3日目(8月15日)

この日は友人がレンタカーを借りて我々を連れ回してくれることになっている。昼くらいにホテルに迎えにきてくれる予定だったが、遅れる(彼が購入したAPPLEコンピューターの新作「iMac」を店に引き取りに行った際、ちょっとトラブルがあったらしい)。彼を待つ間、ハリウッド方面に最近出来たというモールのようなところへ歩いて行く。ここは「Virgin」「Sam Ash」という楽器店も入っている。これらを見てまわった後、同じモールにある「WOLFGUNG」という店で昼食。ここで昨夜に引き続きパスタを注文する。実は昨晩食べたパスタが、求めていた味と違っていたので雪辱戦のつもりだった。しかしこれが大ハズレで、カップヌードルの麺にトマトソースをかけたようなものだった(もちろん単なる比喩で、カップヌードルを悪く言っているわけではない)。レトルト食品でもこの2倍はうまい。がっかりしてホテルへ戻り、ほどなく友人と合流。
今日の予定その一は「GUITAR CENTER」。ここはロスで一番大きな楽器店で、まわりにも数件のギターショップがある。10年ほど前に来たときはその中の一つ「HOLLYWOOD GUITARS」で、オンボロなレスポール・カスタムを500ドルちょっとで買った。「GUITAR CENTER」の店の前の地面にはいろいろなミュージシャンの手形があり(ハリウッドの「チャイニーズ・シアター」のロック版)、以前来たときにはなかったジミー・ペイジの手形と対面。ファンの私としてはここへ来る前にある計画をしていた。それは粘土で手形の型を取るというものだった。それを日本に持ち帰り永久保存版の複製を作るとか、あるいは友人に頼みDIGITAL DOMAINの最新技術で3D解析をしてもらいテクスチャーを貼り込み、リアルに動くバーチャル・ハンドを作ってもらうとか、夢は膨らむ一方だったのだが、実際には粘土を買い忘れ、たとえ本当に買っていったとしてもガードマンの警備が厳重でそんなことできるわけもなかったのだった。バカな話は置いといて、さっそく上から手を重ね合わせてみると思ったよりも大きく、指は細くて長い。他にも以前はなかった手形がずいぶん増えていた。店の左にはロック・ミュージアムのようなものがある。カーマイン・アピスがBBAで日本に来たときに使用したドラムセットや、そのときJ・ベックが着ていたステージ衣裳、ヴァン・ヘイレンの巨大なドラムセット、ジョニー・ラモーンが使っていたモズライト、一度も使ったことがないであろうJ. Pageのサイン入りギター等、ここだけでもかなり楽しめる。 広い店内を見てまわった後、友人が、いずれレスポールを買いたいので試奏させてもらおうということになる。2本のレスポール・スタンダードを試すがそのうちの一本、J・ペイジ・モデルがなかなか良い感じ。しかし値段は4千数百ドルで、何も買わずに店を出る。

いったい何人がありがたく手を合わせたことか。

今日は7時からサンタナとロス・ロボスのコンサートがある。その前に食事をしようということで、友人お勧めのメキシコ料理店「ACAPLUCO」へ。ここでも食べきれないほどの量の食事が出る。ところでロス、というかカリフォルニア州は条例により煙草をレストラン内では吸えない。こちらへ来る前はいったいどうなってしまうのかと不安があったが、実際は一歩外へ出れば吸えるので問題はなかった。このレストランでも外の席へ行って一服する。このくらいの迫害は日本でも慣れっこだ。 今日のコンサートは7時からで、場所はグリフィス天文台や公園がある山の上の「GREEK THEATRE」。昨日の例もあり、どうせ時間通りに始まるわけがないと高をくくって車で向かう。会場に着くと7時半で、駐車場はすでに車の山。車を降り会場まで歩いて向かう途中、すでに演奏が聞こえてくる。この会場はオープンエアなのだ。入り口でカバンチェックを受けるが、ここは厳しかった。黒人の大きな人がとても怖い顔をしながら、懐中電灯でカバンの中をもれなく照らし、手荒く探る。最後にはカバンの厚みまでチェックする念の入れよう。しかしズボンのポケットまでは調べないのがいいところ(笑)。ようやく解放されて会場に入るも、後ろで、妻のカバンの中に入れてあったカメラが発見されるが、預かり所へカメラを預けて一件落着。ここでマルガリータなど飲み物を買うが、さっきから聞こえているのがロス・ロボスの演奏であったことに気づく。しかし周りにいる誰も焦っている様子もない。こちらではコンサートを観ることそのものより、その場にいること自体を楽しんでいるんだということを実感する。トイレを済ませ席に着く。会場はとても広く、我々の場所は真ん中よりも少し後ろ、距離的には武道館の一階の一番前くらいか。ステージから後ろの席までなだらかなスロープになっていてとても見やすく、ステージの向こうには山も見えていていい感じ。「LA BANBA」でロス・ロボスは終了。結局20分くらいしか聞けず、ちょっと残念。

サンセット・ストリップ沿いにあった看板。この派手さがいかにもロスらしい。

8時をまわり空もうっすら暗くなって来たところでサンタナ登場。場内はおおいに盛り上がるが私の両隣にいる妻と友人は演奏が始まると程なく爆睡。2人共もともとサンタナには興味がないのでやむを得ないところか。怒涛のパーカッションによる熱いリズムが、逆に眠りを誘うらしい。演奏中、寝ている友人が手に持っていたジュースや酒が合計3回こぼれて、私の足にかかる。しかしサンタナと言えば、日本ではすっかり忘れ去られている存在だが、こちらでは事情が全然ちがう。客層はほとんどがヒスパニック系の人たちで占められ、その熱狂ぶりは信じられないほど。演奏自体もパワーがありメンバーの力量もかなりのものがある。その自信は選曲にも表れており、新しめのアルバムからの曲が続く。途中「EUROPE」で一山あり、その後曲目は不明だが、何かの曲のベースソロで若いベーシストがツェッペリンの「NO QUARTER」のフレーズを弾いたりしていたが、気づいたのは私くらいか(なんてね)。最後は「BLACK MAGIC WOMAN〜GYPSY QUEEN」「OYE COMO VA」という黄金のメドレーで幕を閉じる。アンコールの「EVERYBODY'S EVERYTHING」を含めると2時間半にも及ぶ熱演だった。いろんな意味でちょっとしたカルチャーショックを受ける。そしてもう一つ驚いたのが、入り口でのカバンチェックをはじめとするセキュリティの厳しさだ。演奏中も、何人もの警備の人たちが厳しい目で会場内を見回り、ちょっとしたことでもお客さんに注意をする。一度は、隣で熟睡中の妻をみて、私に「この人は大丈夫なのか?」と聞いてきた。まさにセキュリティの鏡といっていいほどの体制だった(ちなみにその警備員は終演後、帰ろうとしている私にウインクし、「バイバイ」と笑った。妻が生きていたのがわかって、彼もホッとしたのかも)。


「Greek Theatre」のエントランス。終演後に撮影。「John Fogerty」も見たかった。

会場を後にし、友人の運転する車で真夜中のマリブビーチへむかう。着いたときは11時を過ぎていたが、海岸にはまだ結構人がいてみんな遊んでいる。我々同様、観光客が多いのだろう。レストランは閉まる直前だったので一杯だけ飲んで帰る。


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