は中世の鎧を着た人達によるショーなども行われているということです。中が見られず残念でしたが、この丘から望む町の景観も素晴らしく、嬉しい時間つぶしができました。
 さて、ロンドン行きの電車に乗り、途中「トンブリッジ・ウェルズ(プーさんの森があるハートフィールドの最寄り駅)」を通過。結局、今日はプーさんは諦めたのでした。ロンドンのチャリング・クロス駅へ無事到着し、そのまま晩御飯を食べにソーホーへ。今度はイタリアンにしてみよう、ということで手頃な感じの店の前でうろうろしていると、中から店員が出てきて「ここはチャイニーズ・レストランじゃないよ」と言う。「別に中華が食べたいわけじゃない」というと「すいません。よく中華の店と間違えてお客さんが入ってくるので、いつも言っているんです」だって。まあいいや、とその店に入りスパゲッティなどを食べる。店の高級そうな感じとはうらはらに、やはりまずかった。家で作る方がこの100倍旨いのが4分の1の値段でできます(まあ、仕方ない)。これで今日は終了。友人と別れ、ホテルへ帰りました。

写真上:「Beachy Head」から望む「ホワイト・クリフ」。実は山頂からかなり歩いたところに展望台があったのを最後に発見。しかしタクシーを待たせていたので行かなかった。もしかしたら素晴らしい景観が見られたかも。
写真2番目:崖まで数歩。ここでふざけると死にます。
写真3番目:ヘイスティングス駅の外観。
写真4番目:ヘイスティングス駅から望むヘイスティングス城(左上にあるのがそれ)。


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