だんご花にしろ、黒花にしろ、23℃以上の高温によって発生するようです。なお、他に、小花の生育に差が生じるような場合に、早く咲いた小花が乾燥してしまう「ふけ花(老け花?)」と呼ばれる障害があるそうです。
悪臭がしますが、ニオイの原因物質は脂肪酸の一種であるメチル酪酸だそうです。品種によってメチル酪酸の発散量に違いがあり、ガスクロマトグラフで測定したところ、‘ブリストル・フェアリー’は‘ゴラン’や‘ユキンコ’より発散量が多く、官能検査からは、メチル酪酸の発散量が多い品種ほど悪臭が強いことが分かったそうです。メチル酪酸の発散は、開花前の蕾では全く無く、開花して2日目以降多量に発散され、満開の時に最も多くなり、それ以降は老化に伴って減少するそうです。また、昼夜の発散量を比較すると、昼に発散量が多いそうです。メチル酪酸の生成経路として、アミノ酸のロイシンやイソロイシンがケト酸に変換し、ケト酸からメチル酪酸が生成されることが推察されています。
東ヨーロッパやロシアでは、根や根茎からサポニンを抽出するために栽培されていた歴史があり、去痰薬、下剤、洗剤(サポニンの水溶液は泡を生じ、且つ、保護コロイドとしての特性を持つことから)として利用されていたそうです。
シュッコンカスミソウに含まれる種々のサポニンには、gypsogenin 3, O-glucuronide という共通の前駆物質があるそうですが、この前駆物質の生合成や転流について調べた研究があります。これによると、前駆物質は根で生合成されて、他の器官では生合成されないことが分かったそうです。また、根の二次師部(形成層から作られる師部の一部。靭皮)に蓄積するそうですが、根から他の器官に転流することはなかったそうです。生成量には苗齢が影響を及ぼし、苗齢が進むほど(実験では4年目まで)多く生合成されたそうです。また、栄養成長が停止している冬に多く生合成され、開花期には生合成される量が減少したそうです。
追記(2003.12.6.)
写真を差し替え、メモを全文改訂しました。
追記2(2004.6.22.)
全体の写真を差し替えました。
追記3(2004.8.27.)
だんご花の写真を追加しました。
追記4(2005.5.4.)
名前について補足し、参考文献を1本追加しました。
追記5(2013.2.26.)
諸事情により、円錐花序の写真を差し替え、二出集散花序の写真を削除しました。
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