科について
属のページで科の説明をするのは違和感がありますが、現時点で科の説明を作る予定がないので、ここで取り上げます。
Pemberton氏らの文献で、ネモフィラ・マクラタが、Hydrophyllaceae(ハゼリソウ科)ではなく、Boraginaceae(ムラサキ科)(より正確には、ハゼリソウ科を含めたムラサキ科)とされていたので、どのようなことなのか、調べてみました。 直接の答えになるかどうか分かりませんが、Ferguson氏の文献によると、葉緑体遺伝子の一つである ndhF のDNA配列を調べたところ、Hydrolea属とCodon属を除くハゼリソウ科植物は、広義のムラサキ科に含まれることが明らかになったそうです。参考までに、クロンキストの分類体系では、ムラサキ科はシソ目、ハゼリソウ科はナス目に含まれ、新エングラーの分類体系では、ムラサキ科もハゼリソウ科もシソ目に含まれます。 ついでですが、クロンキストの分類体系や新エングラーの分類体系には存在しませんが、Boraginales(ムラサキ目)が存在するそうです(どのような分類法に含まれているかは不明)。ムラサキ目には、Boraginaceae s. str.(狭義のムラサキ科。広義のムラサキ科からどんな属や種が抜けているかは不明)、Hydrophyllaceae(ハゼリソウ科)、Heliotropiaceae(ニオイムラサキ科)、Ehretiaceae(チシャノキ科)、Cordiaceae(イヌジシャ科)、Lennoaceae(レンノア科)が含まれるそうです(和名は「学術用語集・植物学編」に従いました。聞いたことがない科があるかと思いますが、学名をGoogleで検索すると、海外のページならヒットします)。これらの科のITS1領域の転写産物の二次構造について調べたところ、狭義のムラサキ科は、それ以外の科によって作られるクレード(clade;共通の祖先から進化した生物のグループ)と姉妹群の関係であることが分かったそうです。
形態・生態・栽培など
一年草です。有毛、あるいは、無毛です。茎は多肉質で、折れやすいです。羽状中裂の葉が、対生か互生しています。花は腋生で花柄があり、普通、単生しますが、花序を作ることもあるそうです。萼は基部近くまで切れ込みが入って5裂しています。萼の裂片の間には開帳〜反り返った付属物があるそうですが、退化していることがあるそうです。花冠は鐘型〜車輪状で、5裂しています。雄しべは5本あります。柱頭は二裂しています(分かり難いかもしれませんが、ネモフィラ・メンジージー・アトマリアの写真をご覧下さい)。果実は有毛の刮ハです。 栽培ですが、繁殖は実生で行います。春播きしても、秋播きしても育ちますが、耐寒性があり(−3℃程まで)、夏の高温多湿に弱いために、一般に秋播きします。発芽の適温は20℃だそうです。移植時に葉が絡まることがあるため、直播きして間引く方が良いと言われています。日当たりが良い場所を好み、日陰では徒長してしまうそうです。涼しい温度が適していて、生育適温は5〜12℃だそうです。土壌と水管理については、保水性が良い物が適しているとか、排水性が良く乾燥気味に管理するのが良いとかと、言われています。個人的な経験ですが、土が乾きやすかったので、そのたびに水遣りしていました。
種類など
11種としているのは「The New RHS Dictionary of Gardening」や「The Plant-Book」などの海外の図鑑で、18種としているのは「園芸植物大事典」、「最新園芸大辞典」、「原色園芸植物図鑑」などの和製の図鑑です。しかし、大抵の図鑑には、以下の種とその変種しか記載されていません。園芸的に利用されているのは、これら2種・2変種だそうです。
N. maculata Benth. ex Lindl.
ルリカラクサ(N. menziesii Hook. et Arn.、異名:N. insignis Douglas et Benth.)
var. atomaria (Fisch. et C. A. Mey.) Chandl.)
var. discoidalis (Lem.) Voss.
本棚以外の参考文献
Pemberton, L. M. S. et al., Epidermal patterning in seedling roots of eudicotyledons. Annals of Botany. 87: 649-654. 2001.
Ferguson, D. M. Phylogenetic analysis and relationships in Hydrophyllaceae based on ndhF sequence data. Systematic Botany. 23: 253-268. 1998.(摘要のみ参考)
Gottschling, M., et al. Secondary structure of the ITS1 transcript and its application in a reconstruction of the phylogeny of Boraginales. Plant Biology. 3: 629-636. 2001.(摘要のみ参考)
文部省・日本植物学会.学術用語集 植物学編(増訂版・第5刷).丸善株式会社.1998年.
本田正次ら監修.原色園芸植物大圖鑑.北隆館.1984年.
塚本洋太郎.原色園芸植物図鑑[I]一・二年草編.保育社.1972年.
(2004.3.7.)
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